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  筆跡鑑定ハンドブック


筆跡鑑定ハンドブック

魚住和晃 著

1,600円 A5変 256頁 978-4-385-41055-5

「筆跡鑑定」のすべてがわかる小事典。遺言状やサインで筆跡の真贋が問われるケースが増えている。「筆跡が危ない」と警鐘をならす著者が、脳や目の働きと関連づけながら、人の筆跡をどのように見分ければいいのか、筆跡の科学的な鑑定の方法はなにか、をわかりやすく解説。どんな方法を用いれば筆跡は正確に判定できるのか。素人でもできる、コンピュータを使った筆跡鑑定法を提唱。そもそも筆跡とはなにか、個人の筆跡にどんな歴史的背景があるのか。甲骨文、篆書、隷書、楷書、草書、ひらがな、カタカナの創生にいたる文字の歴史を100点以上の図版とともに解説。神戸連続児童殺傷事件の犯行声明文や一澤帆布事件の遺言状の鑑定で実績を積み重ねてきた「筆跡鑑定学」の第一人者の理論と実践。

2007年 7月15日 発行

目次 あとがき 見本原稿(第1章 筆跡が危ない 1〜4) 見本ページ 1 見本ページ 2 ハンドブック・シリーズ




●目  次

第1章 筆跡が危ない

1.印鑑は人を証明できるか
2.銀行は印鑑を鑑定できるか
3.裁判と筆跡鑑定
4.筆跡鑑定士とは何か
5.筆跡鑑定の分類
(1) 筆跡異同鑑定
(2) 筆跡心理鑑定
(3) 筆跡比較鑑定
(4) 筆跡真贋鑑定
(5) 筆跡医療鑑定
(6) 筆跡歴史鑑定
(7) 筆跡興趣鑑定
(8) 犯罪捜査筆跡鑑定

第2章 筆跡を生む脳のメカニズム

1.運動野──脳の運動命令系統
2.手と指の働き
3.大脳運動野と筆跡
4.目の働きと筆跡

第3章 筆跡と書

1.内在性筆跡とは何か
2.内在性筆跡は一貫する
3.書は訓練による
4.思想としての書
5.書道は外在性筆跡
6.変わる内在性筆跡

第4章 筆順と筆跡

1.文字の形成
(1) 漢字
(2) 平仮名
(3) 片仮名
2.筆順と筆跡形成
(1) 筆順とは何か
(2) 筆順と筆跡鑑定

第5章 筆跡を目で鑑定する

1.筆勢
(1) 横勢と縦勢
(2) 直勢と曲勢・円勢
(3) 斜勢
(4) 波勢
(5) 連勢
2.点画の接しかた
3.字形のバランス
4.文字の大きさと字間
5.筆跡の固有筆癖・個人内変動と内在性・外在性の違い

第6章 筆跡をコンピュータで鑑定する

1.コンピュータとデジタル画像
2.コンピュータで分析するための準備
3.コンピュータを使っての筆跡分析



●あとがき

 最近、ある裁判に提出された筆跡鑑定書に付された鑑定者の経歴書を見て驚いた。それによるとその鑑定者は昭和三十七年四月に大阪府警察本部科学捜査研究所(以下、科捜研と略称)に配属され、昭和六十一年に退職するまで刑事、防犯、交通、警備等の刑事事件に関する文書鑑定の業務に専従し、その二十四年間に四〇〇〇件以上の筆跡、印影、印刷、不明文字検出などの文書鑑定に携わったというのである。これは一年平均にして一六六件強、一年間に三百日勤務したとしても、二日に一件以上のペースで鑑定を行なってきたことになる。警察にあった人が法廷に提出した書類であるのだから内客を疑うことはできないが、大阪府警ともなれば、科捜研の筆跡専門官だけで五名ぐらいは配備されているのであろう。それほどに筆跡とかかわる刑事事件が多発し、かつ性急な鑑定によって捜査が行なわれているということになる。

 さらに同氏は科捜研を退職後、民事事件の文書鑑定を専門とする民間の業者となり、平成十四年七月までの十六年間に約一四〇〇件の鑑定に携わったという。これでも一年平均にして八十七件になり、一件を四日足らずで処理していたことになる。しかもそのうち、裁判所から命じられた鑑定は二一八件、代理人(弁護士)、郵政省(中国郵政局)、大阪法務局などから依頼を受け、鑑定書を作成したものは三一四件であるという。これを一年平均にすると、前者が十三件強、後者が十九件強となる。同氏と同様の職種にある人が、いま日本に何人いるかを筆者は把握してないし、同氏が筆跡鑑定者の中でどれほどの位置づけにあるかも知らないが、筆跡をめぐる事件や犯罪、またトラブルが社会に頻発していることは確かであって、何人もそれに巻き込まれかねない危険性があることをものがたっている。

 いかに文字に無頓着であっても、自分の書いた署名や筆跡が自分のものとわからない人はまずいまい。しかし、自分の筆跡かそうでないか、その根拠を自分自身で説明できる人がどれほどいるだろうか。たとえば街頭の署名運動や宅配便の署名など、私たちは日々の生活の中で筆跡をさらしているのだから、自分の署名が誰かの手によって収集され、筆跡を透かし写すなどして悪用されることも起こり得る。自筆の筆跡と、それを透かし写した筆跡との違いはきわめて微妙なものである。もしもそのように悪用されたときには、私たちは自らのカでその違いを立証しない限り、こうした不測の事態から脱却できないことになってしまうのである。

 本書はこのような筆跡のもつ危険性に備えて、筆跡とは何か、いかなる手順と方法によって筆跡鑑定を行なうことができるかを解き明かしたものである。とくに大脳生理学と結びつけて筆跡を生み出すメカニズムを明らかにし、ついで筆跡観念の形成に結びつけて文字の歴史性を検証し、筆跡にそなわる内面性を解明しようとしたところに、この本の特色がある。

 そもそも筆跡鑑定士に国家試験などの資格制度はなく、鑑定の仕方にもなんら制度的な規準は定められていない。つまり法廷における筆跡をめぐる裁判は、国家資格に拠らない筆跡鑑定士が、国家規準に拠らない各自の方法で作成した鑑定書によって争われているのが日本の実情なのである。本書はそうした現状に対して、筆跡鑑定の規準となる手順と方法を提言したものでもある。

 なお、第六章「筆跡をコンピュータで鑑定する」は、神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程の和田彩氏に担当していただいた。同氏は目下、筆跡のコンピュータ解析に取り組んでおり、その成果をわかりやすく示したもので、同大学院発達環境科学研究科の青木務教授の監修を経ている。またコンピュータ関係の実験には、日本習字教育財団理事長原田博至先生から多大のご理解とご支援をいただいた。その他、ご協力をたまわった方々に心より御礼を申し上げる。

 二〇〇七年六月

魚住和晃

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