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  グループディスカッションで学ぶ 社会学トレーニング


グループディスカッションで学ぶ 社会学トレーニング

宮内泰介 著

1,600円 A5判 152頁 978-4-385-36530-5

社会学的視点を応用し、考え・コミュニケートする力を身に付ける画期的な書!
問題点に気づかせる「ダイアローグ」、グループで取り組む「ワークシート」、課題を考えるための「資料(新聞記事)」、視野が広がる「解説」で、効果的に学習。
「コンビニ」「携帯電話」「言葉」「民族」「貧困」「会社」「メディア」「環境」など、現代的な14のテーマ素材を、ディスカッションを用いて多角的に考察する。

はじめに  この本の使い方
はじめに  この本の使い方・教師編
目 次   見本ページ各種
著者略歴

2013年4月10日 発行




はじめに  この本の使い方

◎この本はグループディスカッションのための本です

 この本は読む本ではありません。使う本です。

 グループでディスカッションをするための実用的なテキストとしてこの本は作られました。

 主に大学の授業で使うことを想定しています。使い方によっては、高校でも、あるいは大学院でも使えるでしょう。また、さまざまな市民活動やNPO、あるいは企業でのワークショップや研修でも使っていただけるものと思います。「社会学トレーニング」という名前ですが、狭い意味での「社会学」にとらわれず、広く「社会を考える」授業やワークショップなどで使っていただけます。

 この本を使って身につけていただきたいのは「社会的な視点でものを見る力」です。「社会的な視点でものを見る力」とは、社会のさまざまな側面ときちんと向き合いながら論理的に考えることのできる力です。何かの現象を見たときに、それを単純に人々の心の問題ととらえるのでもなく、「政治が悪いからだよ」と単純に切り捨てるのでもなく、はたまた「まあ、そういう時代なんだよ」と議論を放棄するのでもなく、社会の複雑なしくみに注目しながら考える力です。

 私たちの頭は案外固くて(これは若かろうが、歳をとっていようがどうも同じようです)、ふだん物事をみるときに、一面的な見方しかできていないことが多いものです。よく議論されているパターンに流されて、固定的なパターンに物事を当てはめているだけ、ということもよくあります。

 柔らかい、しかし論理的で、かつさまざまな視点に目配せを効かせた議論ができるには、少々訓練が必要です。グループディスカッションは、その訓練に最適なものの一つだと私は考えています。一人で考えごとをしても煮詰まってしまいます。一人で本を読んでも、わかった気になって、実はわかっていないことが多いものです。

 グループで意見を出しあいながら、助けあいながら、議論しながら、お互い力を上げていく、というのが、最も効果的なやり方です。

 近年、医療・福祉や教育など、さまざまな分野で「ピア(仲間)」での助け合い、学びあいが注目されています。ピア・カウンセリング、ピア・ラーニング、といった言葉も使われています。なぜ、一見「知識を持っていない人」同士が学びあうほうが、「知識を持った人」が「知識を持っていない」人に上から教えるより効果的なのか。これはなかなか不思議です。しかし、長く大学で授業をやってきた人間からすると、一方的に教えるよりピア・ラーニングの方が確実に効果があります。その理由としては、より参加の度合いが高くなるから、より考えるプロセスが増えるから、あるいは、より関心をもちやすいから、などいろいろなことが考えられそうです。いずれにせよ、グループディスカッションを軸にした学びあいが大きな効果を生んでいることは間違いありません。

 この本では、ディスカッションのテーマについてさまざまなものを用意しました。「コンビニ」「携帯電話」「言葉」「民族」「貧困」「会社」「メディア」「環境」などなどです。そして、こうしたテーマになるべくすんなり入っていけるように、新聞記事など、具体的でわかりやすい素材を用意し、さらに、問題を深める「ダイアローグ」を各章に入れました。テーマについて二人の人が会話している「ダイアローグ」には、グループディスカッションの論点をいくつも潜ませていますので、それをヒントに議論することができます。

 いきなり抽象的なことを議論するのではなく、新聞記事やダイアローグを通じて、現実の事例をちゃんと踏まえた、地に足の着いた議論をすることができるようになっています。

 また、グループディスカッションだけでなく、それと個人作業をうまく組み合わせることが、より学習の効果を生むと私は考えています。一人で考えるのには、じっくり考える、集中して考える、などのメリットがあり、グループディスカッションには、いろいろな考え方を知る、議論をぶつけることでより深まる、などのメリットがあり、その両者のメリットをうまく組み合わせることが大事です。そこでこの本の各章では、その両方の作業が組み合わされています。

◎テーマの多様性、設問の多様性

 ディスカッションというと、それぞれの意見をぶつけあうことだと思っている人がいるかもしれませんが、そうではありません。そもそも私たちは最初からそんなに確固たる意見をもっているわけではありません。

 グループディスカッションの要は、お互いに知恵を出し合い、議論を深めていくということに尽きます。

 しかし、議論を深めるといっても、いろいろなやり方があります。とにかくたくさんアイデアを出すようなディスカッションもあるでしょうし、何らかの結論を出さなければならないようなディスカッションもあるでしょう。「この概念をどう考えたらよいのか」といった、考え方をどんどん深めていくようなディスカッション、さらには、新しい考え方をひねり出すようなディスカッション、課題を見つけるディスカッション、あるいは、行動につなげるためのディスカッションもあるでしょう。さまざまな考え方、議論のしかたを学ぶためにも、いろいろなタイプのディスカッションが経験することが大事です。

 この本では、そうしたさまざまな方向のディスカッションができるように工夫がなされています。「どれが正しいか考えてください」という設問もあれば、「どうしたよいか解決策を考えてください」という設問、「結論は出さなくてよいのでとにかくいろいろ議論してください」という設問もあります。それぞれの章で、何をするためのディスカッションなのかを意識してください。どんどん議論を拡散させていってよい章もあれば、早く議論を収束させなければならない章もあります。

 次の表に示したように、各章のテーマ、難易度、ディスカッションの目標、方向には多様性を持たせています。

●各章の内容
タイトル サブタイトル 難易度
(目安)
ディスカッションの目標 ディスカッションの方向
【第I部 いいか悪いか考える】
1 コンビニ深夜営業規制、是か非か 図式化して整理する 図式化 特に結論は出さない
2 携帯電話のアンテナ設置に税金投入? 多角的に考える 賛否を考える グループで結論
3 「若者言葉」を考える 言葉と社会を考える・1 賛否を考える 特に結論は出さない
4 定住外国人に教える日本語は? 言葉と社会を考える・2 やや難 賛否を考える 結論は出さない。
キーワードを挙げる
5 商店街へ税金投入? 公共性を考える 賛否を考える グループで結論
【第II部 根本から考える】
6 民族って何だ? 概念をとらえ直す・1 やや難 概念再検討 グループディスカッションを経て最後に個人で結論
7 貧困って何だ? 概念をとらえ直す・2 やや難 概念再検討 グループディスカッションを経て最後に個人で結論
8 会社は誰のものか 組織とは何か、経済とは何かを考える 概念再検討 特に結論は出さないが最後に個人で文を作る
9 累進課税を考える 税金のあり方を考える やや難 解決策を考える グループで結論
【第III部 構想する】
10 どの記事を採用する? メディアを考える ランキング グループで結論
11 どれがよい環境保全活動? 環境保全と公共性・1 ランキング グループで結論
12 歴史的建造物を保存すべき? 環境保全と公共性・2 解決策を考える グループで結論
13 どれがよいまちづくり? コミュニティを考える ランキング グループで結論
14 大学の未来プランを作ろう アイデア発想とコミュニティ・プラン 解決策を考える グループで結論

◎拡散と収束:ディスカッションの深め方

 さきほど、議論の「拡散」と「収束」と言いましたが、この2 つの方向は大事ですので、少し意識しておいてください。私たちの思考法は、主に「拡散」と「収束」の両方のベクトルがあります。とにかくいろいろなアイデアを出す、とにかくいろいろな角度に広げてみる、というのが「拡散」です。たくさんのアイデアやデータから、どうまとめていくか、どれが正しいか、どれが有効か、を考えていくのが「収束」です。ディスカッションでも、あるいは一人で考えるときも、この「拡散」と「収束」の両方のプロセスが大事です。どちらか一方だけではダメです。拡散させておかないで収束だけしようとすれば、最初から持ちネタが少ないままの収束になるので、たいした結論は得られません。逆に拡散させる一方だと、議論の成果がよくわからなくなります。拡散と収束を相互に行うことが重要です。グループディスカッションの場合もそれを意識してください。たとえば、早めに話が収束してしまいそうな場合は、わざとそれに反するような例を出してみて議論を広げる(「拡散」)、というのが有効です。あまり早く話がまとまるのは、よいディスカッションとは言えません。わざと反対してみたり、自分でそう思っていなくても「こういう考え方もあるんじゃないの」といったことをあえて提起してみるのは、ディスカッションを有効に進めるのにたいへんよいやり方です。

◎「 解説」は答えではありません

 さて、各章の最後には、「解説」を設けています。注意してほしいのは、この「解説」は「答え」ではないということです。グループディスカッションを補足する程度のもの、少し考えを広げるためのもの、くらいに考えてください。「解説」は授業で使うというより、あとで読むもの、あるいは教師の方は必要ならあらかじめ読んでください、という程度のものです。この章のグループディスカッションにはどういう意図が隠されているか、何を考えてもらいたかったか、などが書かれています。

 解説の最後には参考文献も掲げましたが、これは、それぞれの章で取り上げたことについてより深めたい人のためです。なるべくわかりやすいものを選びましたが、章によっては少し高度なものも含まれています。



はじめに  この本の使い方・教師編

◎授業の進め方、グループディスカッションの進め方

 ここから先は、この本を使って指導を行う教師の方に向けて書かれています。
 大学の授業はおおかた90分ですので、この本でも 1章 90分を想定しています。
 進め方は、それぞれの章によって多少違いますが、おおむね、以下のようになります。

(1) 今日行う内容と手順について簡潔に説明する。

(2) ダイアローグ・資料を読ませる。

(3) グループに分かれる。

(4) グループ内で簡単な自己紹介をする。

(5) それぞれの章に応じた手順で作業を行わせる(個人作業とグループ作業があります)。

(6) いくつかのグループに報告させる。

(7) 最後にふりかえりや教師による補足・解説を行う。

 (1)の内容と手順についての説明は大事です。ここで、今日は何を獲得目標にするのか明確にします。グループディスカッションで何か結論を出してほしいのか、結論は要らないからとにかく幅広く議論してほしいのか、あとで報告してもらうのか、など、受講者に今日の着地点を意識させます。そうした手順や着地点については、その回のあいだ中、前の黒板などに書いて示しておくのもよいでしょう。

 もちろん、いちばん大事なのはグループディスカッションおよびそれに付随した個人作業です。そこにいちばん多く時間をとってください。個人作業→グループディスカッション→個人作業、という3 段階の章なら、たとえば、個人作業10分、グループディスカッション30分、個人作業10分、というふうに。個人作業→グループディスカッション→個人作業、という章が比較的多いのですが、これは、まずグループディスカッションの準備を各自でしてもらい(たとえばそれぞれ資料を読み、設問に対してじっくり考えるなど)、それをグループでシェアした上でディスカッションし、最後にディスカッションを踏まえて各自でまた考えてまとめる、ということを想定しています。

 中心はあくまでグループディスカッションですが、いきなりディスカッションしようとしてもうまくいかないことが多いものです。それぞれディスカッションへ向けて、資料を読んでメモしたり、発想したりして、そのあとディスカッションへ入るというのが、効果的なやり方です。ワークシートは、この本に直接記入するほか、教師があとで回収する必要のある場合は、そのままA4 の大きさでコピー・印刷して教室で配布していただいてもかまいません。

 ディスカッションのとき司会を設けるかどうかは、ケースバイケースですが、多くの場合は設けない方がよいでしょう。というのも、とくに司会を決めなくても、自然と司会役の人が出てくることが理想的ですし、あるいは、司会がいなくてもどんどん議論が進むことが理想です。最初に司会を決めてしまうと、司会の人は司会の役割を果たさなきゃと気負ってしまい、また司会以外の人は司会に任せればいいやと他力本願になってしまいがちです。

 作業やディスカッションの間、教師やファシリテーターの人は、全体を見ながら、ときどきディスカッションの様子を聞きます。場合によってはディスカッションに参加してもかまいません。状況を見ながら、少し議論が煮詰まっているグループがあるな、と思ったら、少し介入して、ディスカッションを前に進めるための質問をしたり、「こんなことも考えてみて」と示唆したりすることもよいでしょう。グループディスカッションのときの教師やファシリテーターの役割は、あくまでサポートです。

 授業の最後をどうもっていくかについては、いくつかの選択肢があります。

(1) 何人かの個人あるいはグループに、どんな議論があったかを簡単に報告してもらい、教師からのコメントを加える。

(2) (とくにグループとしての結論を求めている章についてですが)いくつかのグループを選び、グループの結論を板書してもらう。あるいは、口頭で報告してもらう。

(3) 教師が議論した中身について若干の解説を加える。

 教師がこれが正しい、これが正しくない、と上から押しつけるのではなく、各グループの多様な議論を全体でシェアすることによって、こんな考え方もある、ということを若干の整理とともに示して終わる、というのが理想でしょう。

◎グループ分けのしかた

 グループ分けは、なるべく毎回違うグループになるように工夫しましょう。たしかに顔見知り同士でやった方が気楽にできるのですが、やはりいろいろな人の意見を聞いた方がお互いに勉強になります。

 グループは4 人が理想です。少なくとも3 人、多くとも5 人がよいでしょう。なぜ4 人がよいかというと、これは私の経験則にすぎないのですが、5 〜 6 人以上だと各自の責任が薄まってしまい、積極的に議論に参加しなくてもいいやという雰囲気を醸し出しがちになります。2 〜 3 名だと、出る意見の多様性に限界があります。というわけで、4 人です。少し幅を持たせるとしても、3 〜 5 名でしょう。たとえば、全体で35人のクラスであれば、4 人のグループ8 組と3 人のグループ1 組、というふうに分けます。

 単純に近くでグループを組ませるとふだん話をしている仲良しでグループを組みがちになるので、なるべくシャッフルしてグループを作るように工夫します。35人のクラスなら、1 人1 人順番に1 から9 までの番号をコールさせ、それによって9 つのグループに分けます。あるいは、少し席替えをさせてから、近くの人間で4 人のグループを作る、というだけでもよいかもしれません。

 ところで、このグループディスカッションの授業は少人数の授業でないとできないでしょうか。そんなことはありません。100人くらいの授業でも十分できます。実際私は毎年150人程度のクラスでグループディスカッションの授業を行っています。クラス全体が何人だろうと、とにかく4 人のグループをたくさん作り、各グループが自律的に議論を進めてくれる雰囲気を作りさえすれば、多いクラスでも十分できます。人数が多いクラスの場合、グループ分けがスムーズに進めやすいように、あらかじめグループ分けしやすいようにすわっておいてもらうのがよいでしょう(等間隔にすわってもらうなど)。グループ分けに時間をかけては意味がありません。

 各グループがくつろいだ感じで、かつ真剣な議論をするためには、場の設定が大事です。そのためにも、机や椅子の配置には注意した方がよいでしょう。固定机はこの場合使いにくく(使えないことはありませんが)、動かせる小さな机と椅子が置かれている教室が理想的です。あまり横のグループと近くてもダメなので、部屋の広さにも少し余裕があった方がよいでしょう。しかし、これは工夫次第で何とでもなります。とにかく、ちゃんと顔をつきあわせて議論できるような場の設定をすることが大事です。


 以上、この本の使いかたについて説明しました。
 この本を使って、楽しくて深いグループディスカッションをしてください。どんどん書き込みをしながら、グループディスカッションを行い、この本を真っ黒にしてください。
 では、前置きはこれくらいにして、さっそく始めてみましょう!


*資料での新聞記事中、個人名・住所や所属・学校名等のプライバシーに配慮し、表記を一部変えた箇所があります。



目  次

はじめに  この本の使い方  2

  この本の使い方・教師編  7

第I部 いいか悪いか考える  11

1 コンビニ深夜営業規制、是か非か  図式化して整理する  12

2 携帯電話のアンテナ設置に税金投入?  多角的に考える  18

3 「若者言葉」を考える  言葉と社会を考える・1  26

4 定住外国人に教える日本語は?  言葉と社会を考える・2   32

5 商店街へ税金投入?  公共性を考える  40

第II部 根本から考える  49

6 民族って何だ?  概念をとらえ直す・1   50

7 貧困って何だ?  概念をとらえ直す・2   64

8 会社は誰のものか  組織とは何か、経済とは何かを考える  76

9 累進課税を考える  税金のあり方を考える  86

第III部 構想する  95

10 どの記事を採用する?  メディアを考える  96

11 どれがよい環境保全活動?  環境保全と公共性・1  108

12 歴史的建造物を保存すべき?  環境保全と公共性・2  122

13 どれがよいまちづくり?  コミュニティを考える  130

14 大学の未来プランを作ろう  アイデア発想とコミュニティ・プラン
  144

あとがき  149


見本ページ各種

*全てPDFファイルです



著者略歴

宮内 泰介(みやうち たいすけ)

1961年生まれ。北海道大学大学院文学研究科教授。環境社会学。
主な著書に、『開発と生活戦略の民族誌』(新曜社, 2011)、『半栽培の環境社会学』(編著)(昭和堂, 2009)、『コモンズをささえるしくみ』(編著)(新曜社, 2006)、『自分で調べる技術  市民のための調査入門』(岩波書店, 2004)など。学生の授業評価による北海道大学「エクセレント・ティーチャー」(2003〜2011年度)。
「宮内泰介のページ 」: http://miya.let.hokudai.ac.jp/



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