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  学校力 ─時代をひらく方略と組織マネジメント─


学校力

カリキュラム研究会 編  (品切)

2,200円 A5 224頁 978-4-385-36271-7

学ぶ組織としての「学校力」が今まさに求められている。学力向上、一貫校教育、キャリア教育、そしてカリキュラム開発など、学校運営と改善の方策を示した提案書。重要語句は脚注でさらに詳しく解説。

2006年10月31日 発行

まえがき 目次 執筆者一覧



●まえがき

1 われわれの姿勢

 今から二十年前、この研究グループを立ち上げた数人は、東京都教育庁指導部に所属する指導主事であった。当時、多様な教育課題が連続して発生しその対応に追われ猛烈に忙しい毎日であった。深夜帰宅するなどということが常時行われていた。そのとき、みんなの心のなかにあったのは、課題対応的な活動で追いまくられているけれども、現状を、人間教育の問題としてきちんと整理しなくてはならないという思いであった。

 そこで、自然発生的に、「青少年の学習・心・生活などの学校現場が直面している課題を、人間教育の問題としてきちんと研究するための勉強会を立ち上げようじゃないか」という声がわき上がってきた。もちろん、時間的にそんな余裕はないのだが、貴重な休日を潰すなどして勉強会を始めた。それから二十年。メンバーに変化はあったが、研究は継続して行われている。月一回の研究会を休んだことはまずなかった。近年は、夏期合宿も行っている。二十年間に、学会発表・論文発表・科学研究費をはじめいくつかの研究費の受給・著作の刊行その他多様な活動を行ってきた。現在のメンバーは、約五十名。構成は、小・中・高等学校の校長・副校長・教諭、大学の教師、国立教育政策研究所員、指導行政の担当者などである。

 この研究会にはいくつかの特徴があるが、その一つは研究の場ではメンバーが完全に平等ということである。経歴・地位・年齢・研究歴などは意識せず、自由に討論する。もう一つは、毎日の児童・生徒の生活の中で発生している問題の解決を目指していることである。最近、教育学会でも臨床教育学の意義が強調されている。そのことにはわれわれも共感する。臨床教育学強調の背景には、ミッシェル・フーコーの『臨床医学の誕生』に象徴されるように、世界的に「学」の「生」への意味を再確認しようという思想の動きがある。そのことは、研究者グループの誠実な態度としてわれわれは評価する。

 しかし、われわれの感覚は、「臨床」と少々違う。臨床医といえば、病人のベッドの側にきて注射を射つ白衣の医師を連想する。しかし、現場の教師と児童・生徒の関係は、毎日を一緒に生きている人間どうしの関係である。そこで、われわれの研究に強いて名前をつけるとすれば「渦中教育学」ともいうべきである。「渦中教育学」の課題は無限にあるが、本報告では毎日の教科・総合的な学習の時間のあり方に焦点を絞っている。昨年十月の中央教育審議会の答申「新しい時代の義務教育を創造する」でも学力が課題になっている。そのとき、一つの問題が、知識と考える力・生きる力との関係をどう認識するかである。これは、常に教師が苦心している課題なのである。少なくとも近代学校制度開始以来、この問題に教師はいつも心を砕いていたと考える。そのときの教師の基本的認識をひと言でいえば、「知識で考える」である。

2 知識で考える

 アメリカで日本の授業研究に関心が高まったのが一つの契機となって、ここへきて授業への関心が急激に高まっている。授業とは何か。常識的には次のような学習の形態をいう。

 教室のなかで、教師がデザインした学習展開の流れに沿って、一定数の児童・生徒が、教科書を主たる教材としながら、同時に児童・生徒の生活とも連結させ、児童・生徒の好奇心に基づき、教師の指導のもとに展開する多様な学習活動。

 これは、明治以来の日本の伝統的な学習形態である。その有効性が改めて再確認されようとしている。実は、授業をいかに充実して行うかはいつも教師が苦心してきたのである。よく「日本の教育は知識詰め込みだ」などというが、そんな学習を現実にやっている教師はまずいない。また、その正反対に学習は児童・生徒の興味・関心に基づくべきもので教師は指導はしてはいけない、支援に止めるべきだという説が一部研究者からいわれたが、多くの教師はそんな理論に便乗してもいない。

 アメリカで日本の授業研究に関心がもたれている理由として、授業を学校の教師全員で参観しあり方について協力的雰囲気の中で知恵を出し合うという活動が、アメリカではとりにくい実態があるようである。日本には、校長の指導のもとみんなで授業について実践的に考えるという文化は確かにあった。本報告では多様なアイディア豊かな実践を紹介するが、その背景にもこのような伝統があるといえるであろう。この伝統は、最近は授業公開という形をとり、保護者や児童・生徒も加わって研究するように改善されつつあり、新しい授業研究として受け止めることができる。授業は、各学校で創意工夫をこらしてデザインすべきものだが、ここでは、われわれの考える授業の基本的ステップを提示してみたい。

a 漠然たる課題の感知

児童・生徒が事実に出会い、漠然とした課題意識を感ずる。そのため、教師は、児童・生徒の既得の知識でギリギリ手の届く範囲にごく自然な葛藤を学習材として用意する。

b 学習課題設定

課題意識は、放置しておくと雲散霧消するので、教師がリードして学習課題を設定する。そのとき、必要な知識・技能の教授を行ったり別の情報を提示したりする。その前提として、既得の知識のレベルを確認するために質問をしたり小テストのようなものを実施したりすることもときには必要になる。

c 課題解決の活動

仮説を設定し、その論証に必要な知識・情報・データ・ことばを収集し解析する。この活動が思考である。よく、知識と思考を対立するものとしてとらえる傾向がある。しかし、人は、知識なしに考えることはできないのである。どうして梅雨時には雨の日が続くのかを考えようとするなら、気圧・温度・地球の回転・季節・その他多様な知識・データが必要である。それがなければ思考は成立しない。

d 結論獲得

思考することにより葛藤を解決できる。それにより学習の喜びを実感できる。

e 発表

発表する意義としては、「自分として結論を獲得した満足」「自らの生き方を確認した充実感」「共に生きようという他者への呼びかけの喜び」などがある。

f 知的体系への位置づけ

以上の学習の成果を教師が知的体系(ディシプリン)に位置づけて説明する。このステップが、知識と思考活動を融合させる鍵となる。

g スキーマの再構成

スキーマつまり、学習者だれもが所有している独自の知識の構成体・枠組みが一段豊かなものに再構成される。

 以上の学習ステップでは、知識の習得と思考・探求活動が完全に融合している。これがわれわれの基本的考え方である。そのことを、本報告では本研究会で重ねてきた実践を交えての研究協議のまとめとして提示したい。

 なお、本書では、本文に関連する資料・情報を脚注の形で提示することにした。

平成十八年七月二十二日

カリキュラム研究会
代表 亀井 浩明



●目  次

まえがき

I 総論

 1 これから目指す教育の基本方向 
 2 学ぶ組織としての学校像 
 3 義務教育に関する制度のあり方 
 4 義務教育に対する教育投資の必要性
 5 学力向上に関する提言
 6 教職員の資質向上に関する提言

II 学校改善の方向

 1 学校運営組織の改善
 2 学ぶ意欲、学習習慣の重視
 3 授業時数の確保と授業改善
 4 授業力の向上と授業研究
 5 小学校の各教科の取り組み
 6 教育改革と中学校教育
 7 総合的な学習の時間
 8 国語力の育成、読書活動の重要性
 9 小学校社会科教育の改善
 10 小学校における英語教育
 11 理数科教育の充実
 12 少人数指導のあり方
 13 心と身体の健康
 14 健全育成
 15 情報教育
 16 体験活動、キャリア教育の重視
 17 カリキュラム開発と小中一貫教育の試み
 18 中学校・高等学校の連携
 19 これからの学校改善・カリキュラム開発
 20 課題となる学校評価・説明責任への取り組み

カリキュラム研究会 執筆者一覧
索引



●カリキュラム研究会 執筆者一覧 (順不同)

代表  亀井 浩明  前帝京大学(名)
    尾木 和英  東京女子体育大学
    清水 希益  前拓殖大学・現福生市教育委員
    小松 郁夫  国立教育政策研究所
    髙木 展郎  横浜国立大学
    北村 文夫  玉川大学
    田中信一郎  文京区立第一中学校
    大澤 正子  渋谷区立幡代小学校
    菅谷 正美  執筆時品川区立第二日野小学校、現品川区立日野学園
    佐野と喜え  葛飾区立柴又小学校
    中野 博志  北区立岩淵中学校
    宇佐美博子  江戸川区立小松川第一中学校
    木村 俊二  西東京市立明保中学校
    酒井眞理子  世田谷区立松沢小学校
    市川 雅美  目黒区立中根小学校
    時田 明子  葛飾区立小松南小学校
    池上 京子  調布市立杉森小学校
    櫻橋 賢次  目黒区立東山小学校
    橋本 茂樹  品川区立原小学校
    小黒 仁史  東京都教育委員会
    加藤 聖記  小金井市立本町小学校
    桑原 哲史  杉並地区昼夜間定時制高校準備室
    鶴田 麗子  葛飾区立本田小学校
    末吉 雄二  杉並区立和田中学校

   *脚注・コラム執筆  尾木 和英・櫻橋 賢次

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