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  国立国語研究所プロジェクト選書2 現代日本の異体字−漢字環境学序説−


現代日本の異体字

笹原宏之、横山詔一、エリク=ロング 編  (品切)

2,600円 A5 320頁 978-4-385-36112-3

「鴎」「區+鳥」などの異体字の使用実態を新聞・百科事典・地名資料から空前の大規模調査で解明。字体を選択する人間の意識に認知科学の手法で迫る。字体・字形・書体、正字・俗字、JIS漢字なども詳説。巻末に異体字表。

2003年11月10日 発行

 著者紹介  刊行にあたって  自著自讃  目次  序論 漢字環境学とは何か  見本ページ
 国字の位相と展開  新聞電子メディアの漢字(品切)




 ●著者紹介

笹原先生

笹原宏之(ささはら・ひろゆき)

1965年東京都生まれ。
1993年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得。博士(文学)。国立国語研究所主任研究官などを経て、2007年 4月より早稲田大学社会科学総合学術院教授。
専門は国語学(文字・表記)。現在の研究テーマは、日本語の文字・表記。法務省法制審議会人名用漢字部会幹事、JCS(符号化文字集合JIS)調査研究委員会委員、汎用電子情報交換環境整備プログラム委員などを務める。
著書(共著)に『新聞電子メディアの漢字』(三省堂)、『山田美妙『竪琴草紙』本文の研究』(笠間書院)など、論文に「国字と位相」(『国語学』国語学会)、「字体に生じる偶然の一致」(『日本語科学』国立国語研究所)、「佚存文字の考察」(『国文学研究』早稲田大学)、「地名を漢字で書くために」(『日本語学』明治書院)、「携帯メールにおける文字表記の特徴とその影響」(『社会言語科学』)など。


横山先生

横山詔一(よこやま・しょういち)

1959年愛媛県生まれ。
1985年筑波大学大学院博士課程心理学研究科単位取得退学。1997年日本教育工学会論文賞受賞。現在、国立国語研究所領域長、政策研究大学院大学連携教授(併任)。博士(心理学)。
専門は、認知心理学、心理言語学、文字環境学。計量国語学会理事、日本心理学会認定心理士認定委員、カナダVictoria大学アジア太平洋地域先端研究センター外部顧問などを務める。
著書に『新聞電子メディアの漢字』(三省堂)、『表記と記憶』(日本心理学会)。


ロング先生

エリク=ロング(Eric Long)

1957年米国カリフォルニア州生まれ。
1991年、米国カリフォルニア大学バークレー校東アジア言語学科大学院博士課程修了。現在、国立国語研究所非常勤研究員。修士(博士課程口頭試験合格)(日本語学)。
専門は日本語学。現在の研究テーマは、中古・現代日本語のヴォイス・モダリティ。
論文に「『源氏物語』における談話分析の試み」(『日本語学』明治書院)、「古典語のヴォイス」(『国文学解釈と鑑賞』至文堂)、「インドネシア語と日本語の『自発』」(同)、「日本語資料のローマ字化」(同)など。

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 ●刊行にあたって

 国立国語研究所は、現代日本語の実態を明らかにするために、これまで各種の調査研究を実施してきました。その成果は、『国立国語研究所報告書』として公刊されています。そのほかに、『国立国語研究所プロジェクト選書』というシリーズが1998年に始まりました。

 『国立国語研究所プロジェクト選書』の目指すところは、国立国語研究所を中心に推進されているプロジェクトの成果を、一般の方々にも理解していただける研究書の形で世に送り出すことです。

 本書は、このシリーズの第2弾になります。これによって、現代日本語の研究が、さらに発展することを願っています。

  2003年(平成15年)10月

国立国語研究所長 甲斐睦朗

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 ●自著自讃 (HP用書き下ろし)

 今までにない「漢字の本」になったと思う。
 本書は、辞書から与えられた「正しい漢字」を覚えるための本とは全く異なる。昨今、複雑な様相を増しつつある漢字の字体に焦点を合わせ、まず、中国と日本における字体の多彩な歴史を、従来の国語学と漢字学に新たな観点を加え、分かりやすく記述するよう努めた。つまり、字体を変化するもの、それに対するレッテル貼りを主観的、人為的なものと位置づけた。それとともに、日本の多様な異体字の現状として、それらに標準を与える漢字施策を含め「漢字流通」としてとらえ、その動態を計量的、客観的に把握した。さらに、それに接触したり用いたりする主体である人間の心のあり方つまり「漢字心理」に踏み込むという試みをあわせて行った。そういう漢字の文献は、本書が初めてであろうと自負する。この施策を含む漢字流通と漢字心理を合わせて「漢字環境」として捕捉し、国語学と認知心理学との共同研究によりこれを「漢字環境学」と銘打った。

 本書には、色々な読み方があるであろう。最初から通読する、関心のある章から読み始めるほか、例えば、巻末の異体字表・異体字索引を眺め、異体字の多い漢字は何か探るのもよいだろう。
 また、気になる字体は、索引から本文ページに当たっていくのもよい。常用漢字表外字「頸」の拡張新字体「頚」が目に付いたならば、本文に、それは医者がカルテなどに記す時に使うだけでなく、新潟県民も葉書などで書くことがある、つまりその字を多用する人たちに使われているとある。一方、拡張新字体を使うことで知られる『朝日新聞』は意外にも「頸」を原則としている。それは、新聞では地名としての使用がほとんどであり、かつ「經」「輕」「徑」などと違い人名用漢字「勁」のように左に旁が来るばあいは略さないと方針を立てているためだという。そして、女子大生も、「頸」の方を好むといい、「経」「軽」「径」などと逆の傾向を呈していることから、人は既知の漢字を部分に分けて見ているのではなく、字全体を見て認識していることがうかがえる。さらに、女子大生は「頸」に90%近くなじみを抱くとある。こうした漢字意識は、「表外漢字字体表」という漢字施策による「印刷標準字体」の決定と一致する一方で、JISの第1、第2水準への振り分けとは合わないことがうかがえる。
 もう一つ例を挙げると、同じく常用漢字表外字「麥面」に対する拡張新字体「麺」は、戦後すぐに新聞に採用され、1993年の『朝日新聞』紙面ではそればかり48回も使われたという社会的使用頻度すなわち漢字流通の一端が示されている。さらに、国民の漢字との接触意識もそれを反映したものとなっており、漢字施策「表外漢字字体表」でも、「麺」が「簡易慣用字体」としての位置を得たことが分かる。これは、JISでも「麺」が現在第1水準に収められており、第3水準に「麥面」が入ったことも異体字表から明らかになる。「葛飾」の「葛」、常用漢字に加えられた「蛍」(螢)なども、多角的な考察が可能となるであろう。

 一つの文字に複数の字体が生まれるのは、漢字のもつ字体・構成の複雑性と表語性という宿命的な性質によるものであるが、複数ある字体のどれが標準と定められ、どれがどのくらい使われるかという漢字流通と、どれに多く接触し、なじみが生じ、好きになるのかといった漢字心理とは、漢字環境の中で互いに影響を与え合って成り立っている。実は巨視的に見れば、この循環こそが、日本人の漢字を用いた文字生活を形成している実態であるということが浮かび上がるのである。とかく、抽象論か個別論に陥るきらいのある漢字を、それぞれの論のもつ利点を活かしつつ、客観性を維持しながら、込み入った記述を行うよう心がけた。
 本書は、確かに存在している現実の漢字の多彩な姿と、またそれを受けとめ、使用している実在の人間の心のありさまを切り取って示したものである。しかし、時間や紙幅の都合で、やむなく割愛した事項(特に異体字表・索引は、残念ながら紙幅の都合で大幅に削除、遺漏等が生じた)、余力を残さざるを得なかった項目も少なくないほか、筆を下ろせなかったメディアがまだいくつも残っている。コラムにはその方向の一部を示した。本書の趣旨が広く理解されるとともに、御叱正をたまわり、内容に磨きのかかった第3弾を世に問う運びとなることは、著者共通の願いである。

著者を代表して
笹 原 宏 之

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 ●目  次

刊行にあたって 1

序論 漢字環境学とは何か 4

第1章 異体字とは 7

 1.1 異体字とは                    笹原宏之 8
 [コラム1] 漢字は象形文字か              笹原宏之 20
 1.2 異体字の分類                   笹原宏之 21
 
第2章 異体字の使用状況とその背景 49

 2.1 新聞の異体字                   笹原宏之 50
 [コラム2] 日常の文字生活の中の異体字         笹原宏之 123
 2.2 百科事典の異体字              エリク・ロング 126
 [コラム3] 字源は説である               笹原宏之 154
 2.3 地名の異体字                   笹原宏之 155
  [コラム4] 字体と縁起                 笹原宏之 202

第3章 異体字の認知科学 203

 3.1 字体認知とカテゴリー化              横山詔一 204
 3.2 異体字認知の研究                 横山詔一 206
  3.3 異体字に関する好み・なじみ調査の方法       横山詔一 208
 [コラム5] 「槙」が消えた         横山詔一・笹原宏之 215
 3.4 好み調査の結果                  横山詔一 218
 3.5 なじみ調査の結果                 横山詔一 225
 [コラム6] 漢字調査と医学研究             横山詔一 229
 3.6 字体認知の説明モデル               横山詔一 231
 3.7 異体字認知の発生源はどこか            横山詔一 236
 3.8 字体への接触意識と使用頻度      笹原宏之・横山詔一 238

第4章 漢字の様々な集合とその字体 251

 4.1 常用漢字・学習漢字               笹原宏之 252
 4.2 表外漢字字体表                 笹原宏之 264
 4.3 人名用漢字                   笹原宏之 268
 [コラム7] 大字(だいじ)              笹原宏之 271
 4.4 JIS漢字                   笹原宏之 272
 4.5 ユニコード                エリク・ロング 282
 
異体字表・異体字索引 288
索引 311
あとがき 317
著者紹介 318

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 ●序論 漢字環境学とは何か

1 使用頻度と漢字環境

 私たちは、日々の暮らしのなかで、どのような漢字を、どのくらい目にしているのだろうか。多くの人が毎日のように読んでいる新聞を例に考えてみよう。新聞記事のなかで、もっとも多く登場する漢字は何か。この問いに、自信を持って答えられる人は少ないだろう。主観的経験や直観だけに頼っていては、正しい答えにたどり着けない意外と難しい問題である。(解答は、コラム6「漢字調査と医学研究」(p.229)に示す。)

 漢字は、新聞だけではなく、書籍、ちらし、テレビのテロップや映画の字幕、携帯メールやパソコン、書道での字、個人の手書き、看板、街で見かける字など、学校で習う文字や辞書に載っている字以外にも、さまざまなものが存在する。「人間はどのような漢字をどのくらい目にしているのか」という冒頭の問いに正確に答えるには、私たちを取り囲む「漢字環境」を科学的に観測・調査し、その実態を十分に知り尽くす必要がある。新聞、書籍、看板、携帯メールなど各種のメディアに登場する漢字の使用状況を丹念に調べ上げ、社会における漢字の使用頻度を明らかにできた段階ではじめて、私たちが日々の暮らしのなかでどの漢字をどのくらい目にしているのかを、かなり正確に予測できるようになるだろう。この使用頻度が有力な手がかりになるのは、社会でよく使われる漢字は高い確率で目に入り、あまり使われない漢字は目に入る確率が低いという理由による。

 それゆえ、ある漢字を目にする確率(接触頻度)は、その漢字の使用頻度と密接な関係にある。そして、漢字の社会的な使用頻度を調べることは、図1に示すように、漢字環境の一部を明らかにすることでもある。

漢字環境の基本要素

図1 漢字環境の基本要素

2 漢字環境とは

 本書は「異体字」に関する最新の調査研究を通じて、漢字環境の一端をとらえようというものである。第1章は、異体字についての解説を国語学の側面から行う。第2章は、新聞などに登場した異体字の計量的な分析に基づいて、異体字の社会的な使用頻度を明らかにする。第3章は、異体字の「なじみ」や「好み」などを認知科学の手法によって究明した研究を紹介する。そして、第4章は、使用頻度や異体字使用の実態を左右する背景にふれる。

 日々の文字生活の中で、人間は自然にある漢字に接触し、その接触頻度の高低によって、その漢字に対する接触意識が生じ、それがなじみ、ひいては好みを形成すると考えられる。このような観点で図1を発展させたモデルが図2である。なお、図2には示していないが、接触頻度の要因以外に、未知の字を既知の字体との類似性判断によって渡りをつける一種の推論作用のほか、嘘字をきらったりする規範意識や、書体差に注意を向ける傾向が何かしら生まれたりすることによっても、字体に対する好み・なじみが影響される可能性がある。

 漢字の好み・なじみは、「漢字心理」の一部である。漢字心理は、人間が漢字を読む(識別や包摂も含む)場合だけではなく、漢字を使用する際にも大きく影響し、それが社会的な使用頻度へとつながっていく。漢字環境とは、結局、図2の全体を指すのである。

 以上の議論をふまえて、改めて本書の構成を図2のなかに位置付けるならば、第1章は「漢字政策」に、第2章は「社会的な使用頻度」に、第3章は「接触意識、なじみ、好み」に、第4章は再度「漢字政策」に、それぞれ関連する内容を含んでいると言える。

 ところで、著者3名の願いは、漢字環境の全体像を浮き彫りにする試みによって、日本のみならず世界の漢字研究をさらに発展させたいという点にある。この狙いに向けた学術研究ならびに政策研究を、ここでは「漢字環境学」と名付けた。本書はその第一歩である。例えば、漢字政策は、漢字環境を人為的にコントロールできる有力な手段であり、国民各層の日常生活に及ぶ影響も大きい。それゆえ、漢字政策の立案や評価は、社会的な使用頻度や世論調査の意識調査データなどを活用して、科学的な眼で行われていると聞く。その精度をさらに高める場合などに、漢字環境学の視点が参考になれば幸いである。

言語・社会・心理が支える漢字環境

図2 言語・社会・心理が支える漢字環境

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 ●見本ページ

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 ●朝日新聞(2004.1.8朝刊)「ひと」欄

朝日新聞

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