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日本語アクセント入門


日本語アクセント入門

松森晶子・新田哲夫・木部暢子・中井幸比古 編著

1,900円 A5判 224頁 978-4-385-36531-2

“日本語アクセント”のしくみと成り立ちを解き明かした待望の入門書! 学習しやすい基本編・発展編の2部構成(全13章)。東京方言をはじめとして、鹿児島方言や京都方言、さらには琉球方言まで解説。「ポイント解説」と理解度を確認できる「練習問題」、 楽しめる47の「コラム」!

まえがき   もくじ   編著者紹介   見本ページ

2012年9月20日 発行



まえがき

この本は、「日本語のアクセント」のしくみと成り立ちについて解説したものです。日常何気なく使っている私たちのことばの中に、思いもよらない合理的なしくみが潜んでいることを、本書を通じて「発見」してもらえることを目的としています。

ひとくちに「日本語」と言っても、いろいろな方言が存在します。方言は標準語の「崩れた」形などではなく、それぞれの方言ごとに独特の整合性のあるしくみを持っています。アクセントについても、方言ごとにそれぞれの「アクセントのしくみ」を持っています。

この本では、標準語のもとになっている東京方言の他に、各地の方言の例も積極的に取り上げました。

アクセント現象は、たいへん奥が深く、今まで同じ方言だと思っているところに、互いに違う特徴が発見されることがあります。反対に、日本列島のかけ離れた地域で話されている2つの方言が、実はよく似たしくみを持っていることが、明らかになることもあります。こうした事実にあらたに「気付く」ことの楽しさを読者に伝えられるよう、執筆者たちは心がけました。

本書は、大学のテキストとして企画されていますが、日本語、日本の方言、ことば全般に関心を持つ方々にも、アクセントの奥深さと面白さを実感してもらえるのではないかと期待しています。また、日本語教師やそれを目指して勉強している人たち、英語も含めた外国語教育に携わる人たちにとっても、ことばに対する理解を深めるための資料として役立ててもらえるのではないかと思います。

本書は各章、《基礎編》と《発展編》の2部構成になっています。「アクセントのしくみ」を学ぶ上で、どうしても理解してもらいたい事柄は《基礎編》に書かれています。深く理解するには《発展編》も読んでいただきたいのですが、《基礎編》だけを通読しても、日本語アクセントの全体像をつかめる構成になっています。

全体的にできるだけ平易な表現での解説を心がけましたが、専門的な用語も多少出てきます。アクセントの研究分野でよく使われる用語や基本概念については、各章でキーワードをあげて、そのつど説明を加えました。

また、日本語アクセントについてさらに学ぼうとする読者のために、各章に「読書案内」を設け、その章のテーマに関係する参考図書や概説書などを紹介しました。

各章の末尾には、その章で取り扱った方言や、アクセントの基本概念に関係した「練習問題」を設けました。この練習問題は、ぜひ読者の皆さんが自分で解いてみてください(解答は巻末に付いています)。きっとアクセントの規則性を自ら発見することの面白さが、わかってもらえると思います。

この本を出版するにあたり、貴重な時間をさいて私たちに方言アクセントを教えてくださった、全国のたくさんの方言の話し手の方々に、心から感謝したいと思います。

また、私事ですが、本書は私たち執筆者4人のアクセント研究の先輩であり、この分野のリーダー的存在でもある上野善道先生の、65歳の誕生日を記念して企画、立案されたものです。先生には、各章の草稿の段階から、ていねいに読んで役立つコメントやアドバイスをいただきました。心より感謝申し上げます。

この企画を三省堂に勧め、私たちをご紹介してくださった中島由美さん、そして企画を立ちあげてくださった三省堂の柳百合さんにも、この場を借りて御礼申し上げます。そしてなにより三省堂の飛鳥勝幸さんには、本書の構想段階から、私たちのアイディアを実現するための貴重なアドバイスを数多くいただきました。さらに、執筆が遅れがちの私たちを辛抱強く励まし、出版までこぎつけることを可能にしてくれました。飛鳥氏の努力と忍耐抜きには、この本の完成はなかったと思います。心より感謝いたします。

最後に、この本を手に取ってくださった皆様にも感謝いたします。アクセントという、たった1つの切り口ではありますが、本書が皆様自身のことばの発見につながり、今後のあらたなテーマ発見の一助になるとすれば、これ以上の幸せはありません。


2012年6月

松森晶子・新田哲夫




もくじ

まえがき  1

第1章 アクセントとは何か  8

基本編

1.1 方言のアクセント  8

1.2 位置か種類か ── アクセント言語と声調言語  10

1.3 平板型と起伏型  13

発展編

1.4 高さアクセントと強さアクセント  15

1.5 イントネーションとアクセントの違い  16

Column.1 拍(モーラ)による音の数え方  11

Column.2 弁別的 ── 意味を区別する役割 ── とは  12

Column.3 平板型の外来語  14

Column.4 「きれいな空と海」の2つの意味  18

読書案内 19    練習問題 19

第2章 アクセントのしくみ  20

基本編

2.1 アクセントは体系を持つ ── 1〜4拍名詞のアクセント  20

2.2 アクセントの体系  23

2.3 核とは何か  24

2.4 東京方言のしくみ  25

発展編 2.5 方言の違いと共通性  26

Column.1 オトコとコドモのアクセント  21

Column.2 n+1型アクセント体系の分布  24

読書案内 29    練習問題 29

第3章 アクセントの規則  32

基本編

3.1 動詞のアクセント  32

3.2 語形変化とアクセントの位置  34

3.3 形容詞とその語形のアクセント  36

発展編 3.4 派生語のアクセント  40

3.5 動詞句のアクセント  42

Column.1 平板型、起伏型の弁別性(動詞)  33

Column.2 2度目の下降  37

Column.3 形容詞の1型化傾向(1)  38

Column.4 形容詞の1型化傾向(2)  41

Column.5 派生語からつくられた動詞句のアクセント  43

読書案内 44    練習問題 44

第4章 助詞のアクセントと句音調  46

基本編

4.1 句の境界を示すピッチ ── 句音調  46

4.2 助詞のアクセント  51

発展編

4.3 連結音調  54

4.4 句音調いろいろ  56

Column.1 句の切り方と文の焦点  50

Column.2 1つの文節内部の2つ目の下降  53

読書案内 59    練習問題 59

第5章 2型アクセント ── 鹿児島方言  62

基本編

5.1 2型アクセントとは何か  62

5.2 助詞・助動詞が付いたときのアクセント  65

5.3 音調をつくり出すプロセス  68

5.4 複合語のアクセント ── 式保存の法則  69

5.5 東京方言と鹿児島方言のアクセント規則の比較  71

発展編 5.6 2型アクセントいろいろ  72

Column.1 名前のアクセント ── 鹿児島方言  71

Column.2 東京方言と鹿児島方言がうまく対応しない語  72

Column.3 鹿児島アクセントの今昔 ── ゴンザの残した記録から  74

読書案内 76    練習問題 77

第6章 3型アクセント ── 隠岐島の方言  80

基本編

6.1 隠岐島のアクセント  80

6.2 N型アクセントとは何か  81

6.3 N型アクセントの一般的特徴  83

発展編

6.4 N型アクセントの助詞  86

6.5 琉球列島の3型アクセント  88

Column.1 N型体系の分布  83

Column.2 隠岐島五箇方言の有核助詞  87

Column.3 琉球列島の3型アクセント体系における数詞のアクセント  90

読書案内 92    練習問題 92

第7章 アクセントの単位  94

基本編

7.1 拍(モーラ)と音節(シラブル)  94

7.2 アクセントを担う単位と数える単位  97

7.3 拍の方言 ── 京都方言  99

7.4 音節の方言 ── 鹿児島方言  100

発展編

7.5 「拍方言」か「音節方言」かの判断 ── 長崎方言を例として  101

Column.1 「乗車券」と「特急券」のアクセント  104

読書案内 104    練習問題 105

第8章 声調のある方言  106

基本編

8.1 京都アクセントの「式」とはどのようなものか  106

8.2 京都方言の名詞のアクセント型の一覧表  108

8.3 京都方言のアクセントの特徴  110

8.4 関西で進行中の変化 ── 2拍のL2・L0型の世代差  112

8.5 京都方言の動詞・形容詞のアクセント  113

発展編

8.6 京都アクセントの式音調をもう少し詳しく  114

8.7 さまざまな式の音調 ── 諸方言による式の違い  115

8.8 伊吹島 ── 3種類の式の対立を持つ方言  119

Column.1 L0は消滅してしまうのか?  113

Column.2 歌の旋律と話し言葉の音調  115

Column.3 アクセントを知る資料としての歌の旋律  116

Column.4 式の音調の連続性  118

Column.5 式の音調と句音調の違い  119

読書案内 121    練習問題 121

第9章 外来語のアクセントと生産性  124

基本編

9.1 アクセントの生産性  124

9.2 生産的なアクセント型  128

9.3 外来語のアクセント  129

9.4 音節構造とアクセント  130

9.5 新動詞、新形容詞のアクセント  133

発展編

9.6 平板型の生産性  134

9.7 生産的な2つのアクセント型(東京方言)  135

9.8 平板型の省略語  136

9.9 外来語アクセント再検討  137

9.10 と前進型の共存  140

Column.1 語末核(尾高型)の回避による変化  126

Column.2 重音節とアクセント(英語の単純語アクセント規則)  131

Column.3 東京と京都でアクセントは「逆」か? ── 京都方言の外来語  133

Column.4 アクセントの平板化  134

Column.5 京都の複合省略語  137

Column.6 語末の挿入母音/i/  139

Column.7 「アクセント」のアクセント  140

読書案内 141    練習問題 142

第10章 複合語のアクセント(1) 146

基本編

10.1 東京方言の複合名詞のアクセント  146

10.2 2語連続の複合名詞のアクセント  148

10.3 不完全複合名詞のアクセント  151

10.4 1単位の複合名詞のアクセント  152

発展編

10.5 例外的な複合名詞のアクセント ── 後部が1、2拍語の場合  155

10.6 例外的な複合名詞のアクセント ── 後部が3、4拍語の場合  158

Column.1 右枝分かれによるアクセント単位の切れ目  150

Column.2 母音の無声化とアクセントの移動  153

Column.3 どちらかに分類できない複合名詞  155

Column.4 平板型の複合名詞はどういう場合に生じやすいのか  157

Column.5 外来語の語中の挿入母音と複合名詞のアクセント  159

読書案内 161    練習問題 162

第11章 複合語のアクセント(2) 164

基本編

11.1 式保存の法則  164

11.2 京都方言の複合名詞のアクセント  167

発展編

11.3 東京と京都の複合名詞のアクセント
     ── 複合名詞の核の有無と位置の比較  174

11.4 東京方言の複合動詞のアクセント  176

11.5 1単位の複合語規則の類型論 ── 後部決定型と前部決定型  178

Column.1 京都方言の式保存の例外  166

Column.2 2語連続と不完全複合名詞の判別方法  170

Column.3 どちらかに分類できない複合名詞 ── 京都方言の場合  173

Column.4 京都方言に起こったアクセント変化と複合名詞のアクセント  176

Column.5 強調的な意味を持つ複合動詞の前部要素保持  177

Column.6 山田美妙のアクセント研究  177

読書案内 180    練習問題 180

第12章 アクセントの歴史を知る  182

基本編

12.1 アクセントは変化する ── アクセントの類別語彙とは  182

12.2 方言アクセントの型の対応  183

12.3 全国各地のアクセントの型の対応  188

12.4 比較によって得られたグループ  190

12.5 類別語彙と類の統合  191

12.6 その他の類別語彙  192

発展編

12.7 類の統合による方言グループの分類  193

12.8 比較方法と祖形の再建  197

Column.1 アクセント類別語彙の推定をささえる文献  193

読書案内 199    練習問題 200

第13章 アクセントと音韻  202

基本編

13.1 アクセントと音韻  202

13.2 特殊拍の再検討  202

13.3 母音の無声化とアクセント  204

発展編

13.4 アクセントと母音の広狭  208

13.5 松江方言  212

Column.1 母音の無声化が起こりやすい方言・起こりにくい方言  204

Column.2 なぜ母音の「無声化」なのか  205

Column.3 例外にも理由がある  211

読書案内 214    練習問題 214


練習問題の解答  216

主要索引  222

編著者紹介  224



編著者紹介

松森晶子(まつもり あきこ)

1956年生まれ、東京大学大学院人文科学研究科博士課程(言語学専攻)満期退学。現在、日本女子大学文学部教授
執筆担当:1、2、3、4、6、9章

新田哲夫(にった てつお)

1958年生まれ、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程(日本学専攻)中退。現在、金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系教授
執筆担当:1、12、13章

木部暢子(きべ のぶこ)

1955年生まれ、九州大学大学院文学研究科修士課程(国語学国文学専攻)修了、博士(文学)。現在、国立国語研究所教授
執筆担当:5、7章

中井幸比古(なかい ゆきひこ)

1957年生まれ、京都大学大学院文学研究科博士後期課程(言語学専攻)研究指導認定退学。現在、神戸市外国語大学外国語学部教授
執筆担当:8、10、11章



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