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「脱・管理型教育」の処方箋 自立と対話のクラスを生みだす6つのキーワード


「脱・管理型教育」の処方箋 自立と対話のクラスを生みだす6つのキーワード

岩堀禎廣 著

1,600円 A5判 164頁 978-4-385-36487-2


医療・スポーツ・ビジネス界で注目の「ファシリテーション」「ナラティブ」「ビジョニング」等の〈思考・コミュニケーション〉ツールを教育現場に。自立と対話のクラス創生を目指す、「脱・管理型教育」時代の教員必読の書。

著者紹介   目 次   はじめに

2010年9月10日 発行



著者紹介

岩堀 禎廣(いわほり・よしひろ)

薬剤師・薬学博士。組織開発ディレクター
合同会社オクトエル代表社員
E-mail: info[アットマーク]okutoeru.com  *左の [アットマーク] は半角の「@」にお直しください

1972 年、東京都生まれ。
明治薬科大学大学院薬学研究科博士課程在籍中に、APS-J(薬学生の集い:現在日本唯一の薬学生全国組織)設立に参画。同課程修了後、IPSF(国際薬学生連盟)において、IPSFAPRO(国際薬学生連盟アジア太平洋事務局)の初代ワーキンググループのメンバーとしてオランダ、ブルガリア、エジプト、シンガポール、タイ、台湾など20 近くの国と地域で活動を展開する。帰国後は、病院、調剤薬局の薬剤師、慶應義塾大学医学部の教員を経て、さまざまな医療現場、教育機関の運営や企業経営に関わる。2006 年、合同会社オクトエルを立ち上げ、組織開発ディレクターとして「職場の体質改善」に取り組み、現在に至る。NPO法人 OFFICE SHI-YOU 代表理事、社団法人医療経済評価総合研究所副所長・理事を務める。
著書に、『医療コミュニケーション:「スキル」を学ぶ前に読む本』(2008、薬事日報社、共著)、『なぜ、患者は薬を飲まないのか?』(2010、薬事日報社、共著・共訳)など。



目 次

はじめに………iii

1章  メンタルモデル

メンタルモデルとは何か? ………………  2

メンタルモデルの形成 ……………………  4

メンタルモデルの効能 ……………………  4

メンタルモデルの副作用 …………………  5

メンタルモデルと相互作用 ………………  8

メンタルモデルの取り扱い方 …………… 11

対症療法 ── 11

根治療法 ── 13

2章  コンディショニング

コンディショニングの重要性 …… 22

コンディションとは何か? ……… 24

種類 ── 24

範囲 ── 25

時制 ── 26

状態の自覚 …………………………… 26

意識の状態 …………………………… 27

状態と相互作用 ……………………… 28

コンディショニングとは何か? …… 29

コンディショニングの方法 ………… 31

身体的状態を調整する ── 31

精神的状態を調整する ── 32

社会的状態を調整する ── 34

意識の状態を調整する ── 37

3章  ビジョニング

ビジョニングとは何か? ………… 42

ビジョニングの重要性 …………… 44

方法の目的化を防ぐ── 45

目標の目的化を防ぐ── 46

ビジョニングの方法 ………………… 48

クラスのビジョンの創り方 ……… 54

4章  ナラティブ

ナラティブとは何か? ………………………… 58

ナラティブとストーリー ……………………… 59

ナラティブが生まれた背景 …………………… 60

ナラティブを考慮しないことの問題点 ……… 61

ナラティブを意識することの効能 …………… 64

生徒のストーリーに巻き込まれることを予防する ─── 64

教師のストーリーに生徒を巻き込むことを予防する ── 68

生徒のストーリーを学習に活用することができる ─── 69

多様化した生徒に対応することができる ─────── 71

ナラティブの扱い方 …………………………… 71

ヒーロー・インタビュー ── 73

ドリーム・インタビュー ── 75

5章  ファシリテーション

ファシリテーターとしての教師 ………… 80

ファシリテーションとは何か? ………… 83

成長を促進する場 ………………………… 85

教えることの副作用 ……………………… 87

未来に生きる子どもを育む ……………… 88

才能を開発する …………………………… 90

才能の表出化のサポートをする ── 90

生徒が幸せになるための才能を開発する ── 91

学校の教師の新しい役割 ………………… 93

相対的な才能を見出す ──── 93

権限を場に委譲する ───── 94

ファシリテーションの方法 ……………… 95

不安定さを生み出し、保つ ── 95

コントロール欲求を保留する ─ 98

依存体質を避ける── 99

6章  マネジメント

マネジメントとは何か? ………… 106

「管理・統括されるシステム」を変化させる ……………… 109

「管理型の個人」と「学習型の個人」── 109

「管理型の組織」と「学習型の組織」── 110

「管理型のクラス」から「学習型のクラス」へ── 112

クラスを感じる ………………………… 114

全体と個の関係性を意識する ………… 115

共に紡ぐクラスの物語 ………………… 116

「脱・管理型教育」から「新しい管理型教育」へ ……… 118

appendix  明日から始められる7日間エクササイズ
      〜繰り返しの日々に変化を与える〜

メニュー

Day 1 言葉を意識するエクササイズ …………………… 126

Day 2 板書を意識するエクササイズ ……………………… 130

Day 3 「何もしない」をするエクササイズ ……………… 134

Day 4 IT 化されるエクササイズ ……………………………138

Day 5 習慣を手放すエクササイズ ……………………… 140

Day 6 職場と家庭以外の場所にプロのメンターを雇う … 142

Day 7 身近な人たちを喜ばせるエクササイズ ………………… 144

あとがき ……… 146

参考図書・推薦図書リスト ……… 151


はじめに

私は教師ではありません。もともとは薬剤師で、今は組織開発を手がける会社の経営者です。大学院の博士課程を修了し、しばらく薬剤師をした後、縁があって医学部の教員になりました。ここで医学教育を通して専門職教育のノウハウを身につけることになりました。

そこで、優秀な(偏差値の高い)医師たちが、患者や同僚と次々とトラブルを起こすのを目の当たりにしたことをきっかけに、医療者と患者のコミュニケーション教育研修をする会社の立ち上げに参画することになります。その会社は、SP(Simulated patient:模擬患者/ Standardized patient:標準模擬患者)を用いた教育研修システムを日本で初めて事業化した会社でした。この方法は現在でも対人スキルを高める最も高価で効果的な方法ですが、それでも解決できない2つの課題がありました。

1 つ目は、自分を変えるという選択肢を持たない人間が、スキルだけ身につけると、ひたすら相手を変えるためだけにそのスキルを使うということでした。

そして、2 つ目は現在の私の主要な業務である「場」の課題でした。この「場」の問題に取り組み始めたのは、「SP を用いた教育研修で対人スキルを身につけた医療者が職場で力を発揮できない」という現状に直面したからでした。つまり「対人スキルを身につける」ということと「対人スキルを職場で発揮する」というのは、まったく別次元の話だと身にしみて実感させられたからです。

ほとんどの医療者はスポーツでいえば「アウェー」のような環境で働いています。その職場で「ホーム」のような環境を構築できれば、職員は持てる力を120 %発揮できるようになるのではないかと考えたのです。

しかしながら、医療現場では、そのニーズが無いことに気づかされました。「ホーム」のような環境を構築するためには、権力者の権限委譲が必須になります。しかし、医療現場では、権力者は権力を手放そうとはしませんでした。そこまでするほど、権力者は困っていなかったのです。

ちょうどそのとき、世の中では「荒れる学校」を通り越して、学級崩壊が深刻になっていました。学校の権力者も、当初は医療のように権力を手放そうとはしませんでしたが、10年経って「荒れる学校」時代を現場で体験した教員が校長や副校長になっており、教育現場での権限委譲の必要性を理解 してもらえる土壌が少しずつ構築されていました。こうして医療現場とともに、教育の現場での組織開発にも関わるようになりました。

まずは、関東圏の県内でも最も問題を抱えた高等学校に呼ばれることになりました。その改革は結局、学校の合併という形で道半ばにて終わりを告げるのですが、そのプロセスでさまざまな場面を経験することができました。その後、文部科学省関連のプロジェクトなどにもご縁をいただき、幼稚園 から大学までの全ての教育現場に関わる経験を得ることができました。研究発表会、PTA の会合、職員会議など、通常、外部の人間ではなかなか得られない経験をする機会も得ることができました。

教育現場に関わるようになり、その問題発生の構図が医療現場とかなり類似していることに気がつきました。例えば、「先生と呼ばれる存在の一般人との感覚のズレ」「ルールやマニュアルや決め事の弊害」「時代が変わってもまったく変化しない体質」「社会からの隔絶」「教員や医療者の余裕の無さ とストレスやうつ病」「IT 化への対応の遅れ」「アウェーの環境」「個人の力がチームに活かされない環境」「診察室と教室の内外で起きる出来事の違い」「モンスターペイシェントとモンスターペアレンツ」「わがままな生徒とわがままな患者」など枚挙に暇がありません。

それと同時に、医療現場の解決策が教育現場でも役に立つことがわかってきました。さらに、教育現場に限らず、うまくいっている組織、うまくいっていない組織を数多く見てきた経験から、うまくいっていない組織がうまくいっている組織になるためには、いくつかのポイントがあることに気づきました。

そのポイントは、How To のような対症療法と、もっと根本的な原因に近いところに対処する根治療法の2 種類に大きく分類することができます。

根治療法とは、目の前の問題ではなく、根本的なところにある問題の「原因」を扱う方法です。根本的な原因は、問題とは時間的空間的に離れたところに存在します。根治療法は、もともと私の専門であった漢方の「体質改善」という概念に基づいています。西洋医療のような「病気」という問題に着目するのではなく、「患者全体」に着目する視点です。つまり、クラスの誰かを排除したりするような西洋医療的な対症療法ではなく、今いるメンバーの力を発揮して、全体の調子を整えることで、クラスの問題が自然治癒していくという漢方のような方法論が有効であったということです。

では、根治療法だけで万全かといえば、そうではありません。教育現場では、教育をやめることができないため「飛んでいる飛行機を飛びながら修理する」ような治療法が必要となります。そのためには、根治療法を目指しながらも対症療法を同時に行うことが重要です。なぜならば、根治療法は時間がかかるからです。そのため、まずは対症療法を組み合わせて実施することが現実的です。対症療法は、上手に使えば根治療法を実施するための体力を取り戻すことにも役立ちます。しかし、多くの対症療法は根本の問題を悪化させてしまうため、適切な対症療法を選ぶことに留意する必要があります。

私は多くの学校の先生方が、日々、身を粉にして児童や生徒のためにがんばっていることを知っています。それだからこそ、そのような熱心な方々が取り組んでも解決しないということは、これまで取り組んでこられた方法以外にヒントがあるのではないかと考えました。

そういう意味で、この本では、医療の分野だけでなく、ビジネスの分野で効果を発揮している思考法や対処法も多く紹介しています。ビジネスの分野で効果を発揮している手法が全て、教育現場で役立つとは考えていません。しかし、例えば、医療の現場で役立ったビジネス手法などは、比較的構図 が似ている教育の分野でも役に立つ可能性があります。私は、学校や教育が商業化することには抵抗がありますが、多くのビジネススキームの中には、学校や教育現場で役立つものがたくさんあると考えています。もし、それらが、生徒や教師を幸せにするならば、積極的に取り入れることをお勧めしたいと考えています。

以上を踏まえ、この本では、まずは「管理型教育を脱する」ために、医療やスポーツ、企業などの組織開発のノウハウの中から教育現場に適応可能なエッセンスを抽出してあります。特に「メンタルモデル」「コンディショニング」「ビジョニング」「ナラティブ」「ファシリテーション」「マネジメント」という6 種類のキーワードに重点を置いています。

この本の読み始めにおける「管理型教育」とは、教師の権威や立場を用いて生徒をコントロールする豪腕型のクラス運営方法を意味しています。また、「管理」という言葉についても、「部下の管理」や「上位下達」という部分に焦点が当てられています。しかし、読み進めるにつれ「管理」「管理型教育」を脱するということに加えて、「管理」「管理型教育」という言葉の意味そのものが変化していくことを期待しています。そうなると「管理型教育」は、もはや「脱すべきもの」ではなくなり「管理」という言葉は、児童や生徒の自立や才能の発揮につながるものとして用いられるようになります。

この本が、児童や生徒が幸せになるクラスを創りたいと考えている読者の方々の、お役に立てば幸せです。


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