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連続授業 命と絆は守れるか? 震災・貧困・自殺からDVまで


連続授業 命と絆は守れるか? 震災・貧困・自殺からDVまで

宇都宮健児・浅見昇吾・稲葉 剛 編

1,600円 四六判 232頁 978-4-385-36551-0

震災・貧困・自殺からDVまで日本社会のあり方の再検討が迫られている。この変動期に、どんな心得と対策が必要なのか。支援活動をしている方たちの生の声に耳を傾けつつ、様々な角度から現代社会における新しい絆のあり方を探る緊急本。

目 次   まえがき   あとがき   執筆者紹介

2012年9月10日 発行



目   次

まえがき 1

1時間目 現代の闇と向き合う
      ── 自殺・貧困・孤独死の現場から ──

▶中下大樹(真宗大谷派僧侶、寺ネット・サンガ代表)

現代の闇と向き合う 7/東日本大震災の現場から 22

2時間目 希望のもてる社会をめざして
       ── 多重債務と反貧困運動 ──

▶宇都宮健児(弁護士、反貧困ネットワーク代表)

多重債務の問題に取り組むまで 31/貧困対策が同時に必要な訳 40/東日本大震災・原発事故に対する日弁連の取り組み 51

3時間目 いのちの電話と被災者支援

▶斎藤友紀雄(日本自殺予防学会理事長、日本いのちの電話連盟理事)

いのちの電話「災害ダイヤル」の開設 55/被災とこころのケア 60/いのちの電話・自殺予防学会40周年 68

4時間目 生を肯定できる社会をめざして
       ── 貧困問題の現場から ──

▶稲葉剛(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事)

新宿の「ダンボール村」から始まった 79/名前のない死の意味するもの 84/「活動家のジレンマ」を生きる 93

5時間目 DV・暴力の影響と、そこからの歩み

▶中島幸子(NPO法人レジリエンス代表)

DV・暴力の影響 105/周囲のサポート・回復への道のり 116

6時間目 突然の別れと悲しみからの再生
       ── 犯罪被害の現場から ──

▶入江杏(世田谷事件遺族、ミシュカの森主催)

悼む心が命をつなぐ 127/遺志の社会化 1枚の絵から 134/時効撤廃 悲しみの連帯でいのちを守る社会へ 143

7時間目 命を問う
       ── ケアされる存在としての人間 ──

▶小館貴幸(介護福祉士)

人間存在とケア 153/「介護地獄」と呼ばれる世界を生きる 159

8時間目 死への社会学的まなざし

▶藤村正之(上智大学総合人間科学部社会学科教授)

死と社会学のかかわり 179/社会学確立期からの主題たる死 182/死の類型化 ── 人の死に方がもつ意味 185/過程の中にある死 ── 家族や他者に囲まれて 191/現代文化における死の位置づけ 196

9時間目 新しい絆を求めて
       ── 絆と再分配の問題 ──

▶浅見昇吾(上智大学外国語学部教授)

道徳的争いの背後 206/地縁、血縁、そして…… 210/絆と再分配 212/承認と再分配 216

あとがき 220



まえがき

 命と絆は守れるか?

 あなたはこの本のタイトルを見て、何を考え、何を感じるでしょうか。

 2011年3月に発生した東日本大震災は、直接の被災者はもちろん、ボランティアや職責として被災地の支援に関わった人たち、メディアなどを通して間接的に災害を目撃した人たちにも、「命」や「絆」をめぐる深くて重い問いを突きつけました。この年、実に多くの人々が「絆」について語り、この言葉はその年の「今年の漢字」に選ばれるまでになりました。

 とは言え、「命」と「絆」が問われているのは被災地だけではありません。  震災の前年の2010年には、「無縁社会」という言葉が流行語になりました。都会の片隅で誰にも看取られずに亡くなり、死後も家族に引き取ってもらえない遺体が急増しているという現実に、若年層を含めた多くの人々が自らの将来の姿を重ね合わせました。社会から孤立した末の死は単身者だけにとどまらず、震災から1年が経過した2012年には、全国各地で二人家族、三人家族が餓死・孤立死する事件が相次ぎました。

 こうした状況の中、「命を守るために地域の絆、家族の絆を大切にしなければならない」という主張は説得力を増しつつあるように見えます。

 しかし、スローガンのように「絆」を唱えていれば、人々のつながりが自動的に深まるわけではありません。「絆」を連呼することにより、逆に社会の中にある多様な問題が見えにくくなり、自らの困難な状況を訴え出ることが難しくなる人たちがいる、と指摘している論者もいます。

 たとえば、被災地の一部の避難所では「絆」や「団結」を強調するあまり、個々の避難者のプライバシーを守る仕切りが設置されず、特に女性や障がい者にとって安心できる空間が確保できませんでした。小さい子どもを抱えた福島の母親が放射能汚染から避難しようとしても、家族のしがらみにより県外になかなか出られない、という現実もありました。具体的な個々の場面における「絆」の質や中身が問われているのです。

 「命を守るために絆を大切に」と言い切ってしまう前に、私たちは私たちの社会で起きている現実を一つずつ見ていく必要があります。自殺、貧困、孤立、多重債務、DV、犯罪被害、介護地獄…。それらはできるならば、眼をそらしたい現実です。しかし、これらの現実を「他人事」、「一部のかわいそうな人の問題」として受け流している限り、私たちの社会は「命」を守る力を身につけることはできないでしょう。一人ひとりが現代日本社会の現実を知り、それらを自分の身にも起こりうる問題として捉えること。そして現実を変えていくために、どのような「絆」が必要か考えていくこと。それこそが、真の意味で「命と絆」を守れる社会への第一歩だと私は考えています。

 本書が、そのための一助となることを心より願っています。


2012年7月

編者を代表して 稲葉 剛



あとがき

 なぜ命と絆を主題化しなければならないかは、「まえがき」で説明されている通りです。

 とはいえ、命と絆の問題を取り上げている書物は他にもあります。本書の特徴は、命と絆の問題を真正面から取り上げていることと、この問題を様々な角度から捉えようとしていることです。これまでにも東日本大震災後の支援活動を描いた著作もありましたし、東日本大震災後の社会をどう捉えるべきかについての論考もありました。しかし、本書は実に多様な方向からのアプローチになっています。具体的な支援活動(ここにも様々な領域や種々のアプローチがあります)に携わっている方から、倫理思想や社会学の専門家まで幅広い方が、独自の経験と考えを展開しています。しかも、大所高所からの一方的な意見ではなく、普通に日常生活を送る人と一緒に命と絆の問題を考えていこうという姿勢に貫かれています。

 このことが可能になったのは、本書が上智大学の社会人講座の輪講をベースにしているからだと思われます。社会人講座に集った方々との活発な質疑応答に刺激され、スピーカーは自分の経験や思索を深めることになりました。輪講に参加した受講生の方に心から感謝を申し上げます。

 本書は、終末医療を主題化した『人生の終わりをしなやかに』に続く、「連続授業」シリーズです。前書と同様、企画から刊行のすべてにわたって、三省堂の中野園子さんには大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。


2012年7月

浅見昇吾



執筆者紹介

■1時間目■

中下大樹(なかした だいき)

 真宗大谷派祐光寺僧侶、超宗派寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」代表、生活困窮者の葬儀・納骨等の葬送を支援する「葬送支援ネットワーク」代表、いのちに関する包括的支援「いのちのフォーラム」代表、一般社団法人「家族のこと」理事、一般社団法人「終活カウンセラー協会」全体監修。

 1975年生まれ。大学院でターミナルケアを学び、真宗大谷派住職資格を得たのち新潟県長岡市にある仏教系ホスピス(緩和ケア病棟)にて末期がん患者数百人の看取りに従事。退職後は東京に戻り、超宗派寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」を設立し代表に就任。寺院や葬儀社、石材店、医療従事者、司法関係者、NPO関係者等と連携し、「駆け込み寺」としての役割を担う。生活困窮者のための葬送支援、孤立死防止のための見回り、自死念慮者の相談、自死遺族のケア、貧困問題など、「いのち」をキーワードにした様々な活動を行っている。今まで500人以上の看取りに立ち会い、2000件を超える葬儀に導師として立ち会う。2010年NHK「無縁社会」、朝日新聞「孤族の国」では有識者として取り上げられる。

 著書「悲しむ力」朝日新聞出版社、共著「自殺と貧困から見えてくる日本」ビサイド出版

■2時間目■

宇都宮健児(うつのみや けんじ)

 弁護士。反貧困ネットワーク代表。

 1946年愛媛県生まれ。1969年東京大学法学部中退、司法研修所入所。1971年弁護士登録、東京弁護士会所属。

 以後、日弁連消費者問題対策委員会委員長、日弁連上限金利引き下げ実現本部本部長代行、日弁連多重債務対策本部本部長代行、東京弁護士会副会長、豊田商事破産事件破産管財人常置代理人、KKC事件・オレンジ共済事件・八葉物流事件被害対策弁護団団長、消費者主役の新行政組織実現全国会議(ユニカネット)代表幹事、年越し派遣村名誉村長などを歴任。本書執筆時、日本弁護士連合会会長(2010年4月1日〜2012年5月8日)、内閣に設置された多重債務者対策本部有識者会議委員、全国クレジット・サラ金問題対策協議会副代表幹事、高金利引き下げ・多重債務対策全国連絡会代表幹事、全国ヤミ金融対策会議代表幹事、地下鉄サリン事件被害対策弁護団団長、オウム真理教犯罪被害者支援機構理事長、全国消費者行政ウオッチねっと代表幹事、人間らしい労働と生活を求める連絡会議(生活底上げ会議)代表世話人、週刊金曜日編集委員。

 著書「消費者金融 実態と救済」岩波新書、「多重債務被害救済の実務」編著 勁草書房、「自己破産と借金整理法」自由国民社、「多重債務の正しい解決法──解決できない借金問題はない」花伝社、「お金で死なないための本 いつでもカード、どこでもローンの落とし穴」監修 太郎次郎社エディタス、「反貧困の学校 ── 貧困をどう伝えるか、どう学ぶか」宇都宮健児・湯浅誠編著 明石書店、「派遣村 ── 何が問われているのか」宇都宮健児・湯浅誠編著 岩波書店、「弁護士、闘う 宇都宮健児の事件帖」岩波書店、「反貧困 ── 半生の記」花伝社、「弁護士冥利 ── だから私は闘い続ける」東海教育研究所など。

■3時間目■

斎藤友紀雄(さいとう ゆきお)

 1936年東京都出身。東京神学大学大学院および米国ランカスター神学大学・同市総合病院で宗教心理学、臨床心理学を専攻。1974年より社会福祉法人いのちの電話で電話事務局長、常務理事を歴任。現在、日本いのちの電話連盟理事。その他日本自殺予防学会理事長、青少年健康センター会長、(医療)北の丸クリニック(精神科)常任理事、(社団)被害者支援都民センター理事、厚生労働省、内閣府、東京都などで自殺対策推進委員(2001〜)。

 主要著書として、「電話相談と危機介入」、「自殺問題Q&A」(編)、訳書として M・ローゼンフィールド「電話カウンセリング」などがある。国際リンゲル賞(1997)、朝日社会福祉賞(2007)

■4時間目■

稲葉剛(いなば つよし)

 NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、埼玉大学非常勤講師。1969年広島県生まれ。学生時代より平和運動、外国人労働者の相談・支援活動に関わる。1994年に新宿連絡会(新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議)設立に関わり、東京・新宿を中心に野宿者の支援活動を始める。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者への相談・支援活動に取り組む。

 著書「ハウジングプア」山吹書店・JRC、共著「貧困のリアル」飛鳥新社、共編著「わたしたちに必要な33のセーフティーネットのつくりかた」合同出版

■5時間目■

中島幸子(なかじま さちこ)

 NPO法人レジリエンス代表、DVコンサルタント、米国法学博士、米国ソーシャルワーク学修士、杏林大学・東京医科歯科大学非常勤講師。 DV被害にあった経験をきっかけに勉強を始め、米国にて法学博士号、ソーシャルワーク学の修士号を取得。2001年からDVや性暴力についての講演活動を開始し、2003年レジリエンスを結成。全国各地で、DV、心の傷つき、トラウマとそこからの回復、グリーフケアといったテーマで、当事者、当事者の家族・友人、支援者などさまざまな立場の人々に、自身の体験とソーシャルワーカーとしての実践をもとに、講演活動や研修会を開催するなど幅広い活動を行っている。

 著書「性暴力 その後を生きる」NPO法人レジリエンス、共著「傷ついたあなたへ わたしがわたしを大切にするということ」「傷ついたあなたへ2 わたしがわたしを幸せにするということ」梨の木舎、共訳「DV・虐待加害者の実体を知る」L・バンクロフト著 明石書店、「大切な人を亡くした子どもたちを支える35の方法」ダギーセンター著 梨の木舎、など。

■6時間目■

入江杏(いりえ あん)

 1957年生まれ。国際基督教大学を卒業後、1992年より渡英、大学で教鞭を取る。2000年末、世田谷事件に遭遇、妹一家4人を失う。その後、犯罪被害者および遺族支援・自助活動に従事。2008年より未解決凶悪事件の遺族会(「宙の会」)に加わり、時効撤廃活動に携わる。悲嘆学研究所研究員。グリーフケア研究と啓発活動にも携わる中で絵本創作、著作とともに講演、読み語りへと活動の場を広げていく。自死や難病にも目を向け、声をあげられないトラウマの当事者の声を聴き取り社会に繋げようと努めている。

 著書に、絵本「ずっとつながってるよ〜こぐまの、ミシュカのおはなし」2006年、くもん出版 入江 杏 絵と文(単著)、「この悲しみの意味を知ることができるなら〜世田谷事件 喪失と再生の物語」2007年、春秋社、入江 杏(単著)、「マスコミは何を伝えないか? メディア社会の賢い生き方」2010年、岩波書店 (下村健一氏らと共著)

■7時間目■

小館貴幸(こだて たかゆき)

 立正大学人文科学研究所研究員、立正大学非常勤講師、明治大学非常勤講師、帝京平成看護短期大学非常勤講師、川崎看護専門学校非常勤講師、介護福祉士。学会活動・社会的活動としては、日本倫理学会会員、日本医学哲学・倫理学会会員、日本介護福祉士会会員、日本臨床死生学会会員、日本ホスピス・在宅ケア研究会会員、日本ALS協会会員など。

 1972年生まれ。専門は哲学(生命倫理学、死生学)、介護。具体的には、死を中心に据えて死の意味を問い、死と死を巡る問題に関して研究を続ける。特に最近の関心は、ケア論や死者の問題である。死について思索を続ける一方で、「死は常に現場で生じ、そこで亡くなるのはいつでも顔の見える具体的他者である」として臨床の現場にこだわり、「あなた」と直接に関わること・対話することをモットーに、介護福祉士として在宅における終末期介護(ターミナルケア)や難病介護に携わっている。

 共著「存在の意味への探求 ── 手川誠士郎先生古稀記念論文集」(秋山書店、2011年)。その他論文多数。

■8時間目■

藤村正之(ふじむら まさゆき)

 上智大学総合人間科学部社会学科教授。

 1957年岩手県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。博士(社会学)。東京都立大学助手、武蔵大学専任講師・助教授・教授などを経て、現職。福祉社会学、文化社会学、社会学方法論などを専門としている。学会活動として、関東社会学会会長(2007―2009)、福祉社会学会副会長(2009―)、日本社会学会『社会学評論』編集委員会副委員長(2006―2009)などを歴任。

 著書 「福祉国家の再編成」東京大学出版会、「〈生〉の社会学」東京大学出版会、「社会学」(共著)有斐閣、「ウェルビーイングタウン社会福祉入門」(共著)有斐閣、「福祉化と成熟社会」(編著)ミネルヴァ書房、「いのちとライフコースの社会学」(編著)弘文堂、「非日常を生み出す文化装置」(共編著)北樹出版など。

■9時間目■

浅見昇吾(あさみ しょうご)

 上智大学外国語学部ドイツ語学科教授、上智大学生命倫理研究所所員、上智大学グリーフケア研究所所員。日本医学哲学・倫理学会理事。本書の元になった上智大学社会人講座「死ぬ意味と生きる意味」のコーディネーターを当初より務める。

 1962年生まれ。慶應義塾大学卒。ベルリン・フンボルト大学留学を経て2004年より上智大学外国語学部に赴任。外国人が取得できる最高のドイツ語の資格・大ディプローム(GDS)を持つ数少ない一人。専門は、生命倫理、ドイツ現代哲学、ドイツ観念論。ドイツ現代哲学の知識を背景に生命倫理の諸問題に切り込む。と同時に、現代哲学の手法、特に承認論を手がかりに社会哲学の諸問題と取り組む。

 また、学術書、教養書、小説等、数多くの翻訳を行う。近年は「魔法の声」、「魔法の文字」をはじめとしたドイツ児童文学の翻訳を手がけることも多い。

 共著「医療倫理Q&A」(太陽出版、1998年)、共著「臓器移植と生命倫理」(太陽出版、2003年)。その他、論文多数。



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