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大学生のための 文学レッスン 近代編


大学生のための 文学レッスン 近代編

江藤茂博、小嶋知善、内藤寿子、山本幸正 編著

1,900円 四六判 216頁 978-4-385-36430-8

「文学」に親しみ、参加する、待望の本! 「恋愛」「ファッション」「学校」「家族」「自然」「異界」「病い」「戦争」「外国」「メディア」の10ジャンル、30の小説から構成。現代小説を手がかりに、「それから」「舞姫」「たけくらべ」等、近代の代表的作品を通してレッスンに参加。「読む技術」を手に入れ、文学と新たに出会う本。

今日、文学に出会う
文学を楽しむ ─あとがきにかえて─
編著者紹介(担当章一覧)
見本ページ

2011年6月20日 発行


『大学生のための 文学レッスン 古典編』へ

 



今日、文学に出会う

文学を読むことは楽しい。そのことを実感してもらうために、本書はできました。
 「面倒くさい」「難しそう」など、文学に嫌悪感を持つ人もいるでしょう。「ケータイがあれば、他のものは何もいらない」と言う人もいるはずです。もしそうだとすれば、あなたはまだ、文学を読む楽しさに出会っていないだけなのです。
 たしかに、「面倒くさい」「難しそう」など、文学にはマイナスの形容がつきまといます。でも実は、文学の世界は無限の広がりを持っているものなのです。すばらしい愛も、残酷な出来事も、文学は言葉だけで表現します。だからこそ、あなたの中で、その愛のすばらしさが、あるいはこの上ない残酷さが、極限まで深められていくのです。
 もちろん、他者にてプログラミングされたゲームで遊ぶことも楽しいでしょう。でももしかしたら、それをはるかに超える楽しみを、文学は私たちにもたらしてくれるかもしれないのです。自分の中でイメージが果てしなく広がっていく驚きを、一緒に体験してみませんか。
 文学の言葉は、イメージの連鎖を生みだす力を持っています。日常生活では決して体験することのできない、この連鎖に出会うことも、文学を読む楽しみです。しかし、自分の中で豊かなイメージを連ねていくためには、ちょっとした練習が必要です。まずは、本書のLessonを通して、文学の言葉を読むという行為に慣れて下さい。そうすればしだいに、言葉の持つ力がわかってくるはずです。
 では、Lessonに入る前に、少しだけ言葉の持つ力について考えてみましょう。残念ながら私たちは、他者のすべてを理解することはできません。でも、相手が発した言葉をもとに、その人がどのような人物なのか想像をめぐらすことはできます。出会いの場面においても、私たちは文学を読むように、相手の言葉を読み解こうとするのです。そして、相手に少しでも近づきたいと思うのならば、言葉の解読を続けていかなくてはなりません。もちろん、身ぶりなども伝達手段だといえます。しかし、人と人との関係において、決定的に重要なものは、文学と同じく言葉なのです。
 さらに、もう少し例をあげてみましょう。ある人が自分の失敗談をあなたに話してくれたとします。失敗談だからといって、悲劇的な内容とは限りません。言葉の選ばれ方や表現のされ方によって、失敗談は教訓譚にもなりますし、ときには喜劇にもなりえます。 
 あるいは、あなたが何らかの事件について聞かされたとしましょう。同じ事件であっても、どこから目撃していたのかによって、話の内容も話され方も変わってくるはずです。駅前でおこった事件の様子を、電車の窓から見ていた場合と、駅ビルの屋上から見ていた場合では、視点が異なります。視点が変化すれば、使われる言葉や語られ方は当然違ってきます。逆にいうならば、言葉の使われ方や事件の語られ方を手がかりに、「どこから見ていたのか」を判断できるのです。
 シャーロック・ホームズや金田一耕助など文学が生み出した名探偵は、しばしば容疑者の発言に注目し、真犯人を明らかにします。容疑者の言葉づかいの細部から、真犯人しか知りえない視点を読み解いていくのです。そして、このような名探偵の読解テクニックは、私たちが文学を読み解く場合の参考になります。
 たとえ同じ世界や出来事であっても、語りのスタイルを変えることにより、全く異なる姿になってしまいます。これこそが、言葉だけで表現される文学の面白さです。本書をもとに、ぜひ語りのスタイルを読み解く方法を手に入れて下さい。そうすれば、作品それぞれが持つ独自の世界を発見することができるようになります。みなさんも「名探偵」になれるのです。
 本書のLessonには、ふたつの役割があります。ひとつはみなさんに言葉の力に気づいてもらうこと、もうひとつはみなさんに読解テクニックを磨いてもらうことです。そのためLessonの内容は、事前に作品を読んだ経験がある人でも、読んだ経験がない人でも取り組めるものにしました。気楽に本書を開き、Lessonにチャレンジして下さい。きっとLessonの解説を読み終える頃には、扱われている作品をあらためて手に取りたくなるはずです。そうした気持ちになって読む時、作品は無限の楽しみを持った存在として、みなさんの前に立ちあらわれます。
 私たちは文学の世界を色鮮やかにするため、本書に10のジャンルを設けました。でも、最初から順番に読まなくても大丈夫です。自分の興味に合わせて、好きなジャンルから入ってみて下さい。そして、10のジャンルをすべて踏破してもらえれば、これまで灰色でしかなかった文学の世界が、かならず色彩豊かなものになっているはずです。



文学を楽しむ ─あとがきにかえて─

Lessonはいかがでしたか。もちろんLessonなどなくても、小説を楽しむことはできます。しかし本書では、いくつものLessonをあえて用意しました。まだ小説を読む楽しさを味わったことがないという人に、小説を楽しむためのヒントを手にしてもらいたかったからです。Lessonを通して、小説に関心を持ってもらえたのなら、これ以上の喜びはありません。みなさんには、これからたくさんの小説を手に取ってもらいたいと思います。いや、小説だけでなく詩や短歌や俳句など、小説以外の文学作品にも手を伸ばして下さい。本書をきっかけに、みなさんが読むという楽しみに目覚めたのなら、私たちの試みは成功したといってよいでしょう。
 小説は、さまざまに読み、楽しむことができます。好きな場面だけをくりかえし味わうこともできますし、映像化された作品と比較しながら解読することも、また面白いものです。作者その人の人生や思想を知れば、作品の生まれた背景を意識しながら、表現を読み解くこともできます。
 本書では、なるべく小説の表現にこだわり、Lessonを作りました。教養や知識などがなくても、小説は楽しめるということを伝えたかったからです。そして読み方のこつを伝え、さらに小説の解釈はひとつではないと示すことに努めました。読み方のこつは、これからみなさんが小説を楽しもうとするときに、最も応用が利くものです。また解釈は多様であるという前提は、小説を楽しもうとするときに、とても大切なことです。小説には正解は用意されていません。入試問題やマニュアル本とは違うのです。小説は、どのようにも楽しめる表現の織物なのです。
 以下に、より専門的に文学を楽しもうとするときに、参考になる本を紹介します。文学作品を読み解くための、さまざまな理論や知識が紹介されている本です。実は本書でも、Lessonや解説は、文学に関する理論を念頭に書かれています。しかし理論そのものを紹介したり、難解な専門用語を使ったりすることを、私たちはできるかぎり避けようとしました。本書を、入門のための入門にしたいという思いからです。ですから、もし本書を読み終え、より高度に文学を楽しみたいと思ったのなら、次にあげる本を見て下さい。これらの本は、きっとみなさんをより豊かな世界に導いてくれるはずです。

1. 大橋洋一編『現代批評理論のすべて』(新書館、2006年)

文学作品を読むのに必要とされる理論が、わかりやすく網羅されています。巻末に付いている「入門書ガイド」と「参考文献」も、参考になります。

2. 前田愛『文学テクスト入門』(ちくま学芸文庫、1993年)

文学を理論的に読み解くテクスト論について、わかりやすく説明してあります。また、都市に着目して文学を読み解いた『都市空間のなかの文学』(ちくま学芸文庫)、文学における読者の重要性を説いた『近代読者の成立』(岩波現代文庫)など、前田の著作はいま読んでも面白いものばかりです。

3. 柄谷行人『日本近代文学の起源』(講談社文芸文庫、2009年)

1980年に出版された同書は、それ以降の文学研究や批評のあり方を決定づけてしまいました。その影響力は、いまだに衰えていません。本書でジャンルとして掲げた「恋愛」「自然」「学校」などは、この本を参考にしたものです。改稿を施された定本版も岩波現代文庫から出ています。

4. 千葉俊二/坪内祐三編『日本近代文学評論選【明治・大正篇】』
 『日本近代文学評論選【昭和篇】』(岩波文庫、2003〜2004年)

明治から1950年代までに書かれた文学評論が収められています。それぞれの時代に編み出された批評理論を知ることもできますし、批評理論の歴史的変遷を概観することもできます。また近代文学史の概略を把握する際にも簡便な本です。

5. 鹿野政直『近代国家を構想した思想家たち』(岩波ジュニア新書、2005年)

近代において文学が生み出されていったとき、その背景にどのような思想が育まれていたのかを知ることは大切です。同じ著者による『近代日本思想案内』(岩波文庫)も参考になります。また『現代日本女性史』(有斐閣)、『健康観にみる近代』(朝日選書)、『兵士であること 動員と従軍の精神史』(朝日選書)は、女性や身体や戦争という観点から文学作品を読み解こうとするときに、大きな示唆を与えてくれるはずです。

6. 世相風俗観察会編『増補新版 現代世相風俗史年表』(河出書房新社、2009年)

本書でもファッションをジャンルとして取り上げましたが、文学を読むときに、同時代の風俗を知っていると、その世界をいっそう親しく感じられるようになります。この本では1945年から2008年までの風俗が紹介されています。ひとつひとつの項目は、読み物としても楽しめるものとなっています。明治から戦前までの風俗を扱ったものとしては、たとえば『知っ得 明治・大正・昭和風俗文化誌─近代文学を読むために』(学燈社)があります。他に森永卓郎監修『物価の文化史事典』(展望社)は、明治から平成にかけての物価の変遷を見るときに、使いやすい事典です。

7. 江藤茂博『映画・テレビドラマ原作文芸データブック』(勉誠出版、2005年)

現代において文学を楽しもうとするときに、映像作品を無視することはできません。両者を比較することで、読む技術も洗練されていきますし、言葉と映像の違いも意識できるようになります。本書は、小説を原作にした、映像作品を整理したもので、映画はもちろん、テレビドラマも網羅されています。また、『映画で見る日本文学史』(岩波ホール編)は、資料としても参考になる一冊です。

8. 関川夏央・谷川ジロー『「坊っちゃん」の時代』(双葉文庫、2002年)

小説を楽しむために、小説家に興味を持つことは大切な一歩です。とりわけ難しそうな明治時代の小説を読もうとするときに、明治の文豪たちの生き生きとした姿を知っていれば、大きな助けになります。『「坊っちゃん」の時代』というマンガは、夏目漱石や森鷗外らが生きた時代を活写した傑作です。また新潮社から出ている『新潮日本文学アルバム』は、写真を通して、文学者の姿を伝えてくれます。気になった作家のアルバムを手に取ったら、きっとその作品を読みたくなることでしょう。

以上、入手しやすい参考文献を中心にあげました。しかし私たちが願うのは、みなさんが文学作品そのものを手にすることです。参考文献を片手に“お勉強”するのでなく、作品そのものを楽しんでもらいたいと思います。本書が、文学を楽しむための第一歩の、ささやかなお手伝いになることを願っています。

本書を作ることは、予想外に難しい作業でした。何度も何度も会議で話し合ったのですが、会議を重ねるごとに、文学の楽しさをわかりやすく伝えることの難しさを、私たちは思い知りました。そうして、ややもすると方向性を見失いそうになったのですが、その都度私たちを導いてくれたのが、編集の飛鳥勝幸さんでした。独りよがりになりがちだった私たちは、飛鳥さんとの対話を通して、文学を伝える言葉を鍛え直していけました。心から感謝の言葉を述べたいと思います。ありがとうございました。



編著者紹介(担当章一覧)

江藤茂博 Eto Shigehiro

1955年生まれ。
現在、二松学舎大学文学部教授
担当:「学校」「家族」「外国」

小嶋知善 Kojima Tomoyosi

1955年生まれ。
現在、大正大学表現学部教授
担当:「戦争」

内藤寿子 Naito Hisako

1971年生まれ。
現在、駒澤大学総合教育研究部専任講師
担当:「恋愛」「ファッション」「病い」

山本幸正 Yamamoto Yukimasa

1972年生まれ。
現在、早稲田大学教育・総合科学学術院非常勤講師
担当:「自然」「異界」「メディア」



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