ことばは人を育て、未来をきりひらく知の源です。三省堂はことばをみつめて135年 サイトマップお問い合わせプライバシーポリシー
三省堂 SANSEIDOトップページ 三省堂WebShop辞書総合サイト Wrod-Wise Web教科書総合サイト ことばと教科
辞書教科書電子出版六法・法律書一般書参考書教材オンラインサービス
書名検索漢字かな著者名検索漢字かな詳細検索
新刊・近刊案内
メディアでの紹介
本の注文
書店様専用
大学向けテキスト
卒業記念
名入れ辞書
品切れのご案内
「ぶっくれっと」アーカイブ
会社案内
採用情報
謹告
三省堂印刷
三省堂書店へ
三省堂書店はこちら
声に出して読めない日本語。
「ほぼ日刊イトイ新聞」
(『大辞林』タイアップ・サイト)
  漢字の字体と筆跡鑑定


漢字の字体と筆跡鑑定

江守賢治 著 (品切)

2,400円 B5 256頁 978-4-385-36186-4

漢字の字体と筆順の第一人者が、豊富な資料を駆使して字体を解明し、漢字のAの流れ(伝統的楷書)と、Bの流れ(康熙字典体)とを解りやすく論じる。幻の名碑と謎の石碑の筆跡鑑定など興味深い話も多数収録。

2004年6月20日 発行

見本ページ まえがき 目次 あとがき

解説字体辞典 普及版



●まえがき

まず、この本は、私が漢字に関することを書いた本であります。

しかし、大学の研究紀要に載っている論文のように、一つの研究成果を広く関係学者や他の大学の人たちに読んでもらうとか、また、一つの学会で発表した研究成果が、その学会の会員からどのような評価を受けるかを問うというような性格のものでもありません。 さらに、戦後間もない頃のこと、日展でいちばん威張っていたBという書家が書いた日展に出品した作品の中にある一字を、日展系以外でありながら一般にも人気のあったUという書家が「あの作品の中のあの字は間違っている」と喧嘩をふっかけたことがありましたが、これに対してBという書家は《金持ち喧嘩せず》でありましょうか、最後まで指摘を無視し通したという事がありました。しかし、この本はそのように全く個人的な作品に《けち》をつけようというものでもありません。

永い間、漢字の仕事をしてきた私としては、昔風にいってこの正月で九十歳になったのを節目に、今まで、面白い漢字、気になる漠字や問題にしたい漠字を掘りおこして、私の考えを述べるとか、説明をするとかして、それらを一冊の本にまとめておきたいと思い立ちました。そして、何十年か何百年かたった頃、もしこの本を読んでどんな感想をもつかを楽しみにして書いた、いわば『老人の書き置き』というような性格の本であります。

いや、本当のことをいえば、現在の人にも読んでいただきたいのであります。もし、読み始めて面白くないと思われたら、面白そうな所から、また、難しいと思われたら、難しくなさそうな所から読んでいただいて、できれば、結局全部を読んでいただくようにお願いいたします。



●目  次

目次



●あとがき

江守賢治著とある本を、終戦直後から今までの間に、ずいぶんたくさん出しました。そして、ワープロやコピーが出来てからは、それらの本のほとんどは、ワープロ印字から写真や絵図まで自分でつくり、ノリとハサミを使って版下台紙に貼り込んでいったものです。

また、ワープロにない字をたくさん使いますから、作字をしたり、手書きの活字をつくったりしますし、さらには(NHK出版からの『楷行草総覧』の一冊を除いて)それらの本の装丁まで自分でするのですから、本当の意味での《手づくり》というものです。

したがって、プロの編集者が見られると、おそらく心の中で「やっぱりそうだったのか」と思われるでしょう。だからこのことだけは三省堂編集部の名誉のためにも申し上げておくわけです。

というのは、内容の記述からページのレイアウトまで、自分の考えどおりにならないと納得できないわけで、他人に任せられない性分といいましょうか、逆に、数えの九十歳になった私にとっては《老人の健康法》であり、《私のたのしみ》でもあるわけです。

なお、欲をいえば、活字が気に入りません。例えば、《氏に一》テイの活字です。これは、活字をデザインする人たちの《せい》ではなくて、字体を決める人たちの《せい》です。最近は、明朝体のスタイルが本当に美しくなりました。私は一昨年ごろから、毎週一二度の割合で三省堂に都営地下鉄三田線で通っていますが、車内の電光文字板に出てくる《千石》や《白山》などの駅名の文字が実に美しくなりました。縦横幾つの制約があるのに、ただ感心するほかありません。

考えてみると、戦前は、駅のホームなどにある駅名や、広告などの文字は、毛筆で書かれた文字でしたが、現在はもう百パーセント、文字デザイナーの手にかかって機械から出てくる文字になって、目に入ってくる文字が実にスマートになりました。書家の書く字はもう社会がこれを必要としなくなってしまいました。

戦前は、日本人のすべてが楷書も行書も習い、みんなこれらを読めて書けました。ところが、戦後は、行書は教えず、楷書も活字の形どおりに教えてきました。

また、書道展指向の書家は全く楷書を書かず、みんなの読めない字を書くようになりました。したがって、現在では一般と書家とは完全に乖離してしまっています。書家は書道展の中だけで楽しんでいるという状態になってしまいました。

そんなわけで、みんなの見る漢字は、活字関係のデザイナーの分野に移り、社会全般の文字がスマートになったのです。

私は、この本の最後のページを借りて、この本の前に出した『解説字体辞典』の案内をさせていただいていますが、もともとこの本は、書家としての知識、いや教養としての漢字を知っていただきたいと思って書いたものでした。

『目糞 鼻糞をわらう』ではありませんが、『油の流れ』は『水の流れ』の字を《俗字》といい、また少しずれているかも知れませんが《異体字》などといっています。

私は、もっともっと漢字の『水の流れ』と『油の流れ』を説明し続けなければならないと思っています。

最後になって失礼ではありますが、参考資料として、上記の本のおせわになりました。また、奈良国立文化財研究所と、同飛鳥資料館の関係者の方、福井県粟田部の山田家の子孫や関係の方、奈良県飛鳥村の山田寺住職武田良道師、良寛研究家の関谷徳衛氏から、たいへん参考になるお話を承りました。深く感謝して、厚くお礼を申し上げます。

このページのトップへ