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  キリスト教と現代

5. おわりに

日本国内を見れば、この数年間、キリスト信仰を公表し、洗礼を受け、教会に登録されているクリスチャンは、総人口一億二千七百万人の一%弱であるとされるが、教会には属さないがキリスト教を信奉する人が、「無教会」派の人たちを含めて二~三%ほどいると推測されている(D.B.バレットによる)。鈴木範久によれば、統計上の信徒人口の何倍もの人々がキリスト教に関心を抱いており、「あえて言えば、すでに統計でキリスト教信徒を数える時代は終わっている」とさえ言われる(『日本キリスト教史物語』二〇一頁)。

キリスト教会をめぐる昨今の目立った動きとしては、対立する立場として、現代日本には民族的誇りを失った「自虐史観」が蔓延していると見て、戦中の日本人がなした歴史的事実である種々の残虐行為を隠蔽ないし正当化しようとする歴史観「自由主義史観」(筑紫哲也によれば「自閉史観」)が再び台頭して来ている。旧軍人遺族らはこれを後押しており、靖国神社国家護持運動とも連動している。これは信教の自由とも関わる課題である。また、公害問題や環境破壊の問題の拡大によって象徴されるような科学万能主義ないし合理主義の行き過ぎと限界を認識し、これを克服しようとする試みがなされている。聖書の正典性に対して合理主義からの疑義および批評学的見解が広がっているのと同時に、逆の現象としてポストモダン思想が広がってきている。たとえば、合理性を欠いた異象への期待、異言、祈祷のみによる病気の癒しなどであり、これらをどう捉えるかが今後の課題となろう。また教会の内部ではクリスチャンの社会的責任、信徒の高齢化、子弟への信仰の継承などの課題といかに取り組んでいくかという点も、キリスト教界全体にとって今後の大きな検討課題となっている。

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