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  ジェンダーで読み解く江戸時代


ジェンダーで読み解く江戸時代

桜井由幾ゆき・菅野則子・長野ひろ子 編

2,800円 四六 288頁 978-4-385-36052-X (品切)

21世紀の知の世界を動かすジェンダーを分析手法にして、気鋭の歴史研究者が江戸時代像の転換を迫る意欲的論集。本書の試みは、江戸時代に関心をもつすべての人に、新しく歴史を読み解く醍醐味を伝える。

2001年7月10日 発行


【刊行にあたって】

 本書は、ジェンダーという新たな分析キーワードを使って、日本の江戸時代を読み解いていこうとするものです。

 ジェンダーは、元来文法上の用法として使われていましたが、1960年代後半からの欧米での女性解放運動の高まりとそこでの思想的営為のなかで、社会科学の新たな概念として登場してきました。J・W・スコットによって「肉体的差異に意味を付与する知」と定義されたジェンダー概念は、国際的にはいまや、人種・民族・階級とならぶ主要な分析概念としての地位を確立し、21世紀の新たな「知」のパラダイム構築に大きく関わろうとしています。

 では、ジェンダー・アプローチは、江戸時代という時空においていかなる新しい「知」を構築できるのでしょうか。言い換えれば、ジェンダー研究によって従来とは異なるどのような江戸時代像が描けるのでしょうか。あるいはまた、ジェンダーという切り込み方で得られる方法上のメリットは何なのでしょうか。

 まず、ジェンダーは、歴史のあらゆる場に「侵入」することができます。政治も経済も文化も、都市も農村も、ジェンダーは苦もなく自身の射程に収めてしまいます。もちろん「女人禁制」の場へも楽々と入り込んでいけるのです。なぜならジェンダー研究の主要課題のひとつは、男女の社会的関係の構造的把握にあるからです。たとえば、ある時代ある地域の女性たちが政治の世界から全く排除されていたとします。(もちろん本書でアン・ウォルソール氏が詳述されているように、日本の江戸時代はそうではなかったのですが)しかしそのことで政治の世界にジェンダーのメスを入れられないということはありません。むしろそこには、なぜ女性が排除されていたのかを構造的に解明するというジェンダー分析の独壇場が設定されるのです。

 また、ジェンダー・アプローチは、男性=普遍、女性=特殊というこれまでの歴史学の構図に果敢に異議申し立てをしています。それは、女性の歴史的経験や行動様式を男性のそれと同等の価値レベルに配置しようとしているのです。確かに一九八〇年代からの日本女性史は、従来の歴史学では顧みられることの少なかった女性の姿を歴史のひだの間から掬いあげることに成功しました。しかし、そのことで女性史や女性研究者に与えられた場所は、歴史や歴史学の周縁部分にすぎませんでした。ところがジェンダーは、二一世紀の学問のパラダイム転換におけるキー概念であることをめざしているのです。

 ジェンダー研究では、ジェンダーが歴史的社会的にいかに構築されたのかということを問題にします。これは、世間で常識とされているものやこれまで根強くみられた女性性「本質」論を根底的に批判するのに有効です。研究者の中には、女性には「性」そのものの特質として「聖」性があると論じている人もいますが、それでは「聖」性は女性性の本来的属性と解釈されてしまいます。これに対し、ジェンダー研究は、「聖」性と女性の結びつきの強さは、ある特定の時空において女性性に付与された特徴と捉え、「本質」論を否定します。現代でも男女の固定的役割分担意識が意外に根強いのですが、いわゆる「本質」論はこのような考え方をそのまま肯定してしまいます。このことは皆様にもよく理解していただきたいところです。

 ジェンダーは、いままでアカデミズムでは殆どとりあげなかったテーマにも光を当て、研究の中枢に据えることも行っています。セクシュアリティの重視などはその典型といってよいでしょう。もちろんジェンダー分析では、他のファクターとの相互連関性を明らかにすることにも力を注いでいます。

 私たちの試みが江戸時代についての新たな歴史像を提示し得たかどうかは、皆様のご判断に委ねる以外にありませんが、本書を通じてジェンダー研究の醍醐味を味わっていただけましたら幸せに思います。  最後になりましたが、本書の刊行にご尽力いただいた三省堂編集部の欄木寿男氏に感謝申し上げます。

2001年3月

桜井 由幾
菅野 則子
長野 ひろ子


【目  次】

刊行にあたって

I 政治とジェンダー                       1

大奥――政治とジェンダーの比較史的考察――   アン・ウォルソール   3
女性による武家の相続――盛岡藩・仙台藩の事例から――柳谷 慶子 44

II 家とジェンダー                                            77

人斬りの家・女の家                                  氏家 幹人   79
近世後期江戸における町人の家とジェンダー            横山百合子 114
     ――土地所持と家業経営の視点から――

III フェミニティとマスキュリニティ                          171

日本近世農村における
マスキュリニティの構築とジェンダー                  長野ひろ子 173
     ――集団化・組織化と権力作用をめぐって――
母と子の物語――近世における母親像を求めて――      桜井 由幾 213
「老」を捉える女と男の意識差                        菅野 則子 238


【執筆者紹介】

(執筆順)(*は編者)

アン・ウォルソール (Anne Walthall) 1946年生れ カリフォルニア大学教授
柳谷 慶子 (やなぎや けいこ)     1955年生れ 聖和学園短期大学助教授
氏家 幹人 (うじいえ みきと)     1954年生れ 国立公文書館
横山 百合子 (よこやま ゆりこ)   1956年生れ 東京大学大学院人文社会系 
                         研究科博士課程
*長野 ひろ子 (ながの ひろこ)   1949年生れ 中央大学教授
*桜井 由幾 (さくらい ゆき)     1940年生れ NHK学園講師
*菅野 則子 (すがの のりこ)     1939年生れ 帝京大学教授

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