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漢字んな話


朝日新聞で好評連載だった漢字コラム
2年間分の待望の書籍化!

4月「咲」から3月「残」まで、
身近な漢字100字のルーツやウンチクを
校閲記者が江戸落語風に面白く紹介。

イワタのUD明朝体(大きくデザインされた視認性・可読性に優れた文字)を使用した本邦初の書籍。
[書体名:イワタUD明朝R。UD=ユニバーサルデザイン]

 

漢字んな話

前田安正・桑田 真 著

1,500円 四六判 224頁 978-4-385-36447-6


朝日新聞で好評連載された漢字コラム2年間分の、待望の書籍化。江戸落語風の軽妙なやり取りで、身近な漢字100字のルーツやウンチクを面白く語る。甲骨・金文・小篆の古代漢字や楽しいイラストも満載。索引付。

はじめに   目 次
本文見本: pp.158-159
索引見本:1ページ目のみ *書籍では全4ページ
著者紹介

2010年1月20日 発行

*2009年12月18日「アスパラクラブ」のエトセトラコミュニティーでの出版記念プレゼントにつきまして、14,804通のご応募をいただき、まことにありがとうございました。厳正なる抽選の結果、2010年1月6日当選者の方にお送りしました。




『漢字んな話 2』

『漢字んな話 2』



はじめに

夏空にモクモクそびえ立つ入道雲、耳の中で花火が炸裂(さくれつ)したようにジンジンと蟬(せみ)が鳴き交う裏山。僕はランニングに半ズボン、ゴムサンダル姿で、虫取り網を持って裏山探検に出かけた。頭のてっぺんから汗を流し、あちこち蚊に食われ、蟬におしっこをかけられ、オオカマキリに睨(にら)み付けられ、長いアリの行列に見とれていた。

いつの間にか辺りは暗くなり、昼間あれほどたくましく思えた木々が、黒服の魔術師に姿を変えていた。僕は急に心細くなり、半べそをかきながら、それでも虫取り網だけはしっかり手に握って家に帰った。家の玄関には、遅い帰りを心配していた母が仁王立ちで待っていた。夕暮れの裏山よりも怖いものが、実は家にあるのだと、その時知ることになった。昭和三十年代半ば、まだ緑あふれる横浜の夏だった。

「山笑う」という春の季語を知ったのは、高校時代だった。新緑の季節を指すその言葉を、僕はなぜか、つい最近まで夏の季語だと思っていた。緑で覆われた木々が、ゆさゆさ風にそよぐ。その下で多くの命が活動している。そんな夏の生命力を「山笑う」と言うのだろうと。しかしその勘違いは、子どものころの思い出と強く絡み合い、なんともユーモラスな言葉を生み出した日本人の心の豊かさと、言葉の力を、僕に意識させた。大学を卒業し、僕は朝日新聞の校閲記者になっていた。

二〇〇四年十二月、僕はソウルにいた。東アジアの漢字事情を取材するためだ。ハングル表記の街で、ふと小さな花屋さんに目がとまった。その看板に「花」という漢字が、丸い輪の中に笑っているようにデザインされていた。「山笑う」ならぬ「花笑う」だった。冬の日差しの中で、僕は漢字の持つ豊かな表情に見とれていた。

そして二〇〇七年一月、夕刊フィーチャー編集の小倉一彦編集長と柏木真次長から「校閲で漢字の字源について書かないか」という話がきた。タイトルは「漢字んな話」。字源は、定説が確立していないものも多く、素人に書ける代物ではない。社外筆者を探すことになった。

しかし、思うように適役が見つからぬまま、同年四月スタートの時期が迫った。「自爆」するしかない。知り合いだった漢和辞典編集者の円満字二郎さんに協力をお願いし、ようやく書いたのが、連載一回目の「咲」だった。

「なぜ、咲が口偏なのか」「なぜ笑が竹冠なのか」。そんな単純な疑問がふと浮かんだのは、子どものころに探検した裏山の思い出と「山笑う」の季語、ソウルの街の「花」のデザインが奇妙に結びついた、偶然からだった。 

登場人物は、「ご隠居」と近所に住む「熊」、その娘「咲」、愛犬の「のんき」。江戸落語風にしたのは、漢和辞典の読み方も満足に知らない僕を、熊のキャラクターに重ねて描くためだった。そんな僕に、漢和辞典を批判的に読み解くということを、一から徹底的に教えてくれたご隠居こそが、円満字さんだった。

三カ月続けばいいと思っていた連載だったが、回を重ねるうち、素人には素人なりの書き方があるようにも思えてきた。単純な疑問を大切にした。いくつも解釈があるものは、出来るだけ紹介するようにした。調べても分からないことは分からないと書いた。出来過ぎだと思った解釈には、登場人物を通してツッコミも入れた。

その登場人物たちは、連載の中で次第に僕の手を離れ、自由に動き始めた。若手の桑田真記者が参加してくれ、パワーアップした。連載は三年半を超え、読者の方から「本にしてほしい」という声が寄せられるまでに、育っていった。

     ◇

本書は、朝日新聞に連載中の「漢字んな話」二〇〇七年四月〜〇九年三月掲載分九十九話を全面的に加筆・改稿、一話を書き下ろし、全百話として再構成しました。また、字源理解の一助に、三省堂の協力を得て同社出版の『全訳漢辞海 第二版』から、説文解字の現代語訳と小篆(しょうてん)を本編左ページ下に掲載しました。また右ページ下には甲骨文と金文も掲げ、和気瑞江さんが温かいタッチのイラストを添えてくれました。新聞連載とは、ひと味違う仕上がりになっています。どうぞ、手にとってお読みください。本書を通して漢字の楽しさが伝われば、幸いです。

朝日新聞大阪本社校閲センターマネジャー

前田 安正


目  次

はじめに …………………… 3

第一章 春はあけぼの
     薄萌葱(うすもえぎ)の野に咲く満開の桜 9

四月

咲 花がニコッと笑ったよ …………………… 10

頭 街のあたり、そのあたり …………………… 12

緑 目に青葉、春色いろいろ …………………… 14

暴 意味が違えば読み方も変わる …………………… 16

問 門と口、どっちが重要だ? …………………… 18

歌 口を開けて声を出そう …………………… 20

字 家の中で子を産み、慈しむ …………………… 22

名 告げたのは夜か夜明けか …………………… 24

五月

将 意味だけじゃ意味がない …………………… 26

巨 使ううちに角もとれます …………………… 28

虹 その昔、竜も蛇も虫だった …………………… 30

々 漢字のふりしたリピーター …………………… 32

零 降る雨に無の世界を思う …………………… 34

条 枝の先、さらにのびる一筋 …………………… 36

局 区切られた小さな世界 …………………… 38

月 肉は夜空に浮かばない …………………… 40

六月

衆 それでも人は働き続ける …………………… 42

郵 大きなサトは、むらになる …………………… 44

陽 小さなサトは、丘で輝く …………………… 46

夜 夕が支配する闇の世界 …………………… 48

西 日沈むころ、鳥は巣に戻る …………………… 50

主 じっと動かぬ灯の守り人 …………………… 52

髪 ハラリと抜ける長年の友 …………………… 54

生 十二の顔持つイキなやつ …………………… 56

酒 トリは飲んべえの未練か …………………… 58

コラム(1) そもそも漢字って? …………………… 60

第二章 夏はよる
     藍色(あいいろ)の夜の帳(とばり)に浮かぶ月 61

七月

貿 貝とおからの合体ロボ …………………… 62

乙 一と九を結ぶ意外な関係 …………………… 64

手 見た目勝負か中身勝負か …………………… 66

蛍 闇に消える一筋の火の粉 …………………… 68

菓 果物からのあま〜い変身 …………………… 70

戦 「ツ」の裏側に多彩な表情 …………………… 72

勇 男だからって力まないで …………………… 74

権 おもりは元祖「力の象徴」 …………………… 76

八月

波 寄せては返すも皮一枚 …………………… 78

友 手を取り合って助け合う …………………… 80

福 下戸も左党も幸せ気分 …………………… 82

愛 大切なのは寄り添う相手 …………………… 84

省 よく見れば無駄が分かる …………………… 86

東 日と木がつむいだ? 物語 …………………… 88

武 戦を止めるものは何だ? …………………… 90

正 攻めて支配する側の論理? …………………… 92

組 まとめて一つの仲間に …………………… 94

九月

季 実りの「とき」に願い込め …………………… 96

級 糸が織りなす順序と序列 …………………… 98

委 豊作願い、しなやかに踊る …………………… 100

犬 鳴き声聞いてひらめいた? …………………… 102

香 うまい! は鼻を刺激する …………………… 104

豪 野性的な荒々しさが魅力 …………………… 106

影 すべては光がつくり出す …………………… 108

時 本家本元より本物らしく …………………… 110

右 手首が先、その後に腕が続く …………………… 112

コラム(2) 説文解字って? …………………… 114

第三章 秋は夕暮れ
     茜空(あかねぞら)にたなびく薄鈍色(うすにびいろ)の雲 115

十月

阿 隈や曲とは入り組んだ友達 …………………… 116

烏 黒服を着た太陽の申し子 …………………… 118

的 ビシーッと言えないから …………………… 120

朝 月影残る草原に日が昇る …………………… 122

央 体の真ん中にあるものは? …………………… 124

牽 牛ひいてアサガオと交換 …………………… 126

峠 きらり光る和のテイスト …………………… 128

頑 人も馬も物も丈夫が一番 …………………… 130

十一月

鰹 なぜウナギがかたいのか …………………… 132

卵 魂をこめて育てています …………………… 134

企 遠くを望み、願いかなえる …………………… 136

南 楽器? 春風? ナンだかなあ …………………… 138

北 冷たい風には背を向けて …………………… 140

暖 時が持ち味を変えていく …………………… 142

優 悲しみを引き受けた役者 …………………… 144

倫 集めて並べて整理して …………………… 146

十二月

嗅 犬だから鼻が利くんだぞ …………………… 148

旅 旗立てて、さあ出かけよう …………………… 150

殺 削る「サイ」には気をつけて …………………… 152

融 どろどろにして滞りなく …………………… 154

与 仲間になって支え合う …………………… 156

集 木の枝に群れるトリたち …………………… 158

至 矢を放ち、吉凶を占う …………………… 160

来 穂を垂れた似たもの同士 …………………… 162

コラム(3) 六書って? …………………… 164

第四章 冬はつとめて
     雪つもる消炭色(けしずみいろ)の木々の枝 165

一月

寿 長生きへの祈りあふれて …………………… 166

宝 大事な物は缶にしまって …………………… 168

雲 もくもくわき出る竜の尻尾 …………………… 170

冷 ピンピン跳ねる氷の筋目 …………………… 172

白 真実・むなしさ包み込む …………………… 174

原 生みの親には「水」がない …………………… 176

相 「き」になる人をよく見て …………………… 178

団 家族がまる〜く集まって …………………… 180

二月

排 手で押しのけてください …………………… 182

校 木と交、でもかなり複雑系 …………………… 184

希 代わりに望みかなえます …………………… 186

経 縦糸が機織りの基になる …………………… 188

号 泣く時は虎の威を借りて …………………… 190

草 見渡せばそこにある世界 …………………… 192

度 物差し代わりに手を使う …………………… 194

冬 糸で結ばれ、静かに春を待つ …………………… 196

三月

嵐 冷たく静かに漂う山の気 …………………… 198

機 ものの働きと心の働きと …………………… 200

丈 大男なら立派で心配ない? …………………… 202

張 弓の弦を伸ばしてピーン …………………… 204

十 PとTの違いがポイント …………………… 206

知 矢口は内なる言葉の発露 …………………… 208

然 尻尾にだって役目はあるさ …………………… 210

青 澄み切ったわき水の魅力 …………………… 212

残 後まで引きずる思いとは …………………… 214

おわりに …………………… 216

主な参考文献 …………………… 218

索引 …………………… (巻末)i


本文見本:pp.158-159

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索引見本:1ページ目のみ  *書籍では全4ページ

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著者紹介

前田安正(まえだ・やすまさ)

朝日新聞大阪本社編集局校閲センターマネジャー。1955年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒業、82年入社。東京本社校閲部、整理部、校閲部次長、名古屋本社編集センター長補佐、東京本社校閲センターマネジャー代理を経て現職。2005年1月、東アジアの漢字事情をリポートした「アジアズームイン 漢字圏」、07年1月、IT時代の漢字をテーマにした「漢字とつきあう」などを担当。07年4月から「漢字んな話」を連載中。

桑田 真(くわた・まこと)

朝日新聞東京本社編集局校閲センター員。1984年生まれ、青森県出身。東京大学卒業、2006年入社。表記や内容の誤りを直す校閲実務のかたわら、07年4月から「漢字んな話」を月1回程度執筆。辞書類と格闘しつつ、文章を書く難しさを実感する毎日。


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