全国自死遺族総合支援センター 編
1,575(1,500)円 四六判 224頁 978-4-385-36379-0
毎日 90人もの人が日本のどこかで自ら命を絶っています。ここ10年間も、連続で毎年3万人以上の自殺者が出ているのです。
本書は初めての 27人の自死遺族たちの体験物語集です。<夫・妻を亡くして><息子・娘を亡くして><父・母を亡くして> ── そして支援・同行者からも……。
家族を自殺で亡くした衝撃。自殺を止められなかったことへの自責の念。── そして、周りに語ることのできない ‶沈黙の悲しみ″が全篇にあふれています。
また自殺の背後には、過労自殺・多重債務・学校の問題・うつなど現代社会のさまざまな問題がからみあっているのが見えてきます。
‶もう これ以上 同じような悲しみに暮れる人を増やしたくない″── 自殺に追い込まれることのない「生き心地の良い社会」を創るために語り始めた遺族たちの物語です。
第2章・第3章では<自殺対策という生きる支援>に立ち上がった支援・同行者たちの熱い想い、そして全国で実を結び始めている成果も知ることができます。
目 次
はじめに
編者 <全国自死遺族総合支援センター>とは?
●目 次
はじめに 1
第1章 遺されて …… 自死遺族の物語
- 【夫・妻を亡くして】
- ひとりぼっちだったんですか? 6
- 「タフでなければ生きてはいけない。優しくなくては生きる資格がない」
(レイモンド・チャンドラー 正文が愛した言葉) 13
- 妻が自死して 21
- ありがとう あなた 28
- 家族 35
- 【息子・娘を亡くして】
- ケイへ 42
- 三葉の愛娘の写真に看取られて逝った息子 48
- 学校の荒れから不登校に、そして自死を選んだ長男 57
- 死を選んだ芳史君へ 64
- 越えてはいけない「悲しみ」── 去って行った息子 70
- 真之介に伝えたいこと 78
- 「私は訴え続けます」全国キャラバンとメッセージパネル 86
-
- 【父・母を亡くして】
- 苦しいときに必要なもの、それは、話を聞いてもらうこと 94
- あの日からのこと 101
- 父が残してくれたもの 108
- ごめんね 父さん ありがとう 母さん 115
- 亡き母に想いをよせて 121
- 絶望から見つけた生きぬく力 ─自分の弱さを語る強さ─ 126
第2章 支援者から同行者へ ともに歩む途上にて
- ともに歩むおもい福島自死遺族ケアを考える会 れんげの会 金子久美子 134
- 「安心して悩むことのできる社会」を目指して自殺対策に取り組む僧侶の会 藤澤克己 138
- エバーグリーンの集いとともに
NPO法人 国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター 西原由記子 142
- 遺族の心に寄り添ってリメンバー福岡 自死遺族の集い 井上久美子 146
- 官民協働で自殺総合対策大綱を実のあるものに
前内閣府政策統括官(共生社会政策担当) 柴田雅人 152
- 自死遺族のための法律相談大阪弁護士会 弁護士 生越照幸 156
第3章 自殺対策という〈生きる支援〉を社会で、皆で
- ■ 自殺対策 これまでの歩み 172
- 出会いで生み出されたものあしなが育英会 西田正弘 179
- 「語り」を通してのつながり自死遺族支援ネットワークRe 山口和浩 181
- 自殺対策 私の原点 〜自死遺児たちとの出会い
NPO法人 ライフリンク、全国自死遺族総合支援センター 清水康之 186
資料
- ■ 資料 〈生きる支援〉のつながり 194
- 本文に執筆された方々が関わっている団体の活動内容
- 全国各地で自殺対策・自死遺族支援を行っている団体
- 内閣府自殺対策推進室
- ■ 自殺対策基本法(平成十八年法律第八十五号) 212
◎ 「全国自死遺族総合支援センター」について
●はじめに
この書籍は、夫が、妻が、娘が、息子が、また父が、母が、苦悩の末に自ら命を絶ち、遺された方々がその苛酷な事実に向き合いながら、逝かれた方々への思いとこれまでの軌跡を綴られた手記を中心にしたものです。大切な人を自殺(自死)により亡くした18名の方が、自らペンをとり、キーボードに向かって、ある方は実名で、またある方はペンネームでそれぞれの体験について記されました。引き裂かれた痛みと向き合い、胸のうちをひらいて多くの人に伝えようと決められるまでにどれほどの葛藤があったことか……と思います。それぞれの方が、それぞれの葛藤を経て書かれた、真実の、固有の物語です。そしてこの本には、身近な人の自殺(自死)の体験の有無とは別に、遺された方々と共に歩もうとしている人たちも、日々の活動を通しての考えや思いを記しました。
したがってこの本は、自殺や自殺対策、悲嘆反応やその対処についての一般的な解説書ではありません。体験者、支援者という位置づけではなく、被害者、傍観者、解説者そのいずれでもなく、現代の私たちが直面している自殺、自死という重い問題に「当事者」として生きている人たちの物語です。
日本の自殺者数は、1997年の2万4391人から、1998年には3万2863人へと急増し、以後、年間自殺者数が3万人を越える状態が10年も続いています。毎日90人もの人が日本のどこかで自ら命を絶っているという、先進国の中では突出した数です。また自殺未遂者は、少なくともこの10倍はいると言われていますし、1人が亡くなるとその周囲の何人もの人たちが衝撃を受けますから、かけがえのない人を亡くし心に大きな痛みをかかえている人の数も増え続けているのです。
自殺により大切な人を亡くした時、その家族や親しい人は、衝撃や悲しみ、止められなかったことへの自責の念などから、極度の心的ストレスにさらされがちです。その上、故人の負債を相続してしまったり、自殺現場となった賃貸物件の所有者から多額の損害賠償を請求されたり、法的・経済的な負担を負わされることも少なくありません。また、社会の偏見や無理解も根強いものがあります。自死遺族の痛みは「沈黙の悲しみ(Silent Grief)」と表現されることがありますが、語られることなく、心の奥深くに沈み込んでいる思いは、どれほどの重荷となっているでしょうか。ご遺族とのかかわりから、私は、自死遺族の受ける衝撃は人が耐えることのできる限界を超えるほどのものではないか……と感じることがしばしばです。悲嘆感情の吐露が阻まれ、必要な支援もないままに孤立を深め、とても苦しい状況におかれている人が多いことに、私たちはもっと目を向けなければいけません。
「自殺は個人の問題」「弱い人が逃避の手段として死んでいく、卑怯だ」「死にたい人は勝手に死ねばよい」というようなとらえ方が、言葉には出さずとも暗黙のうちに世の中の底流にありました。いえ、今でも、まだまだ残っているでしょう。そして、自らいのちを絶つ人の多くがその直前には精神を病むほどに追いつめられていることを表面からとらえて、うつ病対策を中心とした自殺への対応にとどまっていた流れがあります。
この考えの根底にあったものは何だったのでしょうか。
「自殺について考えることはこわい、よくわからない、できれば避けて通りたい」、そして「自分は自殺をしないだろう。家族もしないに違いない。だから今、自殺について考える必要などないのだ」という暗黙のうちの『了解』が社会全体にあったのではないでしょうか。弱い人が自殺すると言うなら、私たちは例外なく弱さを持っている存在なのに、そこから目をそらして『他人事』としてきたのではないでしょうか。そこに異を唱え、このままでは痛みの連鎖を止められないと立ち上がったのが、親を亡くした自死遺児たちでした。彼らの思いを綴ったあしなが育英会発行の小冊子「自殺って言えない」は、大きな反響を呼びました。「大人たちは口ではいろんなことを言うけれども、結局は何もしないんだ……。だから僕たちが立ち上がらないと、何も変わらない……」。親を亡くした若者の、深い悲しみをたたえた眼差しとこの言葉を私は忘れることはできません。心の底で『他人事』としてきた私自身の姿勢を見すかされた言葉でした。
次第に遺児たちの魂の叫びは、それを聴き、受けとめた周囲の人たちを動かし、社会全体で取組まなければいけないという認識に変わっていきました。私も、その一人でした。一連の動きをリードしてきたのは、20代〜30代の若い世代です。固定観念にしばられず、純粋に焦点を絞りエネルギーを集約させる彼らの動きには反発もありましたが、次第に年齢や立場の違いを超えて共通の目的に向かう流れができてきました。2006年6月の「自殺対策基本法」成立に向けて、年間に亡くなる人の数と同じ3万人の気持を結集したいという運動では、最終的に10万1055人もの署名が集まりました。
法律ができてもっとも明確に変わってきたことは、自殺のとらえ方です。生きにくい現代の日本の社会が背景にあること、様々な要因が複雑にからみ合って、命を絶つ以外の選択肢を見出せないほどに苦しい状況に陥るということ、それは誰にも起こり得るもので決して弱さの故ではない、そんな風に少しずつではありますが変化しています。
自殺を減らすことも、遺された方々が心の平安を取り戻すことも、決して簡単なことではありません。うわべの豊かさや平和なはずの現代社会の荒廃の中、生き心地の悪さに一体どう向き合えばよいのか安易な解決策はありません。だからこそ、私たち一人ひとりは弱い存在だけれども、決して無力ではないことを思い起こし、当事者の方々の声に静かに耳を傾けること、同時に私たちもそれぞれの内なる声に耳をすますことが大切ではないでしょうか。ともすれば互いの相違点ばかりに目が向きがちですが、「違いを探すこと」ではなく、お互いの中にある「共通点を見出す」ことに視点を変えていくと視界が広がるでしょう。共通のものを見出した時にこそ、そこに新しい「つながり」が生まれてくるのではないでしょうか。
官民あげての総合的な自殺対策の取組みが、各地で試行錯誤を続けながら始まりました。本書に託されたたくさんのメッセージが、多くの方々に届くことを心より祈っております。
2008年7月
全国自死遺族総合支援センター
代表幹事 杉本脩子
●編者<全国自死遺族総合支援センター>とは?
|