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国立国語研究所報告120
学校の中の敬語2
―面接調査編―

学校の中の敬語2

独立行政法人 国立国語研究所 編

11,000円 B5 264頁 978-4-385-36089-X (品切)

日本語の研究・教育において重要な位置を占める敬語を、中高生は学校生活の中でいかに意識し使用しているか。東京・大阪・山形での面接調査によりその実態を解明した、関係者必携のアンケート調査編の続編。

2003年6月10日 発行

 刊行のことば
 目次
 面接調査の目的

 『学校の中の敬語1』



 ●刊行のことば

 本報告書『学校の中の敬語2−面接調査編−』は,先に刊行した『学校の中の敬語1−アンケート調査編−』に続くものであり,中学生及び高校生が学校の中で敬語をどのように使用しているか,どのように意識しているかについて,面接調査の手法により調査した結果をまとめたものである。

 国立国語研究所では,これまでに,成人が地域や職場において敬語をどのように使用し,どのように意識しているかについての調査を重ね,『敬語と敬語意識』『企業の中の敬語』をはじめとして何冊もの報告書を刊行してきた。成人の敬語や敬語意識は,幼少のころから家庭や地域の中で自然に身に付けられると同時に,しつけとしても育成される。長じては,職場の中で,意識して身に付けることになる。

 他方,敬語や敬語意識を育成する場として,学校というなかば社会的な共同学習の場がある。学校は,小学校から高等学校まで,様々な立場の人々で構成されている。生徒,教師,事務職員などがそれである。生徒といっても,上級生もいるし,下級生もいる。また,教師といっても,学級担任や教科担任だけでなく,校長や教頭がいるし,指導を直接に受けない教師もいる。そうした人間関係の中で,児童生徒は敬語を使い分けるとともに,敬語を意識的に習得していくことになる。

 学校では,国語科の中で敬語をはじめとする言葉遣いの授業を体系的に学習するし,生活指導の一環として言葉遣いについての個々の指導を受けることにもなる。学校におけるそうした幅広い敬語の学習が成人における敬語や敬語意識を培うことになる。

 そこで,国立国語研究所では,中学生及び高校生が,学校の中で敬語をどのように用い,どのように意識しているかについての解明を目的とする調査に取り組んだ。

 調査は昭和63年度から平成4年度にかけて,言語行動研究部第一研究室が企画・実施したものである。本報告書の執筆は,その調査にたずさわった尾崎喜光(研究開発部門第二領域主任研究員)・杉戸清樹(日本語教育部門長)・塚田実知代(情報資料部門第二領域研究員)に加え,熊谷智子(研究開発部門第二領域主任研究員)が担当した。

 調査にあたっては,生徒の皆さんには回答に快く応じていただいた。また,教育委員会をはじめとする関係者の方々にはたいへんお世話になった。ここに記して感謝申し上げる次第である。

 本報告書が,日本語研究だけでなく,国語教育をはじめとする学校教育などに広く活用されることを願うものである。

   平成15年3月

国立国語研究所長
甲斐 睦朗



 ●目  次

刊行のことば

1. 面接調査の目的 1

1.1. 研究の目的 1
1.2. 面接調査の目的 2
1.3. 面接調査の方法上の工夫 3
1.4. 面接調査についての留意点 4
1.5. 面接調査とアンケート調査の異同と相互関係 4

2. 調査の概要 6

2.1. 調査の方法 6
 2.1.1. 研究課題および担当者 6
 2.1.2. 面接調査の実際 6

2.2. データ処理 12
 2.2.1. 文字化とデータの整備 12
 2.2.2. ペアのパタンの分布 13

2.3. 調査対象者の属性 15
 2.3.1. 学年・性別・ペアの共通点・ペアの話す程度 15

3. 分析 21

3.1. 相手による表現の使い分け 21
 3.1.1. 尊敬語 22
 3.1.2. 謙譲語 25
 3.1.3. 丁寧語(1) 25
 3.1.4. 丁寧語(2) 28
 3.1.5. 丁寧語(3) 32
 3.1.6. 主節と従属節の丁寧語使用の関係 35
 3.1.7. 自称詞 35
 3.1.8. 従属節の丁寧語の有無と自称詞選択の関係 40
 3.1.9. 対称詞(言及形式) 42
 3.1.10. 対称詞(呼びかけ形式) 47
 3.1.11. 肯定の応答詞 51

3.2. 相手および話題の第三者による表現の使い分け 56
 3.2.1. 尊敬語 58
  3.2.1.1. 話し手と話題の第三者の関係からの分析 58
  3.2.1.2. 話し手と相手と話題の第三者の関係からの分析 61
 3.2.2. 他称詞 66
  3.2.2.1. 話し手と話題の第三者の関係からの分析 66
  3.2.2.2. 話し手と相手と話題の第三者の関係からの分析 74

3.3. 身内謙譲表現の使用 79
 3.3.1. 「母」への言及 80
 3.3.2. 「(母が)言っていた」の表現 83

3.4. 相手および場面による表現の使い分け 89
 3.4.1. 依頼の発話 91
  3.4.1.1. 呼びかけの形式 91
  3.4.1.2. 依頼の理由の表現 107
  3.4.1.3. 依頼表現 114
  3.4.1.4. その他の表現 131
 3.4.2. 応諾の発話 142
  3.4.2.1. 肯定の応答詞 142
  3.4.2.2. 了解の表現 148

3.5. 丁寧語の使用 156

3.6. 方言的文末表現の使用意識と評価意識 160
 3.6.1. 東京における「〜ジャン」の使用意識と評価意識 160
 3.6.2. 大阪における「〜ヤン(カ)」「〜デス(マス)ヤン」の使用意
     識と評価意識 170
 3.6.3. 山形における「〜ノォ」「〜ネェ」の使用意識と評価意識 182

3.7. 調査の中で観察される挨拶行動 195
 3.7.1. 入室時・退室時の挨拶行動 196
 3.7.2. 謝礼を受け取ったときの挨拶行動 199

4. まとめ 202

4.1. 得られたおもな知見 202
4.2. 調査方法の評価 208
4.3. 結論と今後の課題 212

参考文献 214
謝辞 215
付記 216
資料1 調査票 217
資料2 自然談話資料 233
英文概要 239
索引 245



  ●1. 面接調査の目的

1.1. 研究の目的

 私たちの日々の生活は他者との言語的コミュニケーションにより成立している面が大きい。たとえば,他者に対し自分が持っている情報を伝達したい場合,あるいは他者に対し何らかの働きかけをしたい場合,具体的なモノを提示したりジェスチャー等の非言語行動により自分の意図を伝達するということもないではないが,それよりも言語を用いて目的を達する方が多いだろうし効率的でもある。

 しかし,コンピュータ等の機械に情報や命令を伝える場合と異なり,話し手と何らかの社会的関係を有する人間にそうしたことがらを伝える場合は,〈何を伝えるか〉だけでなく〈どのような表現で伝えるか〉も重要になる。つまり,内容だけをストレートに伝えるのでは不十分であり,たとえば自分よりも目上の人や知らない人に対してであれば丁寧な表現で伝えるといった表現上の調整が必要になる。

 そうした表現上の調整はさまざまな言語社会でなされているようであるが,日本語社会においては「敬語」というしくみが体系的にそなわっており,これによる表現の調整が,対人的な言語使用における重要な部分を占めている。日本語社会における言語使用を考える上で,敬語はひとつの重要なポイントと言える。

 そのため敬語は,日本語研究,とりわけ言語生活に関する日本語研究の中で重要な位置を占め,これまで多くの研究が蓄積されてきた。

 国立国語研究所においても,設立まもない時期から,敬語を重要な研究テーマのひとつと位置付け,話し言葉における敬語使用の実態や意識に関する大規模な調査を展開してきた。

 たとえば地域社会における敬語については,愛知県岡崎市在住の市民を対象に,1953年に大規模な調査を実施した(国立国語研究所1957)。岡崎市ではその約20年後の1972年〜73年にも同様の調査を再度実施し,その間の地域社会全体としての変化や個人の中での変化を探った(国立国語研究所1983)。

 また,地域社会の社会構造の変化に伴う敬語の変化という側面に焦点を当てた調査を,秋田県・富山県の小集落において実施した(国立国語研究所1986)。

 さらに,島根県松江市においては,家庭・近隣の生活の中での敬語(待遇表現)使用の実態を「24時間録音」データによって記述・分析する調査も実施した(国立国語研究所1971)。

 一方,敬語がよく使われるのはこうした近隣の地域社会ばかりではない。職場社会においても,立場の上下関係(職階)を主たる基準とする敬語使用が比較的規則的になされている。国立国語研究所では,企業に勤務する社員を対象とした調査を実施し,職場社会での敬語使用や敬語意識を探った(国立国語研究所1982)。

 さて,地域社会や職場社会で使われる敬語を,私たちはいつどのように身につけるのだろうか。

 地域社会の中で大人や知らない人と話をする中で身につけるという場合もあろうし,職場社会に出てから半ば実践的に身につけるという場合もあろう。また,幼少の頃であれば,家庭の中で親や祖父母からしつけとして指導され身につけるという面も少なくないだろう。

 そうした中で,比較的若い時期,すなわち成人になり地域社会や職場社会に出る前に敬語をある程度身につける機会を提供する重要な場として「学校社会」がある。

 地域社会や職場社会ほどの社会的関係の広がりや複雑さはないにしろ,学校社会の中にも,学年による上級生・下級生(先輩・後輩)の関係や,生徒・教師間の師弟関係が存在する。また,毎日親密に話をする友達がいる一方で,それほどでもない友達もいる。そうした「上下関係」や「親疎関係」により敬語の使い分けがなされ,それが成人に至ってからの敬語使用の基盤となっているということが考えられる。

 また,学校では,授業中あるいは休み時間に,日常的な生徒指導として教師が生徒の言葉遣いを指導するということもなされている。生徒たちにとってはそれも敬語を身につける機会となっている場合があろう。

 さらに,教科教育のうちの国語科では,教育項目のひとつとして敬語が取り上げられている。その点で学校は,敬語を知識として学ぶ重要な場ともなっている。

 実際,先に言及した国立国語研究所による職場社会の調査によれば,敬語習得の機会として学校時代の授業・講義・勉強を回答した人が3〜4割,学校時代の部・サークル活動を回答した人が1〜3割という結果が得られている(回答は複数回答も可とした)。

 そこで国立国語研究所では,学校社会の中で敬語がどのように使われどのように意識されているかを明らかにする調査を企画し実施した。なお,学校といっても幅広く,小学校から大学まであるが,今回の調査では,ちょうどその中間段階である中学校・高等学校に焦点をしぼり,そこに在籍する生徒を調査対象とした。また,地域差が存在する可能性を考慮し,複数の地域で調査を実施した。

 調査は,アンケート調査と面接調査の二つの方法により行なった。このうちアンケート調査で得られた結果については『国立国語研究所報告118 学校の中の敬語1−アンケート調査編−』(2002年)として報告した。それに続き本報告書では,面接調査により得られた結果を報告する。

1.2. 面接調査の目的

 アンケート調査では,敬語使用に関する項目にせよ,敬語意識に関する項目にせよ,調査者側で設定した設問について,調査者側で用意した選択肢の中から当てはまるものを回答者に選択させる方法により行なった。実際に生徒たちが学校生活の中で使う表現は調査票に掲げられた選択肢以上にバラエティがあろうし,敬語についての意識も限られた選択肢でひとくくりにできない面があろう。また,選択肢として掲げた表現も,日常生活の中ではそれ単独で用いられることは少なく,多くの場合は他の言語要素を連ねた発話の形で実現される。しかしながら,アンケート調査では,短時間で量的側面からの概観を得ることを優先し,実際の言語使用に見られる多様性や,発話としての実際の使用という側面については,ある程度捨象してデータを求めた。

 こうした点を補うべく,アンケート調査に加えて面接調査を行なった。面接調査では,アンケート調査のように回答者を大量に確保することは困難であるが,アンケート調査で捨象した「多様性」という側面をとらえたり,アンケート調査で得られた結果について実際の「言語使用」という点から確認したりより詳細なデータを得るためには有効な方法である。一言で言えば,面接調査では,実際の言語使用により近いデータを得ることを目標とした。面接調査にもいくつかタイプがあり,選択肢方式を多用する調査方法もあるが,今回の調査では自由回答を主体とした。すなわち,こちらで用意した枠組みに適合する範囲内でできるだけ自由に回答してもらうことをとおし,実際の言語使用により近いデータを得ることを目ざしたのである。

1.3. 面接調査の方法上の工夫

 調査方法の詳細については後出の該当箇所で述べるが,実際の言語使用により近いデータを得るために,今回の面接調査では次のような工夫をした。

 (1)単語としての回答ではなく,分析目標とする項目を含む文(発話)の形で回答を求めた。

 (2)独話ではなく,一往復のやり取りが実現する模擬的な会話の形で回答を求めた。

 第一の点について説明を加えると,従来の面接調査では,自由回答を求める場合であっても,たとえば「これを何と言いますか?」と調査員が尋ね,「『○○』です」という回答者からの回答を期待するというように,目的とする表現の部分だけを取り出して,回答者による説明的な回答を求めることが多かった。しかし,日常の言語生活では,単語について説明的な表現するというようなことはあまりなく,むしろ実際の「使用」として表現されることの方が普通であろう。また,単語一つだけで表現するということも無しとはしないが,多くの場合,他の単語を連ねて文の形として表現することの方がより一般的であろう。

 従来の面接調査では,実際の使用についての回答を求めているようでいながら,じつは回答者自身の使用意識について,回答者から説明を求めていると言ってよい。「『○○』です」という回答は,「私は『○○』と言うと思います」という回答と同一と見ることができる。こうした,特定の言語項目についての意識面からの回答は,実際の発話の中で観察される言語使用とそれほど大きく隔たったものではなかろうが,今回の面接調査では,実際の言語使用により近づくことを目ざし,文(発話)の形で回答を求めた。ただし,その際,回答者に何も指示せず観察していたのでは,分析目標とする項目のデータを十分得ることが困難である。そこで,回答者には,目標とする項目を含む文の形で表現するよう,ゆるやかな指示を与えた。たとえば,「自分は行くけれどもお前は行くか?」という意味内容を普段の調子で言うよう指示することにより,模擬的な発話ではあるが,文の構成要素として実際に使用された形としての自称詞や対称詞などを観察したのである。つまり,調査は一応調査員による「質問」という形で進めてはいるが,実のところは「質問」ではなく「指示」であり,その指示による生徒たちの模擬的な言語使用を「観察」することで,実際の言語使用に近いデータを得ようとした。選択肢から選ばせるわけではないため,実際の言語使用のバラエティの広がりを見ることができるという利点も期待できる。なお,この方法は,調査員の指示により,回答者に発話場面をイメージさせ,自分ならば言うであろうと判断した発話を導き出したわけであるから,厳密に言えば,これは「言語使用」というよりも「言語使用に関する意識」を見たことになる。この点から言えば,たとえば実況録音的なデータを組織的かつ大量に収集して分析するなど,厳密な意味での言語使用に関するデータの分析を展開することが今後の課題として求められるが,従来のような説明的な回答ではなく,模擬的ではあるが実際の発話として実現された回答であろうという点において「使用」と呼ぶことにする。

 単語単独ではなく文として回答を求めた場合,文中での項目間の共起関係を見ることができるという利点もある。アンケート調査により一項目ずつ回答を求めた場合でも,それらをクロス集計することで項目間の関係を見ることは一応できる。しかし,この場合,調査で設定した場面においてそれらがいずれも使われる(あるいは使われない)ということは確認できるものの,一つの文の中で共起するか否かについては不明である。文としての回答を求めることにより,そうした関係まで知ることが可能となる。たとえば,自称詞として「オレ」が選択された場合,述部で丁寧語が選択されるか否かを観察することで,両者の関係を考えることができる。また,述部の丁寧語の出現状況を基準として,「オレ」が持つ待遇表現上の位置づけを見ることなども可能となる。今回は限られた項目にとどまるが,本報告書ではこうした項目間の共起関係からの分析も試みた。

 第二の点について説明を加えると,今回の調査では,生徒二人による一往復の模擬的な会話の形で回答を求めた。特に敬語は,相手があっての言語現象であるので,敬語使用の実際を見るためには,相互の会話という形で観察することは有効であると考える。アンケート調査では,話し相手を抽象的に想定させて回答を求めたが,今回の面接調査では,多少なりとも普段接触のある具体的な人物を目の前にし,模擬的な会話をしてもらった。「調査の場」という枠は依然として残り,その影響についてはなお留意する必要があるが,この方法により,かなりの程度現実性を伴った回答が得られたものと推測される。ただし,逆に,特定の二人による会話であるがために,得られた結果を一般化する上では注意を要する部分もあろう。アンケート調査ほどではないが,面接調査でも,ある程度集計に耐え得る量のデータが確保できたので,本報告では主として量的側面から大きな傾向性をとらえることに主眼を置く分析を行なうことにする。個別の特徴点についてのミクロな観点からの分析は今後の課題とする。

1.4. 面接調査についての留意点

 以上のような工夫を加えた面接調査ではあるが,調査時間がやや長くかかるために,調査対象者を無作為に選ぶことは難しく,また調査対象者の人数もある程度限定せざるをえない。そのため,数量的な面から全体の縮図を見るためにはアンケート調査の方がまさっている。全体の概観を見るためには主としてアンケート調査,実際の言語使用を見るためには主として面接調査,という使い分けが有効であろう。

 また,アンケート調査であれば,想定する相手に対し用いる表現が複数ある場合は,複数回答を許すことにより,あるいは本研究のアンケート調査で行なったようにひとつひとつの表現について使うか使わないかをチェックさせることにより,併用についての情報を得ることができる。この点,今回行なった模擬的な会話による面接調査では,こちらで期待した言語項目が含まれていなかったり会話が極端に滞ったりした際にやり取りを再度求めた場合を除けば,やり取りのチャンスは1回のみであった。そのため,併用に関する情報は特に得られていない。積極的に併用に関する情報を得ることを目的とはしてはいなかったため,上記の事情によりやり取りが複数回得られた場合も,期待した言語項目をより多く含む発話や,やり取りが滞っていない発話をひとつだけ選んで分析対象とし,併用に関する情報を引き出すためのデータ利用は今回は特に行なわなかった。

1.5. 面接調査とアンケート調査の異同と相互関係

 面接調査とアンケート調査については,調査の観点や調査項目についての異同もある。

 面接調査では,模擬的ではあるが実際に行なわれる言語使用を観察することに主眼を置いたため,言語意識について尋ねる項目は,3.5.節で報告する丁寧語の使用意識と,3.6.節で報告する方言的文末表現の使用意識・評価意識にとどめた。

 言語使用についての調査の観点や調査項目についても,次のような異同がある。

 本報告書の3.1.節では,話し手と相手との学年の上下関係や性別の異同から,発話中に現われる表現を分析している。これは,アンケート調査の報告書では5.1.節(自称詞)および5.2.節(対称詞)と,調査の観点および調査項目の点で密接な関係にある。アンケート調査で得られた概観的な結果について,実際の使用でどうであるかを面接調査では見た。なお,アンケート調査では,人称詞等の使い分けに調査票の紙幅を重点的に割いたため,文の述部に観察される尊敬語・謙譲語・丁寧語等については十分情報が得られず,わずかに5.8.節と5.11.4.節で報告する項目にとどまったが,面接調査ではこれらについても十分情報を得ている。

 本報告書の3.2.節では,話し手と相手との関係のほかに,話題の第三者という人的要素を加え,発話中に現われるその人物への表現を分析している。人的要素が増え設定場面が複雑になると,文字でそれを説明しなければならないアンケート調査では困難が増すため,アンケート調査の報告書の5.11.節を除けば,積極的な観点としなかった。しかし,面接調査ではそれが比較的容易にできるため,この観点からの設問も加えた。

 本報告書の3.3.節では,話題の第三者として自分の家族(母親)を話題にするときの表現を分析している。主として先生に言う場合の回答を求めているが,身内に対する謙譲語の使用に注目した設問である。アンケート調査の報告書では5.8.節に関連する項目がある。これも,実際の使用においてどうであるかを見ようとした。

 本報告書の3.4.節では,話し手と相手との関係のほかに,「休憩場面」と「会議場面」という場面性の違い(改まりの度合いの違い)を要素に加え,発話中に現われる表現を場面性と関連づけて分析している。アンケート調査の報告書では,3.7.節の一部として,言語意識の観点から尋ねた結果を報告しているが,面接調査では場面による実際の使い分けを見ようとした。なお,この設問では「依頼」としての表現を求めているため,日本語において待遇表現上重要な機能をはたしている授受表現の使用が観察されることが期待される。「依頼」のような他者に対し働きかける際の言語表現については,アンケート調査では特に質問しなかったが,面接調査ではそれに関する情報を新たに得ることも期待できる。なお,場面性ということについては,アンケート調査の報告書の5.10.節で,場面と「声の調子」との関係を分析している。今回はそうした分析は特に行なわないが,面接調査の回答は全て録音されているので,今後そうした分析を行なうことも可能である。

 また,いろいろな面で限られたデータではあるが,回答者が調査会場に入退室するときや調査の謝礼を受け取ったときの言語行動・非言語行動についても,調査員が観察し簡単な記録をとった。厳密に言えば,これこそが実際の言語使用・非言語使用をとらえたデータと言える。本報告書の3.7.節ではその分析を行なっている。

 以上に述べたように,面接調査では,総体として,実際の言語使用(特に会話としての言語使用)により即したデータを得て分析することを大きな目標としている。

 以下,まず第2章では今回の面接調査の方法やデータ処理等に関する概要を述べ,続く第3章でデータを分析した結果を報告する。なお,得られたおもな知見については,4.1.節に改めてまとめて記してある。

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