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  フェルミ熱力学


フェルミ熱力学

E. フェルミ 著、加藤正昭 訳

1,600円 A5 168頁 978-4-385-30659-9

今世紀最大の物理学者の一人E.フェルミが,コロンビア大学で行った講義を基にまとめた書。数多い熱力学テキストの中でも,名著として定評がある。記述は直截簡明で,教科書としても最高水準にある。

1973年 3月15日 発行

まえがき 目次 序論 訳者あとがき




●まえがき

まえがき



●目  次

序論

第 I 章 熱力学的な系
1.系の状態および過程
2.理想気体(完全気体)

第 II 章 熱力学第一法則
3.熱力学第一法則の表現
4.状態が(Vp,)図上に表わされる系に対する第一法則の適用
5.第一法則の気体に対する適用
6.気体の断熱過程

第 III 章 熱力学第二法則
7.熱力学第二法則の表現
8.カルノーサイクル
9.熱力学的絶対温度
10.熱機関

第 IV 章 エントロビー
11.サイクルの性質
12.エントロビー
13.エントロビーの性質
14.状態が(Vp,)図に表わされる系のエントロビー
15.クラペイロンの式
16.ファン=デル=ワールス方程式

第 V 章 熱力学ポテンシャル
17.自由エネルギー
18.定圧熱力学ポテンシャル
19.相律
20.可逆電池の熱力学

第 VI 章 気体反応
21.気体中の化学平衡
22.ファント=ホッフの反応箱
23.気体平衡式の別の証明
24.気体平衡の検討;ル=シャトワニの原理

第 VI I章 希薄溶液の熱力学
25.希薄溶液
26.浸透圧
27.溶液中の化学平衡
28.溶質の二相聞への分配
29.溶液の蒸気庄・沸点・氷点

第 VIII 章 工ントロビー定数
30.ネルンストの定理
31.ネルンストの定理の固体への適用
32.気体のエントロビー定数
33.気体の熟電離;熱電子放出

訳者あとがき
索引


●序  論

 熱力学は、熱の機械的仕事への変換、およびその逆の、機械的仕事の熱への変換をおもに取り扱う。

 熱はエネルギーの一つの形態であり、他の形のエネルギーに変えうるものであるが、このことを物理学者が認識したのは、比較的近年になってからである。昔の科学者は、熱を総量が不変なある種の流体と考え、物体の加熱などの過程は、この流体が物体から物体へ移ることによって起こるものと単純に解釈していた。この熱流体説に基づいて、1824年にカルノーは、熱を仕事に変換する際の限界(すなわち本質的には今日熱力学第二法則とよばれているもの)について、比較的明解な理解に達しえたのである。これは注目に値することであろう(第III章参照)。

 そのわずか18年後の1842年に、R.J.マイヤーは熱と機械的仕事の等価性を発見し、エネルギー保存の原理(熱力学第一法則)を初めて唱えた。

 今日では、熱と力学的エネルギーの等価性の本当の基礎は、(分子)運動論的説明に求めるべきことがわかっている。この説明では、すべての熱現象は原子や分子の無秩序な運動に帰着される。この見地からは、熱の研究は力学の特殊な分野であると考えねばならない。もっとも、力学といっても、その対象が莫大な数の粒子(原子または分子)の集合であるため、状態や運動の詳細な記述は重要性を失ってしまい、多数の粒子の平均的性質のみが考察されるのである。力学のこの分野は統計力学とよばれ、おもにマックスウェル、ボルツマン、ギブスの仕事を通して発展し、熱力学の基礎法則についてきわめて満足できる理解をもたらした。

 しかし純粋な熱力学の行き方はこれとは異なる。ここでは基礎法則は経験的根拠に基づく原理として仮定され、この原理から、現象の(分子)運動論的機構には立ち入らずに、いろいろな結論が引き出される。統計力学的考察においては簡単化のための仮定がしばしば行なわれるが、熱力学の行き方はこのような仮定にはほとんど依存しない。これが熱力学の長所である。したがって熱力学の結果は一般にきわめて正確である。

 他方、結果だけは得たが、物事が本当はどう起きているのかはわからない、というのでは満足できないこともある。そのため、熱力学的結果を少なくともあらい運動論的説明で補っておくのが、いろいろな面で便利であることが多い。

 熱力学第一法則および第二法則は、その統計的基礎を古典力学にもっている。近年ネルンストは第三法則を加えたが、その統計的解釈は量子力学の概念によってのみ可能である。本書の最後の章は、第三法則の諸結果を扱っている。


●訳者あとがき

 エンリコ・フェルミは1901年ローマの生まれ。少年時代より天才の誉れ高く、1925年「フェルミ統計」の理論によって一躍有名になり、1926年二十五才の若さでローマ大学の物理学の教授に迎えられた。以後ファシズムの嵐を逃れ(夫人がユダヤ人である)渡米するまで、理論、実験双方の研究をローマで行ない、彼がつくり上げたイタリヤ学派は世界の物理学界から注目をあびた。1938年に中性子研究の成果に対しノーベル賞が与えられたが、その授賞式に出席したまま彼は母国へは戻らなかった。

 渡米後は原子力の開発に従事し、1942年シカゴで初めてウラニウムの連鎖反応に成功し、原子力の父とよばれていることは周知であろう。戦後はシカゴ大学で素粒子物理学の研究を行ない、学界の指導者として活躍したが、1954年病を得て不帰の人となった。いまも彼をたたえる本や論文が絶えず、誰が見ても間違いなく、今世紀最高の物理学者の一人である。

 フェルミが多くの物理研究者から特に敬愛される一つの理由は、彼がすぐれた教育者であったからである。実際、ローマおよびアメリカ時代の彼の弟子の中から、後年ノーベル賞授賞者が続出した。さらに彼は初等物理(大学レベルの物理)の教育にも熱心で、多くの個性的な教科書を残した。特に有名な書物は「原子核物理学」で、原子核というミクロの世界が手にとるように生き生きと描かれている。

 ここに訳出した「熱力学」は、ローマ時代のフェルミがコロンビア大学を訪問滞在したときの講義録であり、発行以来四十年近い歳月を経ているにもかかわらず、いまだに熱力学への最良の入門書の一つとしての評価を保ち続けているものである。

 熱力学は原理の上に論理的に組み立てられた体系であるため、初めは直観的なとらえどころがなく、とりつきにくい思いをするものである。そこで、読者の中には、魔術師フェルミがこの熱力学をいかに変身させるかと期待される方もあろうが、まえがきに述べられているように、本書では一貫してオーソドックスな現象論的立場がとられている。だが、抽象的理論よりも具体的問題を好むというフェルミの特長は随所に現われている。また、いっさいのてらいを排し、平易な説明に徹していることも、実際にはなかなか真似できないことである。昨今の書物と異なり、応用例が化学だけからとられていることも、入門書としてはかえって親切であろう。初めて熱力学を学ぶ読者には過不足ない内容と思われる。

 一つ私見をいえば、本書の第VI、VII章にある例題は、すべていわゆる混合のエントロピー(本書の式(154))の応用なのだから、これについて直観的(すなわち統計力学的)説明が一言あれば、見透しも一段とよくなるのではないかと思う。

 最後に、本書を訳出するにあたり三省堂第二出版部の方々が示された忍耐強い努力に感謝の意を表したい。

     1973年2月

訳者識

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