書名 漢字 よみ 著者名 漢字 よみ
さらに詳しく検索

トップ・ページ  新刊・近刊
辞書  電子出版  一般書  六法・法律書  教科書  参考書  教材  品切一覧

言語学
私のラブストーリー

言語学 私のラブストーリー

千野栄一 著

1,500円 B6変 232頁 978-4-385-36096-X (品切)

言語学はこんなにも面白い。自ら十数種類の言語をマスターし、『言語学大辞典』を完結に導いた著者が、とかく難解と思われがちな言語学を、キーワード・キーパーソンの解説を通して描く言語へのラブストーリー。

2002年7月20日 発行



●まえがき

 現代チェコの作家ボフミル・フラバルの最高傑作といわれる作品『あまりにも騒がしい孤独』は、「私は三五年間古紙の仕事に携わっており、それが私のラブストーリーである」という文句で始まっている。この主人公は古紙と本をプレスし、三五年間文字まみれになって働いたそれがラブストーリーだというのである。

 拙著『言語学への開かれた扉』の校正をしていたとき私の頭に浮かんだのは、この本が私のラブストーリーではないかという思いであった。

 私のラブストーリーというのにはもう一つ意味があって、私は自分のことを言語学を専攻したし、言語を研究したけれど、言語学者だと思ったことは一度もない。

 私の考えでは未知の言語を記述する人が言語学者だと思っている。

 幸か不幸か私が一番接することの多かった言語は母語である日本語を除いてはチェコ語で、この言語は私が研究して新しい事を見出すにはあまりにもよく研究されており、この言語で書かれたものの中には実に多くの優れた論文や研究書があった。その他に素晴しい文学もあり、学術の面でも、芸術の面でも、汲めども汲めども汲みつくせない泉であって、私はこの泉を離れて未知の言語の調査に赴くことができなかったのである。

 その満たされぬ思いが私のラブストーリーなのである。

千 野 栄 一



●目  次

まえがき     千野栄一  4

I 言語学へのいざない……………………7

言語調査  9
言語学史  19
音声学  29
音韻論  39
比較言語学  52
解読  62
社会言語学  71
ピジン・クレオル諸語  81
ユニバーサル  91
方言学  101
日本語の構造  112
言語類型論  122
文字論  133
対照言語学  144
言語  154
世界の言語  164

II 近代言語学を築いた人々……………………175

巨人ボドゥアン・ド・クルトネ  177
不死鳥ド・ソシュール  183
具眼者ビレーム・マテジウス  188
天才セルゲイ・カルツェフスキー  193
機能論者マルチィネ  198
構造類型論者メシチャニーノフ  203
言語の詩人エドワード・サピア  209
碩学ヤコブソン  214
比較言語学者アントワーヌ・メイエ  219
日本の言語学者 河野一郎  224

あとがき     千野亜矢子  230



●あとがき

 二〇〇二年三月、例年より早い桜の開花を見ずに千野栄一は亡くなった。生前、本人は自分の本当の専門はスラブ文献学であると言っていたが、実際の仕事はそれ以外の方が圧倒的にまさっていて、いろいろな分野の仕事をしている。スラブ語系でもいくつかの言語ができたが、中でもチェコ語やチェコの文化を紹介する機会が多く、文学の翻訳もしていた。一般言語学に関する仕事も少なくない。大学では長年言語学の講義を行っていたし、言語学に関する著作も多い。中年以降はグルジア語、アルメニア語、亡くなる間際にはラテン語に興味を持って研究していた。

 今回、『言語学への開かれた扉』を再編集して出していただける、というお話があり、内容をあらためて読み返してみると、さまざまな分野の中で千野栄一という人が一番本領を発揮したのは言語学ではなかったか、という感じがする。言語学に関しては実に客観的で鋭い視点を持っていたし、常に正確であることを心がけていた。また、一部の分野だけでなく、全体を見通せる力もあった。

 大学で言語学の講義をしていたとき、学生の「言語学の一般的な入門書としてどの本を読んだらいいか」という質問に対し、「この本がいいようだ」と紹介しては二、三週間後に「やはり不正確でだめだった」「こういう点が不満だ」と言うことが多かった。そういう本人が言語学に関して教科書的な内容の著作を残し、さまざまな本を紹介したということは大変に意味がある。

 本人の講義はもう聞くことができないわけであるが、本書には講義に値する内容がたっぷり詰まっている。言語学を学ぼうと思っている人たちの入門書としてだけでなく、少しでもことばに関心がある人なら必ずや興味を持って読んでいただけると思う。自身も編集部に宛てた手紙の中で「結局、私が言語学でやった一番いいことが伊藤さんがいたときのブックレットで、書いてあることは一つも古くなっていません」と書いている。ぜひ本書で多くの方々に彼の言語学に対する真摯な姿勢と情熱に触れていただきたい。

 出版に関しては三省堂の伊藤雅昭さんに大変お世話になった。この場をお借りしてお礼を申しあげたい。また、すてきな表紙を描いていただいた内澤旬子さんにもとても感謝している。家に取材にいらした時主人がとても楽しそうにしていたことが心に残っている。

二〇〇二年六月  千 野 亜 矢 子

このページのトップへ
トップページへのアイコン




Copyright (C) 2014 by SANSEIDO Co., Ltd. Tokyo Japan