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国内人権機関の意義と役割 人権をまもるシステム構築に向けて


国内人権機関の意義と役割 人権をまもるシステム構築に向けて

山崎公士 著

3,800円 A5判 304頁 978-4-385-36538-1

“政府から独立した人権機関”の意義、その機能と役割を丁寧に紹介。諸外国の国内人権機関を比較しつつ解説した待望の本! 第I部 国内人権機関の意義と概要/第II部 国内人権機関の機能と活動/第III部 日本における国内人権機関の設置に向けた動向/資料。

はしがき   目 次   著者紹介

2012年9月20日 発行



はしがき

 本書は、1970年代後半から諸外国で登場しはじめた、新しいタイプの人権機関である「国内人権機関」の意義と役割を分析し、日本における国内人権機関の設置を展望するものである。

 先進国も発展途上国も、軍隊、警察、行政など公権力による人権侵害、マイノリティに対する社会的偏見や差別をはじめ、多様な人権課題に直面している。どの国においても、立法・行政・司法の三権分立にもとづく国家機構がこうした人権課題の解決にあたってきた。しかし、社会的差別や身分差別など歴史的・構造的な人権侵害に関し、個別立法や司法的解決のみでは十分に対処できないことが、諸外国で次第に明らかになった。人権委員会・オンブズパーソンのような政府から独立した国内人権機関や憲法裁判所が諸外国で新設されたのは、こうした背景からであった。折しも、冷戦が終結した1990年代以降は、主権国家内の人権課題を国際的に議論しやすい環境が醸成された。国際連合は加盟国に国内人権機関の設置を奨励するようになり、今日に至っている。

 日本では、2001年の人権擁護推進審議会による人権救済答申を踏まえ、2002年に人権擁護法案が国会上程され、問題点を秘めていたにせよ、国内人権機関の設置が検討された。しかし、曲折を経て同法案は廃案となり、その後国内人権機関の設置に向けた法案は国会に提出されていない。他方で、21世紀に入り、諸外国では国内人権機関が順調に設置され続け、いまや120か国以上で国内人権機関が設置されている。こうした内外の情勢を踏まえ、国内人権システムにおいて国内人権機関が果たしうる機能を前向きに評価する観点から、本書は執筆されている。国連、アジア・太平洋国内人権機関フォーラム(同地域諸国の国内人権機関の連合体)などは、日本に、いつ、どのような国内人権機関が設置されるのか注視している。本書を通じて、法曹関係者、メディア関係者、企業のCSR担当者、研究者、院生・学生のみなさまなどに、世界における国内人権機関の意義と役割を知っていただき、日本における国内人権システムのあり方を考えるヒントにしていただければ幸である。

 本書は次の3部からなる。第I部「国内人権機関の意義と概要」では、国内人権機関の意義、国内人権機関設置のガイドラインである国連・パリ原則、世界の国内人権機関、国内人権機関と差別禁止法の関係などを分析する。次いで第II部「国内人権機関の機能と活動」では、国内人権機関の機能一般を概観し、差別撤廃、企業の社会的責任の確立における国内人権機関の役割、国際人権法における国内人権機関の位置などを検討する。これらを踏まえ、第III部「日本における国内人権機関の設置に向けた動向」では、日本における人権救済制度の現状と問題点を分析し、人権救済答申と人権擁護法案の問題点を指摘し、同法案への批判論等を念頭に置きつつ、日本における国内人権システムの確立に向けたあるべき国内人権機関像を提示する。本書は基本的には研究書であるが、読者の便宜を考え、資料に比較的多くの紙数を割いたため、資料が全体の約3分の1を占めている。しかし、資料の約4割にあたる資料■10〜■12に掲げた人権政策提言は、共同作業の成果ではあるが、筆者が最終調整にあたった文書である。

 

 筆者は1984年から10年弱、アジア・太平洋における地域的人権保障システムの可能性に関する研究に取り組んだ。しかし、同地域の政治・経済・社会・文化的な多様性、当時の国際政治環境から、ヨーロッパ、米州、アフリカ地域で成立したような、地域的人権システムの構築を同地域に期待することの難しさを痛感した。筆者が国内人権機関の存在と機能に着目したのは、アジア・太平洋地域諸国内に国内人権機関を設置し、それらの連携を通じて同地域の人権環境を改善することができるのではないかと考えたからである。

 こうした着眼から、筆者は少しずつ国内人権機関の研究に着手し、パリ原則や国際人権センター編『国内人権機関 ──人権の伸長と保護のための国内機関づくりの手引き書』の翻訳を手がけた。National Human Rights Institutionsを「国内人権機関」と訳出したのは本訳書が最初であったと思う。

 1998年にはNMP研究会が組織され、自薦・他薦で集まった当時の平均年齢20歳代後半の若手研究者・弁護士等約10名と、各国の国内人権機関の比較研究を実施した。筆者がその後比較的長く国内人権機関の研究に従事することになったのは、同研究会を構想し、その代表として筆者を指名してくださった江橋崇法政大学法学部教授に負うところが大きい。ここに江橋教授の学恩に対し改めて御礼申し上げたい。中期滞在型の国外調査を精力的に展開したNMP研究会のメンバー各位にも感謝申し上げたい。

 21世紀に入り、日本で国内人権機関を設置する機運が高まったのに呼応し、筆者は日本における国内人権システムの確立や国内人権機関の設置に向け、いくつかの人権政策提言の策定に関わった。資料■10「これからの日本の人権保障システムの整備をめざして」(2002年1月)は人権フォーラム21という、人権政策提言NGOがまとめたものである。この策定作業に約1年間集中的に関わった窪誠、金子匡良、藤本俊明の各氏に御礼申し上げる。資料■12「望ましい国内人権機関 『人権委員会設置法』法案要綱・解説」(2011年12月)は、多様な研究者・弁護士・人権活動家などが組織した「国内人権機関設置検討会」が約2年間かけて丹念に検討した成果である。この検討会に貴重な助言を提供くださった藤原精吾弁護士および武村二三夫弁護士、ならびに作業グループメンバーとしてスカイプ会議を含め頻繁に会合した、寺中誠、川村暁雄および金子匡良の各氏に御礼申し上げたい。

 本書はもちろん筆者の研究を基盤として執筆されているが、以上に謝辞を述べた各氏との討論なしには成り立たなかったことを付記させていただく。

 

 本書は神奈川大学法学研究所から出版助成を受け、刊行される。この機会を与えてくださった同研究所に御礼申し上げる。

 最後に、本書の企画から完成までゆきとどいた御世話をいただいた三省堂出版局の飛鳥勝幸部長に心から感謝申し上げたい。

2012年6月

山崎公士



目  次

はしがき  i

第I部

国内人権機関の意義と概要

第1章 国内人権機関の意義と国連パリ原則  3

I 国内人権機関の意義  3

II 人権システムにおける国内人権機関の位置  5

III 国連パリ原則  6

IV 国内人権機関の資格認証制度  7

V 国内人権機関の認証手続  8

第2章 国内人権機関の歴史的沿革と各国における設置の経緯  13

I 国内人権機関の歴史的沿革  13

II 各国の国内人権機関の概要と設置の経緯  14

 1 概要  14

 2 設置の経緯  14

第3章 世界の国内人権機関  17

I 設置背景と設置根拠法  17

 1 設置背景  17

 2 設置根拠法  18

II 国内人権機関の形態  18

 1 委員会型  19

 2 オンブズパーソン型  20

 3 混合型  20

 4 協議・助言機関型  21

 5 機関・センター型  21

第4章 差別禁止法と国内人権機関  24

I 問題の所在  24

II 差別禁止をめぐる日本法  26

 1 法律  26

 2 日本が批准しまたは加入した人権条約  27

III 人権擁護法案第3条の一般的差別禁止規定  28

 1 人権擁護法案  28

 2 人権擁護法案第3条の一般的差別禁止規定  29

IV 差別禁止規定または差別禁止法の意義  32

 1 法制度の不備の是正  32

 2 人権侵害・差別の反社会性の国家意思としての表明  34

 3 新設が見込まれる国内人権機関の判断基準の明示  34

V 諸外国の差別禁止法  35

 1 一般的差別禁止法 ── 1977年カナダ人権法  35

 2 個別的差別禁止諸法の蓄積─オーストラリアの場合  36

 3 EU理事会の反差別指令  38

VI 差別禁止の手法  40

 1 カナダ人権法の場合  40

 2 国連・反人種差別モデル国内法  41

VII 結びにかえて ── 今後の展望  42

第II部

国内人権機関の機能と活動

第1章 国内人権機関の機能  51

I 人権促進機能(教育・広報)  53

II 人権保護機能(人権侵害の調査・救済)  54

 1 申立ての受理、非公開のあっせん・調停  55

 2 公開の審問手続、人権審判所での審理と決定・命令  55

 3 国内人権機関の裁判参加、裁判提起  57

 4 公開調査(Public Inquiries)  57

III 監視機能  58

IV 提言機能  59

V 調整・協力機能  61

VI 結びにかえて  63

第2章 差別撤廃における国内人権機関の役割  65

I カナダ人権委員会の構成と職務  65

II カナダ人権法における「差別」の定義  66

III 差別事案に関する人権救済  67

IV 差別の予防・撤廃  69

V 差別撤廃に向けた監視と政策提言  69

VI 結びにかえて  70

第3章 ビジネスと人権に関する国内人権機関の活動  74

I 前提的考察  74

 1 企業活動による人権侵害の社会問題化  74

 2 企業の社会的責任をめぐる任意的文書  75

 3 企業の社会的責任をめぐる法的文書策定の動き  75

 4 企業の社会的責任の規律方法  78

II ビジネスと人権をめぐる国際連合の新たな取り組み  79

 1 国連・多国籍企業人権責任規範草案の挫折  79

 2 多国籍企業その他の企業活動に関する事務総長特別代表の任命  80

III 「ビジネスと人権に関する指導原則 ── 国際連合の 『保護、尊重及び
    救済』枠組みの実施」の概要  80

IV 指導原則における国内人権機関の位置づけと評価  82

 1 指導原則における「国内人権機関」への言及  82

 2 「国内人権機関」の位置づけに関する諸機関・団体の評価  86

V ビジネスと人権をめぐる諸課題と国内人権機関の役割  87

第4章 国際人権法における国内人権機関の位置  93

I 国連人権理事会における国内人権機関の役割  93

II 条約体と国内人権機関  94

III 人権理事会における特別手続と国内人権機関  96

第5章 障害者権利条約の実施措置における国内人権機関の位置  99

I はじめに  99

II 条約起草過程における条約の監視(モニタリング)をめぐる議論  99

III 国内的実施措置  101

 1 中心的機関(focal points)の設置  101

 2 政府内における調整のしくみ(coordination mechanisms) 102

 3 条約実施を監視する枠組み(framework) 102

IV 国際的実施措置  103

 1 障害者権利委員会の設置  103

 2 国家報告制度  104

 3 個人通報制度  105

 4 調査制度  106

 5 締約国会議  107

V 結びにかえて  107

第III部

日本における国内人権機関の設置に向けた動向

第1章 日本における人権救済制度の現状と問題点  115

I 人権救済制度  115

 1 根拠法  115

 2 多元的な人権相談・救済実施主体  116

II 人権擁護行政  116

 1 法務省の人権擁護行政  116

 2 人権擁護委員制度  117

III 国内人権機関の必要性  117

 1 司法的救済の限界  117

 2 政府から独立した国内人権機関の必要性  118

第2章 人権擁護推進審議会と人権救済答申  120

I 人権擁護推進審議会  120

II 人権救済答申の内容  121

 1 審議会の審議手法  121

 2 答申の内容について  122

第3章 人権擁護法案  129

I 人権擁護法案の国会上程  129

II 人権擁護法案の概要と特徴  129

 1 人権侵害禁止規定  130

 2 人権委員会の設置と組織体制  133

 3 人権擁護委員制度  133

 4 人権委員会による人権救済手続  134

 5 人権委員会によるその他の権能  135

III 人権擁護法案の問題点  135

 1 法案の特徴  136

 2 人権・人権侵害の定義の明確化  136

 3 人権侵害類型 ── 公権力による人権侵害の不在  136

 4 人権委員会の独立性  137

 5 人権委員会の明確な管轄権  138

 6 人権委員会の利便性  139

 7 メディアによる人権侵害  140

 8 意見・勧告表明、提言機能  140

IV 人権擁護法案の国会審議の経緯  141

 1 法案趣旨説明・質疑  141

 2 法案に関する参考人質疑  143

 3 再度の継続審議と廃案  143

V 名古屋刑務所事件と公権力による人権侵害の表面化  143

第4章 人権擁護法案への批判と政府・与党の対応  147

I 人権擁護法案へのメディアの反発  147

II 法案廃案後の政府・与党の対応  150

III 法案への保守派の反発  151

IV 太田試案と自民党・人権問題等調査会の活動休止  152

第5章 自治体における人権救済制度  159

I 鳥取県人権救済条例の成立と施行停止  159

II 千葉県障害者差別撤廃条例  161

III その他の自治体における障害者差別禁止条例の制定  163

第6章 人権システムの確立と国内人権機関の設置を求める民間の提言 168

I 人権政策提言  168

 1 人権政策提言の背景  168

 2 人権政策提言の検討  169

 3 基本的な視点  169

 4 人権政策提言の特徴  170

II 「日本における人権の法制度に関する提言」  172

 1 提言の背景  172

 2 提言の策定方針と内容  172

III 「人権委員会設置法」法案要綱・解説  174

おわりに  177


資 料

■1 国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則) 183

■2 世界の国内人権機関一覧  185

■3 反人種差別立法の制定における諸政府の指針となる
     モデル国内立法(国連・反人種差別モデル国内法)  192

■4 人権救済制度の在り方について(答申)  196

■5 人権擁護法案  211

■6 新たな人権救済機関の設置について(中間報告)  226

■7 新たな人権救済機関の設置について(基本方針)  227

■8 人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要  228

■9 日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱  230

■10 これからの日本の人権保障システムの整備をめざして
     ─人権政策提言ver.2.1─  241

■11 日本における人権の法制度に関する提言  251

■12 望ましい国内人権機関
     『人権委員会設置法』法案要綱・解説  255

参考文献  279

主要索引  288



著者紹介

山崎公士(やまざき・こうし)

 1948年神奈川県生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位修得。国立国会図書館調査員、香川大学助教授・教授、新潟大学教授等を経て、2009年から神奈川大学法学部教授。専門は国際法・国際人権法・人権政策学。

 主な著書に『国際人権 知る・調べる・考える』(解放出版社、1997年)、編著書に『国内人権機関の国際比較』(現代人文社、2001年)、『人権政策学のすすめ』(江橋崇と共編、学陽書房、2003年)、International Comparison of Anti-Discrimination Laws, Niigata University, 2006. 等がある。



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