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あなたならどうする  ドキュメント 若年認知症


あなたならどうする ドキュメント 若年認知症

朱雀の会 監修、藤本美郷 著

1,600円 四六判 216頁 978-4-385-36471-1

あなたの家族が若年認知症になったらどうしますか? 本書は、家族会第一号の朱雀の会監修で、数組の家族のドキュメント、さまざまな症状とトラブル、最前線の治療、やるべきヒントや全国の家族会の連絡先を紹介。

目 次   監修者・著者紹介
はじめに   おわりに

2010年9月15日 発行



目  次

はじめに ………… 1

第1章 どうして家族が認知症に?

ドキュメント【初期】〜涙を流す家族たち〜

「この先、どんなことがあっても明るく乗り切ってほしい」
   夫の言葉を支えにして生きる

吉桑良一さん・妻 明美さん ………… 6

◎若年認知症という病気

◆若年認知症とは? ………… 19

◆若年認知症の種類〜病状の違いを知る〜 ………… 20

○アルツハイマー病  ○脳血管障害  ○ピック病
○その他(レビー小体型認知症・正常圧水頭症・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫)

◎初期を見落とさないために

◆病院へ行って早期診断を ………… 23

◎この時期にやれること【初期】

◆告知、そして病気を受け入れるには ………… 24

◆日常生活から異常に気がつく ………… 25

こんな異変はありませんか?〜日常生活に潜む病気のサイン〜 ………… 26

第2章 認める勇気と立ち向かう心

ドキュメント【中期】〜認めざるをえない異変が次々と〜

吉桑さんのその後 ………… 28

夫婦がたどりついた最良の場所 ………… 50
  篠田雅夫さん・妻 和子さん

◎この時期にやれること【中期】

◆本人がわかるうちにやっておくこと ………… 73

○経済的準備  ○意思の表明  ○家族や友人との時間を大切にする

◆家族がやっておくこと ………… 76

○今後の生活について  ○介護について  ○施設利用をどうするか

◆ネットワークづくり ………… 77

○家族会への参加

◆病気の公表 ………… 78

◆社会の一員として ………… 79

 

第3章 若年認知症患者と家族の行方

ドキュメント【後期・終末期】〜看取りまで〜

家族で楽しい思い出をいっぱい作ろうよ ………… 83
  大塚政晨さん・妻 幸子さん

◎さまざまな症状と介護fについて【後期・終末期】

○記憶障害の重篤化  ○食事がとれなくなる  ○関節硬縮

◆寝たきりになってしまったら ………… 91

◎この時期にやれること【後期・終末期】

◆どこで看取るか ………… 92

◆その後の生活について ………… 93

〈遺族年金〉  ○遺族基礎年金  ○遺族厚生年金

◆最新治療について ………… 94

○薬物療法  ○ワクチン療法  ○リハビリテーション

第4章 実録 若年認知症の現場では

◎就労支援 〜社会での居場所を見つける〜 ………… 100

■若年認知症サポートセンター「絆や」について

第5章 支援体制を知ろう

◎家族の介護が限界に達する前に ………… 126

○介護保険・在宅介護サービス
  〈訪問介護〉(ホームヘルパー)/〈通所介護〉(デイサービス)/
  〈通所リハビリテーション〉

○若年認知症サポートセンター等

○認知症患者さんが利用できる施設
  〈介護老人保健施設〉(老健)/〈特別養護老人ホーム〉(特養)/
  〈療養型医療施設〉

◎どんな申請ができるかを知る

◆行政への申請 ………… 130

○介護保険  ○自立支援医療  ○特別障害者手当

◆年金手続き ………… 132

○障害基礎年金  ○障害厚生年金

◆保険会社 ………… 133

○介護保険

◎全国若年認知症家族会連絡協議会について ………… 135

第6章 家族会と支援グループ

◎家族会について ………… 138

◎「朱す 雀ざくの会」 若年認知症家族会 ── のご紹介 ………… 140

◆「朱雀の会」定例会の様子 ………… 145

 

■ 資料 〈生きる支援〉のつながり
    ── 全国の主な家族会&支援グループ ………… 159

おわりに ………… 196

 ※カバー写真:© k/amanaimages.  ※本文写真:細江志佳  ※編集協力:Mプランニング    

監修者・著者紹介

■監修/「朱雀の会」若年認知症家族会

2001年に全国初の若年認知症家族会として発足。
代表 大塚幸子。
勉強会・講習会・交流会などの他、毎週金曜日には電話相談も行っています(午前10時〜午後3時まで)。

※第6章「家族会と支援グループ」で詳しい活動をご紹介しています。

住所:奈良県奈良市中登美ヶ丘1丁目1994-3 中登美団地D 17-106
TEL&FAX:0742-53-8665
HP:http://hp.kanshin-hiroba.jp/suzakunokai/pc/

■取材・著作/藤本 美郷(ふじもと みさと)

フリーライターとして長年出版に携わり、後にジャーナリスト兼編集プロダクション Mプランニング代表として独立。雑誌を中心に、100本以上のドキュメンタリー記事を取材・執筆。熱心な取材と温かい目線で書かれた作品には定評がある。特に人間の命・病いなど、原点に迫るドキュメンタリーを得意とする。
執筆・プロデュース協力:「手足のないチアリーダー」(佐野有美著・主婦と生活社)、「奇跡のウエディング」(高橋梨香著・主婦と生活社)ほか。 


はじめに

 自分が誰だかわからなくなってしまう……

 そんなことになったら、いったい何を生きがいにしたらいいの?

 生きている意味があるの?

 

 そんな疑問から、若年認知症の取材がはじまりました。

 もちろん中途半端な気持ちで話を聴こうと思った訳ではありません。しかし、若年認知症の本当の怖さを知らないまま、患者さんやご家族の中に飛び込んだのです。

 すでに末期の患者さんを訪ねて、病院に行きました。

 高齢者ばかりの大部屋の中に、ふさふさと髪が黒く、とても若く見える患者さんがベッドに横たわっていました。

 すでに自分では動くことができずに、動かせるのは瞳とかすかに開く唇だけ。瞳を動かすだけが、患者さんにとってできる最大の自己表現でした。

 60歳そこそこで、本来なら第二の人生を謳歌しているはずです。その患者さんが、すでに終末期になり、静かにその時を待っているのです。告知後に訪れる残酷な姿に言葉を失いました。

 また、ある若年認知症の方の家を訪ねた時のことです。

 奥様が若年認知症にかかってしまい、ご主人が介護をしていました。すでに中期の状態で、3時間におよぶ取材の間、部屋の中をぐるぐる歩きまわったり、取材している後ろで、じーっと佇んでいます。どうしても気になったので、
 「あの……全然座らないのですか? お疲れになるでしょうに……」
とご主人に尋ねました。すると、
 「いつものことですから気にしないでください。これも認知症のひとつの症状なんです」
すべてを受け入れているご主人の顔はとても穏やかでした。

 台所に行き、慣れた手つきでお茶を入れるご主人。長年立ち続けた台所で、奥様が愛する家族のために腕を振うことはもうできません。いまはエプロン姿のご主人の城です。

 頭ではわかっているつもりでしたが、実際にその状態を目の前にすると、唖然としてしまいました。

 自身でも幼少時代、異常な言動をとる祖父に振り回される祖母と母を見て、疑問と怒りでいっぱいになりました。

 食事をしても「飯を食わせない!!」と怒ったり、いつも財布を探し「誰が盗んだんだ!!」と、家族を泥棒呼ばわり。

 一番変化が激しいときは、家の中では、手がつけられないほど怒鳴ったり、近所の庭に入りこんで実をもぎったり、お店から会計前の商品を持ってきてしまう。それでも、家族は「おじいちゃん、ボケちゃってしょうがないわ」と、当然のように言っていました。

 その祖父が亡くなるときのこと。病院では、
 「ありがとう、ありがとう」
 と、感謝の言葉だけをうわごとのように繰り返し、息を引き取るときは一筋の涙が頬を伝いました。厳格な祖父の、初めて見る涙でした。

 祖父は高齢だったため、「年だから」のひと言で片づけられましたが、これが両親だったら、もし自分なら……、と思うと背筋が凍りました。

 働き盛りのお父さんが、笑顔のお母さんが、妻が、夫が、いつどの場面で、病気になるかわかりません。  誰もがかかりうる病気なのです──

 記憶が失われ、やがて寝たきりになり、自分の死もわからないまま最期を迎える。その恐怖と無念さはいかばかりか。そして、愛する人が変っていく姿を受け入れざるを得ない家族の姿は、表現のしようがありません。

 この病気と闘う人たちがいるということを、どんな形でもいいから残しておきたい。その気持ちだけで、目をそむけたくなるような現実に向き合いました。

 患者さんとご家族と共に過ごし、わかったことがあります。

 それは──

 患者さんと呼ばれる前には、どこにでもいる男女であり、普通のお父さん、お母さんだということ。

 そして、どんなに言動が変わろうとも、介護が必要となろうとも、愛する人に、大切な命に一寸の違いもない、ということです。

2010年7月

藤本美郷

   

おわりに

 一昨年(2008年)、取材を通して「朱雀の会」若年認知症家族会と出会いました。それから代表の大塚さんとは、公私共に懇意にさせていただいています。

 昨年9月、いつも明るい大塚さんから、より一層大きな声で連絡が入りました。
  「これから若年認知症の患者さんへのサポートが飛躍的に変わるわ!!」
 話は、若年認知症の患者さんが働ける施設についてでした。
 大塚さんのご主人はすでに寝たきりで、直接恩恵を受けることはできません。それでも、とても嬉しそうです。
 取材をさせていただいた若年認知症と告知を受けた患者さんの「何もわからなくなって死ぬなら、いま死んだ方がましだ!!」という言葉に、胸が締め付けられました。そして、初期で最もつらいのは、仕事を追われ、やることが無くなることだと訴えていました。

 その声を吸い上げたのが、グループホーム「古都の家学園前」代表・若野達也さんです。そして、同職員の恩塚浩史さん(現「絆や」センター長)、若年認知症家族の会「朱雀の会」のみなさん、地域包括支援センター、デイサービスの職員の方々、医療関係者の方々、地域のみなさんなど、多くの方々の力が集約され、奈良県で初めて就労に特化した施設、若年認知症サポートセンター「絆や」が誕生しました。

 まだ「絆や」に依頼される仕事は少ないのですが、患者さんは洗車や草抜きなどの仕事に目を輝かせて働いています。また、昨年行われた「絆や」の忘年会では、
 「仲間もいなくなって、誰からも誘われない。寂しかった。誘ってもらってうれしい」
 ある患者さんは、すでに言葉がスムーズに出ない中で言いました。記念写真では、職員も患者さんも一緒になって、満面の笑みでビールを片手に乾杯する姿が写っています。

 最後まで、「病気に負けずに生きる姿をどうしても伝えたい」と、多くのわがままを言いましたが、ご本人、ご家族をはじめ、現場の方々のご協力により、一冊の本にまとめることができました。ありがとうございました。また、難しいテーマにもかかわらず取り上げて下さった、三省堂の中野園子さんにも深くお礼申し上げます。

 患者さんと「絆や」さんは、名前のごとく強い絆で結ばれています。人の役に立ちたい、自分にできることをしたい、社会とつながっていたい、患者さんたちの願いがどの地域でもかなえられるよう、このような施設が全国に広がることを願ってやみません。

2010年7月

藤本美郷

   


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