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  がん ! 放射線治療のススメ


がん ! 放射線治療のススメ

中川恵一 著  (品切)

1,600円 A5変 240頁 978-4-385-36300-4

現在推定300万人が〈がん〉を病み、その約半数近くが放射線治療を受けている。放射線治療の効果や副作用、対策などを中心に、最新の情報を紹介したがんの放射線治療(ガンマナイフ、IMRT、PET、粒子線治療、化学放射線治療など)の全ガイド。QOLを保つ放射線治療を受け、満足な生活を続けている体験者の手記を収録。

2007年3月15日 発行

著者略歴 目次 はじめに 見本原稿(前立腺がんの小線源治療/子宮頸がんは欧米では放射線治療が主流) メディアでの紹介




●著者略歴

中川恵一(なかがわ・けいいち)

東京大学医学部附属病院放射線科助教授、緩和ケア診療部長。
昭和35年(1960年)5月6日東京生まれ。昭和60年3月東京大学医学部医学科卒業、同年6月に東京大学医学部放射線医学教室入局。平成元年1月にスイスPaulSherrer Instituteへ客員研究員として留学、同年12月社会保険中央総合病院放射線科へ。平成5年12月東京大学医学部放射線医学教室助手を務めた後、平成8年2月に同専任講師、平成14年4月には同助教授となる。平成15年11月東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長(兼任)となり現在に至る。英文論文などによる学術発表の他、患者・一般向けの啓蒙活動にも力を入れている。著作に、「ビジュアル版 がんの教科書」「命と向き合う―老いと日本人とがんの壁」「自分を生ききる―日本のがん治療と死生観」(共著)、「緩和医療のすすめ」、「放射線とEBM」、「悪化するがんの治療百科」(共著)など。



●目  次

はじめに――がんにおける放射線治療の役割

1章 放射線治療でここまで治る ―最新治療トピックス 7

○前立腺がんの小線源治療 8
○子宮頸がんは欧米では放射線治療が主流 10
○食道がんの化学放射線療法は手術と同じ効果が出ている 13
○喉頭がんは放射線治療の成績が良いがん 16
○乳がんの乳房温存療法と放射線療法 20
○定位放射線治療の登場 23
○粒子線治療とは? 27
○IMRT その方法と現状 30
○ガンマナイフの効果を知る 33
○万能ではない? PET検査 37

2章 =座談会= 放射線治療の現在と緩和ケア 41

これからの放射線治療がめざすもの―医師+患者・座談会

●医師の立場から
中川恵一(東京大学病院 放射線科、緩和ケア診療部)
山下孝(癌研有明病院 放射線科)

●患者の立場から
會田昭一郎(市民のためのがん治療の会・代表)
杉山百合子(乳がん経験者)

3章 各がんごとに違う放射線治療 57

1 脳腫瘍 58
2 顔と首の腫瘍 61
3 肺がん 63
4 食道がん 65
5 乳がん 66
6 胃がん 68
7 胆嚢がん、胆管がん、膵がん 69
8 直腸がん 70
9 子宮がん 71
10 泌尿器のがん 73
11 悪性リンパ腫 75

4章 写真で知る 放射線治療の実際 77

■放射線治療の実際と装置 78

5章 体験記   放射線治療〈私の場合〉87

●舌がんの放射線治療体験とセカンドオピニオン―――會田昭一郎 88
●喉頭がんの放射線単独療法と、進行食道がんの放射線化学同時併用療法を体験して―――篠田徳三 92
●乳がん―追加手術はやめて、放射線治療とホルモン療法に―――若松智津子 97
●子宮頸がんの同時化学・放射線療法―――大谷勝子 99
●私が小線源治療法(ヨウ素125永久埋め込み治療)を選んだ理由―――橋本昭雄 106
●重粒子線治療で前立腺がんに挑む―――島崎保彦 109
●乳がんの再発と放射線治療―――杉山百合子 116
●上咽頭がんを放射線治療で―――尾張博 121
●悪性リンパ腫を放射線で治療―――岸本スミ子 125
●食道がん―手術入院、転院、そして放射線治療を選ぶ―――小野武博 127
●脳転移―ガンマナイフ治療を受けて―――亀井洋子 130

6章 どうしてがんが治るの? ――放射線治療について知りたいこと 135

1 主治医から放射線で焼くと言われました。とても不安です。 136
2 放射線治療と言われました。もう手遅れなのでしょうか? 138
3 放射線はどんながんにも効果があるのですか? 140
4 どうして放射線でがんが治るのですか? 142
5 毎日放射線治療に通うように言われましたが、休めないのですか? 143
6 放射線治療の費用はどのくらいかかるのでしょうか? 145
7 放射線治療のスタッフについて教えてください。 146
8 治療中の注意事項を教えてください。 148
9 針を刺して治療すると言われましたが、痛くはありませんか? 150
10 放射線を始める前にマスクを作ると言われましたが、何のためですか? 152
11 治療中に機械が回っています。放射線のかけ方が他の人と違うようです。153
12 広い部屋に1人でいるのが不安です。154
13 手術の間に放射線をかけると言われましたが…156
14 治療の後も通院する必要がありますか? 158

7章 放射線治療の副作用を正しく知れば怖くない! 161

1 放射線治療には副作用がつきものなのでしょうか? 162
2 母が放射線治療を受けました。ひどい副作用があったので心配です。 164
3 放射線をかけると髪が抜けるのですか? 166
4 放射線をかけたところが赤くただれています。大丈夫でしょうか? 167
5 子宮がんの治療をしたのですが、最近便に血が混じるようになり心配です。 169
6 頭に放射線をかけました。ばかになるのではと心配です。 171
7 のどに放射線をかけました。口の中がからからです。 173
8 お腹に放射線をかけていますが、下痢がひどく、おしっこをしても痛いのですが。 175
9 放射線をかけ始めて食欲がなくなりました。どんな食事がよいのでしょうか。 176
10 白血球が減ったと言われました。大丈夫でしょうか? 178
11 放射線を始めた日からめまいと吐き気がするのですが。 180
12 放射線をかけた後、がんになりませんか、子供に影響がありませんか? 181
13 子供が放射線治療をしました。将来が心配です。 183
14 乳房温存療法にも副作用がありますか? 185

8章 放射線治療のしくみをさらに詳しく知る 187

1 放射線って、そもそも何ですか? 188
2 どうして放射線でがんを殺せるのですか? 190
3 放射線は効くがんと効かないがんがあるそうですが? 193
4 なぜ1回で治療せずに、毎日治療するのですか? 195
5 放射線治療の技術は進んでいるそうですが? 197
6 重粒子線治療や陽子線も放射線治療の一種と聞きましたが。 199

9章 緩和ケアと放射線治療 203

■緩和ケアにも有効な放射線治療 204

巻末

日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の認定制度のご案内
用語解説



●はじめに――がんにおける放射線治療の役割

がんを知る

 厚生労働省が2005年に公表した人口動態統計によると、国内のがん死者は32万5885人。ほぼ3人に1人が、がんで死亡する計算です。日本には、がんに関する正確な統計はありませんが、がんはおよそ年間60万人が発症、患者は300万人以上と推計されており、「国民病」と呼んでも過言ではありません。

 がんは細胞の核の中にある遺伝子(DNA)が傷ついて起こる病気です。細胞が分裂するときには、元のDNAを2倍に複製して、新しい2つの細胞に振り分けますが、複製のときに間違いを起こすことがあります。こうした細胞は多くの場合、死滅しますが、ある遺伝子に複製ミス(変異)があると、細胞はとめどもなく分裂を繰り返すことになります。遺伝子には、細胞の分裂、増殖を停止させる働きをする「がん抑制遺伝子」や、細胞の分裂、増殖を進める「がん遺伝子」があります。「がん抑制遺伝子」が変異して、働きがなくなると、細胞分裂を抑えることができなくなり、細胞は死ぬこともできず、増殖を続けます。「がん遺伝子」が変異によって、異常に働き続けても、細胞分裂が続くことになります。寿命が長くなれば、細胞分裂のミスである突然変異を起こす可能性が高くなります。

 また最近の研究では、がん細胞は健康な人の体でも1日に数千個発生しては消えていくことが分かっています。がん細胞を発生早期に退治しているのが免疫細胞だと言われています。がん細胞は、もともと、私たちの正常な細胞から発生していますので、からだの外から侵入する細菌などと比べると、免疫細胞にとって、「異物」と認識できない傾向があります。それでも、免疫細胞は、できたばかりのがん細胞を攻撃して死滅させます。高齢化によって、免疫細胞の働きが低下すると、がん細胞への攻撃力が落ちる結果、発生したがんが免疫の網をかいくぐって成長する確率も増えるのです。

 このように、一言で言えば、がんは、細胞分裂のミスと言えますので、分裂の回数が増えるほど、つまりは長生きするほど、起こる確率が高まります。ですから、がんは、基本的には、遺伝する病気とは言えません。

がんの壁

 がん細胞は、遺伝子にいくつかの突然変異が起こるとできますが、突然変異の数が多くなると、どんどん細胞分裂が盛んになっていきます。早期のがんの方が、進行したがんよりたちがいいと言えます。そして、がんが発生した臓器から、血液の中に侵入して、他の臓器に転移しながら、体が必要とする栄養をどんどん奪い取ってしまい、その人を死に至らしめます。がんは、転移するようになると、手がつけられません。転移をしてしまったがんは、大腸がんの肝臓転移など、一部の例外を除いて、基本的に治癒できません。

 ちなみに、がんの治癒とは、治療のあと5年経っても、再発していない状態を指します。

 5年生存率が治癒率と同義として使われます。ただし、乳がん、前立腺がんなどの、進行がゆるやかながんは、5年後にも再発することがあり、10年生存率が使われます。乳がんなどは、治癒後20年して再発することも珍しくありません。治りやすいがんは、いつまでも再発のリスクのあるタイプでもあります。

 また、最初の治療に失敗して、がんが再発すると、例外はあるものの、治癒はむずかしくなります。この点で、がん治療は最初の治療が重要で一発勝負、敗者復活戦なし、と言えます。ですから、がんが再発することは、死を意味します。しかし、がんはゆるやかに進行する病気です。再発しても、数カ月から多くの場合には、数年の猶予があります。脳卒中や心臓病と比べて、かなりの時間を与えてくれる点は大事で、人生の総仕上げの時間を与えてくれます。また、養老孟司先生が指摘されるように、現代の日本では、「死」は日常にも、人々の意識のなかにもありません。がんは、命には限りがあることを思い出させてくれます。

がん治療のいろいろ

 現代医学において、がんの治療として、はっきりと効果が証明されているのは、「手術」、「抗がん剤」、「放射線治療」です。これ以外の治療方法については、十分な治療効果が確立していないため、「代替療法」と呼ばれます。

 いずれにせよ、がんの治療は、副作用を伴います。効果だけあって、副作用のない治療はありません。

 がんの治療の目標は3つあります。がんを完全に治す「根治」、それから、1日も長く生きる「延命」、症状が出た場合に高い生存の質を得る「緩和」の3つです。「根治(完治)」とは、完全にがんから開放されるということです。実際には多くのがんで、再発せずに5年経過した場合に根治と考えますが、乳がんや前立腺がんなどでは、10年後の再発もあり、注意を要します。

 根治を目指した治療は、手術と放射線治療が柱になります。抗がん剤だけで治せるがんは例外で、白血病などの血液のがんに限られます。胃がん、肺がんなどの普通のがん(固形がん)は抗がん剤だけでは治りません。手術と放射線治療で、目の見える範囲でがん細胞を取り除いた後にも、身体のどこかに残っているかもしれない微小で数少ないがん細胞を、再発と転移を予防する目的で叩く補助療法というものもあります。これには、手術のあとの、抗がん剤や放射線治療、放射線治療のあとの抗がん剤などがあります。ともかく、がんの治癒には、少なくとも、原発巣に対する局所治療が不可欠で、さらに、必要に応じて全身への補助療法を追加することになります。

 一方で、根治が得られない場合には何を目標にするかというと、1日でも長く生きるという「延命」とがんによる症状に対して行う「緩和」の2つが大きな目標になります。

 がんの治療法には多くの選択肢がありますので、その中から利益と副作用をよく理解し、ご自身の価値観も踏まえて選択する必要があります。そのためには、患者さんが、正しい選択を行うだけの情報を持っている必要があります。「告知」が重要であるのは、このためです。

切らずに治す放射線治療

 日本は世界一の手術大国です。実際、胃がんには、手術が一番です。胃は全摘できる点で、例外的な臓器ですし、お腹のまん中にあって、切り取るのも簡単だからです。しかし、冷蔵庫の普及などによって胃がんは減少し、乳がん、前立腺がんなど、欧米型のがんが増えています。こうしたがんでは手術が万能ではなく、放射線治療も、手術と組み合わせて、あるいは単独で、がんを根治させることができます。

 以前には、乳がんの治療は、お乳を全部切り取るものでした。しかし、最近では、がんだけくり抜いて、お乳に放射線をあてることで、全摘と同じ効果が得られることが分かり、この「乳房温存療法」が主流になっています。喉頭がんでは、放射線治療も手術も同じくらいの効果ですが、手術では声を失いますので、放射線治療が優先されます。ただ、子宮頸がんでも、前立腺がんでも、放射線治療と手術は同じくらい有効で、欧米では放射線治療の方が行われていますが、日本では手術がまだまだ中心です。例えば、子宮頸がんの進行度がニ期のものをみると、日本では7〜8割が手術ですが、欧米では2~3割にとどまり、全く逆になっています。前立腺がんでも、欧米では、2~3日の入院ですみ、男性機能を保つことができる「小線源放射線治療」(アイソトープを前立腺に埋め込む方法)が主流ですが、日本ではまだまだ普及していません。

 養老孟司氏との共著『自分を生ききる―日本のがん治療と死生観―』でも触れたように、日本人は、死を生活からも意識からも排除して、いわば、「永遠に生きるつもり」でいます。自然、身体に対する潔癖性が過剰となり、「悪いところはきれいさっぱり切り取って、永遠に生きたい」と思っているような気がします。放射線治療のような「治ったのか治らなかったのかはっきりしない」治療では、十分な満足感を与えられないのかもしれません。しかし、最近では、がんの病巣だけに放射線を集中する「ピンポイント照射」が可能になってきており、ますます放射線治療の効力が高まっています。放射線治療は「切らないメス」と言えるのです。

              2007年1月

中川恵一



●見本原稿

前立腺がんの小線源治療
(1章  放射線治療でここまで治る―最新治療トピックスから)

 小線源治療とは、小さな放射性物質を、治療する局所に挿入して行う放射線治療を意味します。アメリカにおいて本治療法は、前立腺がんに対する放射線療法として確立され、既に15年以上経過し、比較的早期の前立腺がんの一般的な治療法として広く行われています。日本では医療法、放射線障害防止法などの法律的な問題から施行できない状態が長く続いていましたが、ヨード線源を用いた小線源療法が開始され、2005年末ですでに40近い施設に導入されています。PSA検診の普及や食生活の欧米化、人口の高齢化に伴い急速に増加する前立腺がん患者に対する福音となりうる治療法です。

 実際の治療ですが、直腸に超音波用のプローベ(棒状のもの)を挿入して、超音波画像を見ながら肛門と陰嚢の間から前立腺内に針を刺し、そこから線源を挿入することにより前立腺に正確に線源を留置します。留置されるヨード線源は40個から100個程度で、1回の刺入で終了する簡便な治療です。ライナックなどを用いる外部照射では、1回の治療時間は短いものの全部で6週間以上の治療期間を必要とするのに対し、短期入院で済むことから、仕事をしながら早期の職場復帰が可能な点も本治療法の特徴と言えます。

 この線源は、非常に弱い放射線を出す小さな(長さ約4・5mm、直径約0・8mm)カプセル(チタン製)で、中に放射性ヨウ素125(I‐125)が密封されており、前立腺内のがん病巣へ放射線を照射します。その放射線量は徐々に弱まり、1年後にはほとんどゼロになります。前立腺内に挿入された線源から体の外に出る放射線は非常に弱いもので、周囲の方に与える放射線量は人が自然に受けている放射線量より低いもので、治療後も普段どおり人と接することができます。線源は、一生挿入したままですので、永久挿入小線源治療とも呼ばれます。

 アメリカでは1990年代以降、この小線源治療は年々増加の傾向をたどっています。最近ではアメリカにおいて、年間5万人を超える人がこの治療を受けており、前立腺全摘除術を受ける人とほぼ同数になっていますが、日本では、まだまだ、全摘除術の方が一般的です。

 小線源治療の特徴と利点として、(1)性機能が維持されやすい、(2)尿失禁がおこりにくい、(3)体への負担が少ない、(4)入院・治療期間は短い、という4点があげられます。小線源治療は前立腺がん治療の中でもっとも性機能が維持されやすい治療法とされ、5年後に性機能が維持されている率は7~8割とされます。また尿失禁の起こる率も前立腺全摘除術に比べてずっと低いとされています。アメリカでは日帰り治療ですが、日本では、3泊4日の入院が普通です。もちろん、これは前立腺全摘除術よりはかなり短いものです。

 この治療が適しているのは、がんが前立腺内に限局している場合に限られます。早期の比較的性質のおとなしいがんに対しては手術と同等の効果を得られますが、進行したがんにはあまり有効ではありません。したがって、すべての前立腺がんの患者さんにお勧めできるものではありません。また、ときに体外照射やホルモン療法と組み合わせることもあります。


子宮頸がんは欧米では放射線治療が主流
(1章  放射線治療でここまで治る―最新治療トピックスから)

 子宮がんには、子宮の入り口の部分(子宮頸部)にできる子宮頸がんと、子宮の奥にできる子宮体がんとがあり、日本では子宮がん全体の3分の2程度を子宮頸がんが占めています。

 日本では、1期、2期の子宮頸がんには子宮全摘という手術が行われます。この1期、2期までが手術のできる時期です。3期、4期になると、周囲の臓器にがんが広がりだし、手術による治療は難しくなります。その場合には、放射線治療が行われます。しかし、欧米では、1期、2期でも、放射線治療を行うことが普通になっています。とくに同じ2期の子宮頸がんに対して、欧米では、およそ8割程度が放射線治療を受けていると言われます。日本では、8割が手術です。放射線治療と手術の割合が、全く逆転しているのです。日本では、3期でも2割くらいが手術を受けますが、欧米ではほとんど手術はゼロです。

 手術の問題点も指摘されています。手術後1カ月以内に亡くなる術死の可能性は1%未満と少ないものの、足のリンパ浮腫に多くの患者さんが悩まされます。足のリンパ浮腫を起こすと、足がパンパンにふくらみ、足が動かしにくくなり、美容上も見た目がとても悪くなります。生命に関係することはありませんが、治療は難しく、生涯悩まされる人も少なくありません。

 がん治療の国際標準化が進んでいるなか、子宮頸がんの治療は日本独自のローカルルールに従っていると言えます。実際、米国国立がん研究所が公表している標準治療をみると、子宮頸がん2Α期では、第一番の治療は放射線治療で、手術は二番目となっています。子宮頸がん2Β期の標準治療は、放射線治療だけで、手術はありません。

 もちろん、手術がいけないわけではありません。問題は、放射線治療が第一の標準治療であることを患者さんが知らされないまま手術を受けている場合が少なくないと思われることです。患者さん側にも、問題がないとは言えません。がんが完治するには、手術か放射線治療が必要です。手術と言われたら、放射線治療に関して情報を集めるのは当然だと思いますが、いかがでしょうか? がんのセカンドオピニオンでは、「放射線治療ではどうなの?」が一番大事なのです。

 さらに今、大きな期待を集めているのが、放射線と抗がん剤の治療を併用する「化学放射線治療」です。数年前、子宮がんの治療に放射線と化学療法を併用することで、治療成績を向上させ生存率を改善できるという報告が、欧米で相次いで行われました。ある臨床研究では、1期と2期の切除可能な子宮頸がんの患者さん193人ずつに対して、化学放射線治療と、放射線単独療法をそれぞれ分けて行い、その成績を比べました。その結果、5年生存率が放射線治療単独では58%、化学放射線治療では77%という数字が示されたのです。

 これらの報告から、放射線治療と化学療法を併用すると、治療効果が増強することがわかりました。手術に化学療法を併用しても、生存率が改善するという報告はありません。化学放射線治療∨放射線治療=手術ですので、数学的には、化学放射線治療が一番よいことになります。(化学放射線治療と手術を直接比べたデータはありません)実際、私たちの病院では子宮頸がんの患者さんに化学放射線治療を行い、良好な治療成績を得ています。また、アメリカでもこの治療法が主流を占めています。

 患者さんが、情報を十分に得た上で、個人の価値観に照らし合わせて治療法を選ぶ時代になって欲しいと思っています。



●メディアでの紹介

2007.3.18(日)読売新聞「くらし 健康」欄にて、本書のカラー写真つきで紹介されました。「患者の体験談が豊富に盛り込まれている点も参考になる」と結ばれています。

2007.3.19(月)公明新聞「どくしょ 読書」欄にて、本書の写真つきで紹介されました。「『放射線治療はどんながんにも効果があるのか』(中略)――などの質問にも丁寧に答えている」と結ばれています。

2007.4.1サンデー毎日の短期集中連載「がん3大療法はここまで進んだ」にて、本書の著者、中川先生の発言がたくさん取り上げられ、本書も紹介されています。

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