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傾聴ボランティア 体験記


傾聴ボランティア 体験記

特定非営利活動法人 ホールファミリーケア協会

1,600円 四六判 224頁 978-4-385-36203-8

今、話題の「傾聴ボランティア」! 個人宅や施設を訪問しての傾聴活動、認知症高齢者の傾聴、さらに東北被災地での傾聴まで。生き生きとした実践手記を豊富に掲載した初めての本。感動がぎっしり! 役立つ傾聴のヒントもいっぱい!

目 次   はじめに   あとがき

2013年1月15日 発行



目  次

はじめに …… 1

《I さまざまな傾聴ボランティア体験記》 …… 7

第1章 東北、被災地の方たちの傾聴  9

傾聴ボランティアもりおかの発足から今まで

岩手県盛岡市 傾聴ボランティアもりおか 会長 藤原 一高  10

被災地傾聴活動日記

埼玉県和光市 和光市傾聴ボランティアクラブ 船津 久江  45

東日本大震災と傾聴ボランティア・支え愛の活動

岩手県宮古市 宮古地域傾聴ボランティア・支え愛 代表 三浦 章  54

「東日本大震災被災地での傾聴活動」報告

高知県高知市 傾聴ボランティア あおぞら 代表 西川 祐  82

福島で……被災者の方々に向かい合って

福島県いわき市 いわき傾聴ボランティア みみ 代表 安島 爵子  87

平地区での活動

いわき傾聴ボランティア みみ 石井 キヌ  93

被災者Kさんとの1年

いわき傾聴ボランティア みみ 石井 治子  99

3つの恐怖を体験したMさんの傾聴

いわき傾聴ボランティア みみ 伊藤 保次  102

第2章 認知症高齢者の方の傾聴  107

お互いの心を癒す傾聴活動

和歌山県橋本市 はしもと傾聴ボランティア青い鳥 代表 青木 久美子 108

よい聴き手になるために〜認知症の方の傾聴〜

東京都三鷹市 傾聴ボランティア 辻村 和子 116

第3章 施設訪問の傾聴活動  125

認知症高齢者の傾聴ボランティア体験記

埼玉県さいたま市 公益社団法人さいたま市シルバー人材センター
  傾聴ボランティア「あゆみ」 関 睦夫  126

一人ボランティア

鳥取県米子市 よなご傾聴しあわせの会 代表 岡田 浩 133

「私はわがままでしょうか?」Tさんのこと

佐賀県佐賀市 傾聴ボランティア佐賀・かたらい 吉木 園枝  142

「傾聴」に出会って! 〜変わった自分の人生、その喜び〜

神奈川県川崎市 ふれあい三輝会 西野 昭伸  148

私の宝物

埼玉県さいたま市 公益社団法人さいたま市シルバー人材センター
  傾聴ボランティア「あゆみ」 宮内 みはる  156

第4章 個人宅訪問の傾聴活動  161

私の個人傾聴 長野県下諏訪町「傾聴みみずく」 塩野入 袈裟一  162

おもてなしの心 神奈川県平塚市 神奈川県傾聴赤十字奉仕団 熊沢 晴子  169

《II 傾聴ボランティア実践のためのヒント》 …… 173

第1章 施設訪問時の傾聴のポイント  175

1. 活動の仕方 176
2. 施設訪問活動時によくある事例について、聴き方のポイント 180

第2章 個人宅訪問時の傾聴のポイント  189

1. 活動の仕方 190
2. 個人宅訪問活動時によくある事例について、聴き方のポイント 193

第3章 認知症高齢者の方の傾聴のポイント  205

1. 「人」として向かい合う 206
2. 具体的な関わり方 207

あとがき …… 212


はじめに

○傾聴ボランティアとは

 傾聴ボランティアとは、「傾聴」するボランティアです。あるいは、「傾聴」することができるボランティアのことです。

 

 では、「傾聴」するとは、どういうことでしょうか?
辞書(広辞苑・岩波書店)を見ますと、「傾聴」とは、「耳を傾けてきくこと」、あるいは「熱心にきくこと」とあります。

 それでは、耳を傾けて、熱心にきく(聴く)とは、どういうことでしょうか?
それは、ただ、相手の話をききながら、「あーそうですか」、「はい、はい」 と言いながらきいていればよいということではないはずです。熱心にきくということは、相手の話に、積極的な興味と関心を持ってきくということだと思います。決して、「あーそうですか」と聞き流していればいいということではありません。

 

 また、相手の話を「積極的な興味と関心できく(聴く)」とは、どのようなことでしょうか?
相手の人を一人の人間(人格)、あるいは、自分と同じように大切な存在と思いながら、向かい合うということがなければ、相手の話を、「積極的な興味と関心」を持って聴くなどということができるものでしょうか? いや、それは大変難しいことだと思います。相手の人を下に見ているときに、相手の話を積極的な興味と関心を持って聴くなどということは、あり得ないとも考えられます。相手を下に見るといった対人関係を現出した瞬間に、そこには「傾聴」などということはあり得ないのだと思います。

 

 なぜ、相手の人を下に見るのか、それは、理由は様々だと思います。相手の人が、何らかの障害を持っていて、日常生活に不便があるからかもしれません。また、認知症などという病を得て理不尽な異常と思われるような言動をするからかもしれません。また、単に経済的に困窮しているからということかもしれません。あるいは、子どもに見捨てられたと嘆いているからかもしれません。あるいは、伴侶に先立たれて寂しいと嘆いているからかもしれません。あるいは、尋常ならざる不幸や事故や災害に見舞われて、すべてを失くしたからかもしれません。はたまた、家族介護ではやりきれなくなって、施設入所となったからかもしれません。上下関係の中で、上位者でありたいと望む人にとっては、どのようなことであっても、上下関係の材料にすることができるのかもしれません。しかし、上位者であることにだけ、自分の存在の意味を見出そうとする人がいたとしたら、それは、いかにも惨めな、ちっぽけな人生(存在)のように思われます。「そんなことは、どうでもいいじゃないか、皆、なかよくやろうよ〜」といった気持ちになれたとしたら、どんなにか豊かで、住みやすい世界がそこに生まれるのではないかと思われます。 そう、ありたいものだと思います。そのような気分で、「相手の話を一生懸命聴く」といったことができたらいいな、と思っています。
つまり、当協会が普及を図っているところの「傾聴」、あるいは、「傾聴ボランティア活動」というのは、単に、相手の話を耳を傾けて聴くということだけではなく、相手の人を一人の人間として認めるという、人との関わり方を大切にしながら、人に関わっていくことであると考えています。

 

 よって、傾聴ボランティアというのは、相手の話を聴く際には、(いくつかの傾聴スキルを駆使することも大事ですが)、もっとも大事なことは、相手と対等といった「基本的な人間観」を持ち合わせながら、相手に関わっていくということができる人のこと、あるいは、そのような「基本的な人間観」に基づきながら、相手に、優しく、丁寧に関わろうと努力する人(ボランティア)のことです。

 

○傾聴ボランティアとは、よいお話し相手ボランティアのこと

 傾聴ボランティアとは、傾聴の仕方を学んだからと言って、相手の深刻な悩みや不安などに対して、何か答えを出してやらなければならないとするものではありません。勿論、そういう場面もないとは言い切れませんが、活動の大半は、相手の話を聴きながら、楽しい話し相手になることです。「楽しい話し相手」というのは、言い替えれば、「よい話し相手」になるということだと思いますが、「よい話し相手」というのは、また、どのような話し相手のことでしょうか?
 相手の話を聞きながら、ことある毎に、「それは違うんじゃないか」と指摘をしたり、「それは、そうじゃなくて、こうしたほうがいいんじゃないか」などと絶えずアドバイスなどをしてくれる人のことでしょうか? そうではないはずです。それは、このように言う人に話し手をやってもらい、聴き手の人に、自分が何か言うたびに、否定される、あるいは、アドバイスをされるということを体験してもらえば、すぐにでもわかってもらえるはずです。それが、いかに不快で、かつ、話し難く、また、自分のことを否定されたような感じがするかということを。

 

 「傾聴ボランティアって何?」と問われた際に、協会では、「それは、人の話を否定しないで、ありのままに受けとめて聴くトレーニングを積んだボランティアのこと」と答えています。しかし、人の話を否定しないで、ありのままに受けとめて聴くなどということは容易にできることではありません。これは、前述の「相手と対等な人間観」といったこととも関係することであり、私たちが人に関わる場合にとても大事なことですが、なかなか難しいことであることも事実です。というのは、私たちは、無意識的に、自分が一番偉い、あるいは、自分が世界の中心であると思って生きているからです。よって、人の話をきく際には、つい、否定的、批判的な物言いをしがちです。  しかし、私たちが、他者とともに、この社会で生きていくときに、自分の考えだけが絶対的に正しいとか、自分が経験したことが唯一の経験であるなどと言い得るものでしょうか? この世の中には、「多様な価値観」が溢れていると考えるのが、きわめて、妥当な、自然な考えではないでしょうか。もしそうだとすると、相手の話をきく際には、相手には相手の価値観があり、人生の意味があると思ってきくことが、ある意味、当たり前に求められているのではないでしょうか。「相手の話を否定しないで聴く」ということは、本当は、お互いの間に求められている、当たり前の聴き方のことであると言ってもいいかもしれません。しかし、このことは、現実には、なかなか難しいことであり、私たちの日常慣れ親しんだコミュニケーション方法とは少し異なるものだと思われますので、やはり、トレーニングが必要となってきます。傾聴ボランティアとは、少なくとも、こうしたトレーニングを積んで、人の話を否定しないで、ありのままに受けとめて聴くことができるようになったボランティアのこと、あるいは、少なくともそのように努力をしているボランティアのことです。

 

※本書では、「きく」に関し、一生懸命きく場合には「聴く」、ただ漫然ときく場合には「聞く」、どちらか言い難い場合には「きく」と表現しています。

 

○なぜ、相手の話を否定しないで聴くのか

 人には、色々な考えがあり、価値観があるということが普通のことだとしたら、相手の話を聴く際には、それを否定しないで聴くならば、きっと、相手は自分の考えが認められた、自分のやってきたことを「それでいいのだ」と認めてもらえたと感じ、大きな喜びを感じるのではないでしょうか。人間が社会的な存在(生き物)だとしたら、他者から認められるということは、大きな喜びのはずです。ときには、それは単に喜びという次元を超えて、自信になったり、自己肯定感になったり、自尊感情になったりするのだと思います。
 それでは、「傾聴」とは、相手に生きる元気を与える「ため」にするのか? ということですが、そうした「ため」にするのではなく、そのように聴くと、相手に喜んでもらえ、そのように喜んでもらえるという様を目の当たりにして、そのように聴かせてもらった自分も、また、嬉しいという、相互の活動です。それは、聴き手としては、人のお役に立っているという喜びであったり、社会貢献といった充実感かもしれません。そして、そのようなお互いの関係が、「いい人間関係」ということにもなるのだと思いますし、ひいては、人間関係の豊かな地域づくりということにもなるのだと思います。

 

○傾聴的な態度と姿勢で、相手に関わるという関わり活動そ
 のもの

 傾聴ボランティアとは、傾聴的な態度と姿勢で、つまり、受容的な態度と共感的な理解で、相手の方に関わるという関わり活動そのものです。よって、言葉によるコミュニケーションが十分にできる人の場合であれば、十分、話を聴かせてもらえばよいし、言葉によるコミュニケーションが不得手になった、例えば、認知症のような人の場合であれば、傍にいるだけでもいいという「情緒的一体感の共有」を目指す活動でもあります。

 

2012年11月

NPO法人ホールファミリーケア協会

理事長 鈴木 絹英
事務局長 山田 豊吉



あとがき

 このたび、『傾聴ボランティア 体験記』という本が発刊されることになったこと、大変嬉しく思います。傾聴ボランティア活動というボランティア活動が、社会的に認知されたことの一つの証だと思うからです。
このように社会的に認知されたということは、勿論、13年前からの当協会の果敢な広報活動、あるいは、ほぼ毎日に近い、全国各地での傾聴講演会・傾聴ボランティア講座の開催ということもありますが、今回、この本の中に登場していただいた各地の傾聴ボランティアの皆さん及び他の地域の皆さんの日々の活動の実践の積み上げのおかげであることは論を待ちません。

 傾聴ボランティア活動は、まだまだ新しいボランティア活動です。ボランティア活動をおこなおうと思っても、多くの場合、そのための場が用意されているわけではありません。その場を創るというところから、始めなければなりません。しかも、関係者の皆さんが、一律に、きちんと傾聴ボランティアのことについて理解してくれているわけでもありません。関係者を説得しながら、また、理解をしていただきながら、活動の場を開拓し、活動を創ってきました。本当にご苦労様でした。今回、この本が刊行されることを機に、また、この本自体を広報の材料にしていただいて、地域で、さらに活動を広げていっていただければと、切に願わざるを得ません。

 傾聴ボランティア活動においては、特に活動開始当初の若葉マークの頃には、多くの戸惑いがあります。アドバイスもせず、答えも出さずにどのように聴くのか、辛い、寂しいばかり言う人の話をどのように聴くのか、この人の話をと言われても、容易に話してくれない人にどう関わったらよいのか、非現実的な同じ話ばかりする認知症の人にどう向かい合えばいいのか、等々。傾聴ボランティア活動とは、そうした意味では、悩みや戸惑いの連続の活動です。しかし、そうした活動であるにもかかわらず、継続して、相手の方と関わっていると、そのうちに何となく話が通じたり、わかってもらえたり、にっこり笑顔を見せてくれたりするようになります。暗く、沈んでいた人が、明るく、元気に、多弁になって、あなた(傾聴ボランティア)に出会えて本当によかった!

 と言ってくれたりするようになります。こうしたときに、傾聴ボランティアとしては、心から、活動していてよかった! と感じます。このような喜びが、多く、この本の中に綴られています。また、このような喜びが、活動のエネルギーとなって、また、明日の活動ということになっています。人と人の、心からの、心温まるつながり、その喜びを感じながら、よりよい人間関係づくり、地域づくりのために、全国の傾聴ボランティアのお仲間と一緒に邁進していきたいと思っています。

 

2012年11月

NPO法人ホールファミリーケア協会

理事長 鈴木 絹英
事務局長 山田 豊吉



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