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だから言葉は面白い

だから言葉は面白い

榊原昭二 著

1,600円 B6 272頁 978-4-385-36172-X (品切)

その言葉は誤用か、適切な表現か。微妙に違いのある言葉、さまざまに表記される言葉、話し言葉、流行語など、今の日本語で「おや?」と思う言葉を国語辞典の語釈と照らし合わせて診断。世間の言葉と国語辞典。

2003年10月10日 発行

 著者略歴
 目次
 見本原稿 「中年」
 見本原稿 「はしご酒」
 あとがき



 ●著者略歴

榊原昭二(さかきばら・しょうじ)

1927年愛知県生まれ。東京大学法学部卒。朝日新聞社会部次長、編集委員、新潟大学教授などを歴任。 著書に『現代世相語辞典』(柏書房)『昭和語――60年代世相史』(朝日文庫)『語感問答』『ことばつれづれ』(ぎようせい)『沖縄――八十四日の戦い』(岩波同時代ライブラリー)『キーワードで読む戦後史』(岩波ジュニア新書)など。

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 ●目  次

あ行    1

合言葉 2 合い性がいい 3 あいまいな・両義的な 5 赤い糸信仰 6 「あざとい」と「あくどい」 8 「あった、あった」 9 甘酸っぱい 10 「〜ありき」 12 ありよう・あり方・ありさま 14 「ある、ある」 16 「あれって」「それって」 17 安定である・安定な・安定に 18 「遺憾だ」「遺憾でした」 20 生き様 23 生き強い 24 「嫌な」と「嫌らしい」 26 「ウッソー」「ホントー」「カワユーイ」 27 「裏腹」と「紙一重」 28 「得てして〜」 30 「遠慮のかたまり」 31 大きい 32 「おざなり」と「なおざり」 34 「おっかさん」 36 「おとこ」と「おんな」 38 「落とし所」と「落ち所」 39 おばさん・母親・主婦・女房 41 「おぼつきません」 42 「お目汚し」 44

か行    47

会社に「〜さん」 48 外人・外国人 49 開発 51 「帰るさ」「帰るさい」 52 「がかい」 54 語るに落ちる・問うに落ちず 55 カチワリ 57 「カツン」 58  彼女嬢・彼女氏 60 「〜からお預かりします」 61  漢字の情報力 63 関東・関西・東海 64 擬音語「〜ぶ」 66 キザ 68  「厳しい」と「難しい」 69 「ぎんぎん」 71 愚父愚考 73 「消す」か「消える」か 74 「けたたましい」 76 「工場」と「現場」 77 「国史」か「日本史」 か 79 「心待ちにしている」 80 こだわる・拘泥する 82 コツマナンキン 83 「この際だから」 85 ごぼうぬき 86 「〜込む」 88

さ行    91

「再現」と「実写」 92 「さしずめのインテリ」 93 「雑感」と「雑観」 95 「小夜子さん」 96 「さりげに」と「なにげに」 98 しあわせ 99 死角 101 時間の問題 102 至上命題・至上命令 104 「七輪」と「コンロ」 105 「しなう」と「しなる」 107 「自分」は私か 108 しまなみ海道 111 「重厚的」はない 112 重篤 114 「食材」って? 116  女性の男言葉 117 食感 119 「しらしら」と「しらじら」 120 新方言 122 姿三四郎 124 「図柄」と「絵柄」 125 スプーナリズム 127 「〜するべき」 128 せいこう・とうてい 130 成熟 131 青春彷徨 133 「せいせいしゅくしゅく」 134 贅沢 136 「整理」とは? 137 世相語 139 絶好調・絶不調 140 「せつな的」な時代 142 セピア化 144 「そうですね」 145

た行    147

「多少」は多か少か 148 多少の縁・他生の縁・多生の縁 149 「立てば芍薬 」 151 「縦割り」と「横並び」 152 棚上げ・棚から下ろす・棚卸し 155 ためにする・ためにならない 157 戯れに歌は歌わじ 158 「坦々」と「淡々」 160 中年 162 「超〜」言葉 164 「チョンチョコピー」 166 「〜的」「〜の方」 168 「〜で」言葉 170 「〜ですよね」 171 「天然」と「自然」 173 等身大 175 「とこう」「とつおいつ」「とつこうつ」 176 鳥肌立つ 178

な・は行    181

夏一番 182 「〜などと述べる」「〜とかなんとか言う」 183 名前のつけ方 184 何でもあり・何でもない・何にもない 185 濁るか濁らないか 187 西日本 188 二の舞を踏む・二の舞を演ずる 190 日本語で一番使われる文字 192 排除の論理 193 敗戦野菊 195 箱・箱物 196 はしご酒 198   「〜は」と「〜が」 199 話し言葉 201 パラグラフ 203 「ひい、ふう、みい」 204 美学 207 「引き際」か「引け際」か 208 羊を数える 209 「ひとなる」 211 ひねもす・よもすがら・かはたれ・たそがれ 212 「批判」と「評価」 214 「ビビる」 215 『ひらがな辞典』 217 敏感な問題 219 「ボイン」 220 「豊富」と「抱負」 222 「ぼて」考 223 「ほぼ断定」 225

ま〜わ行    227

間が合う・馬が合う 228 「幕開き」か「幕開け」か 229 「まずない」「可能性も否定できない」 231 「真っスラ」 232 水商売 234 魅せる 236 民間人 237 ムンテラ(口頭治療) 238 「メロドラマ」と「めろめろ」 240  「面通し」と「面割れ」 241 ヤジウマ 243 「ゆっくり」台風 245 宵の内 246 横めし 248 予想ことば 249  予想を越える・予想に反して・予想以上 250 「ライトが止まる」 252 露出 254 ロマンスグレー 255 若者のアクセント 257 「わざあり」 258

あとがき    260

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 ●見本原稿 「中年」

 〈知らぬは中年以上の男ばかりなり、か。「カヌレ」を味わった。もとはといえばフランス・ボルドー地方で生まれた素朴な郷土菓子。それが若い女性を中心に人気を集め、ブームへの道をたどっているのだそうだ。〉(一九九六年十一月十四日朝日新聞「天声人語」)

 記事はさらに、かつての、イタリアの田舎菓子「ティラミス」の爆発的ブームを書き、フィリピンの特産品「ナタデココ」の大ブームにふれる。しかし、このいずれもブームの跡形もない。「人は流行というものの薄命なことをよく知っていますから、凋(しぼ)まぬ今日のうちに、いそいで、その花を摘むのです」と三島由紀夫は書いた。さてカヌレの運命やいかに――と「天声人語」は結んでいる。

 さて、この「中年」ということば、いくつぐらいの人びとをさすのか。「知らぬは中年……」と書いているからには、「天声人語」の筆者はみずからを中年と意識しているのだろうが、世の国語辞典はどう書いているか。

 『広辞苑』 一九五五年の初版は「四十歳前後の元気旺盛なころ」。一九六九年の第二版以後、第四版までは「四十歳前後の働き盛りのころ」で通している。第五版は、「四十歳前後。壮年」。

 『三省堂国語辞典』 一九六〇年の初版「四十歳ぐらい」。一九七四年の第二版以後、現行の第五版まで「四十歳ぐらいから五十代のなかばぐらいまで」。

 『大辞林』一九八八年の初版、一九九五年の第二版とも「四十歳前後から五十代後半あたりまで」。

 『大辞泉』 一九九五年の初版「四十代から五十代にかけてをいう」。

 『日本語大辞典』 一九九五年の第二版「四十代から五十代」。

 『学研国語大辞典』 一九八八年の第二版「四十歳前後」。

 『新潮国語辞典』 一九九五年の第二版「四十歳前後または四十代」。

 『日本国語大辞典』 一九七五年初版「四十歳前後の働きざかりのころ」。第二版「四十歳代から五十歳代にかけて」。

 『辞林21』 一九九三年の初版「四十歳前後から五十代後半あたりまで」。

 『新編大言海』 一九八三年(内容は戦前のまま)「三、四十歳の程」。

 『角川必携国語辞典』 一九九五年初版「四十歳から五十歳ごろ」。

 戦前は三十歳も中年に入っていたようだが、戦後は四十歳以後をさすことはすべて共通である。何歳ごろまでという上限がどんどんくり上がっているらしいこともよくわかる。人生が五十年から八十年へとのびていることから当然と言える。最後に、ユニークな語釈で知られる『新明解国国辞典』 一九九七年の第五版の「少年」から「老年」までを引いてみた。

 少年「小、中、高生」ただし少年法では二十歳以下。
 青年「二十歳から三十代前半まで」。
 壮年「三十代中期から四十代後半まで」。
 中年「五十代なかばから六十代前期まで」。
 初老「四十歳の異称。現在は六十歳前後」。
 老年「六十代中期から七十代以上」。

 「天声人語」の「カヌレの運命やいかに」は紙芝居の『黄金バット』の用語からきている。紙芝居は、昭和初期に大流行し、なかでも『黄金バット』は人気を呼んだ。紙芝居のおじさんの毎日の最後のせりふは「黄金バットの運命やいかに。明日のおたのしみ」であった。それが戦後復活し、テレビの普及とともに消える。私は戦前派に属するが、「天声人語」筆者はこの戦後派に属するのだろう。いまや、戦前派は老年に入り、戦後派はまだ中年に属し、中年にすがりつきたいようなのである。

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 ●見本原稿 「はしご酒」

 次から次へと場所を変えて酒を飲み歩くことを「はしご酒」「はしご飲み」と言う。また単に「はしご」と言うこともある。

 戦前、小学生時代から変な言葉だなあ、と思いつづけていた。最近の大蔵・日銀の接待汚職で、お役人さんや日銀の人たちが、接待のお酒を、はしご酒のように飲み歩いていることも新聞やテレビでいやになるほど見たり聞いたりした。「はしご接待」などという見なれない言葉も見た。こんな記事もあった。「憲法記念日の三日、都内で行なわれた改憲派の集会をはしごしてみた」(一九九八年五月五日産経新聞「産経抄」)。改憲集会を次から次へと見歩いた、ということのようだから、はしごは酒ばかりではないことがわかる。

 私が少年時代に「はしご酒」という言葉を変だと感じたのはこういうことだ。「はしご」というのは家や電柱、立木などに立てかけて、のぼりおりする道具だ。つまり垂直のイメージ、「タテ」のイメージだ(そのころ、イメージなんて言葉はもちろん知らなかったが)。ところが「はしご酒」といえば、横から横へ、つまり水平というか「ヨコ」のイメージだ。そこが私の素朴な疑問だった。

 両親や兄貴たちに聞いても、ちゃんとした答えは得られなかった。物知りと言われる近所のおじさんにたずねても同じこと。「よくわからんなあ、おじさん」と重ねて聞くと「言葉ってのは約束事みたいなもんだ。理屈も大事だが、そういうもんだ、とのみこむことも大事だ」とのこと。私も二十歳をすぎて、東京の学生さんになり、銀座にはバーや飲み屋ばかりのビルがあることを知り、「うん、これなら『はしご酒』の意味もわかる」と、ひとり合点したが、あまり説得力はない。

 最近、大野晋さんの『岩波古語辞典』を引いていて、偶然「はしのこ」(梯の子・階の子)を見つけた。「コ」は踏んで登る横木のこと、とある。つまり、はしごの一段、一段の横木のことで、それが、何段も横木のあるはしご全体をもさすようになったらしい。

 つまり、「はしご」というのは、そもそも横木、「ヨコ」の概念、「ヨコ」のイメージだったんだなとさとった。そうだ、「はしご酒」を「横木酒」と“直訳”して読めばよくわかる。飲む場所を変えることを河岸を変えると言う。こちら岸からあちら岸へ、横木を渡るごとく、「はしご酒」をすることなのか。

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 ●あとがき

 「このごろ、どんな暮らしをしてますか」「はあ、月給取りやめて退屈してます」「あなた、退屈してるだけで、日が暮れるような人ですか。なにか連載やってくれませんか」と声をかけて下さったのは『月刊望星』(東海教育研究所発行)の桐生達夫さんでした。「それは、ありがたい。書かせて下さい」「じゃ、テーマは何にしますか」「暮らしとことばと国語辞典ってのはどうですか。暮らして行くのにはことばは欠かせませんね。ことばのことを考えると、どうしても国語辞典のお世話になりますからね」。

 「ああ、それで結構です。しかし、連載のタイトルとしては長ったらしすぎませんか」。二人で頭をひねって「ことばの考現学」というちょっとむずかしげなタイトルが決まりました。

 その後、編集長は岡村隆さんに交代しました。学生時代からの探検家で快活な人。「この際、誌面一新」というふれ込みだったので、いよいよクビかなと思っていました。会ってみたら岡村さんいわく。「同じようなのを続けて下さい。タイトルはかえようかな」。やれやれクビはつながりました。

 新しいタイトルは「だから言葉は面白い」とのこと。私が関西へはじめて転勤したとき、すぐ親しくなった男が、「お茶でも飲みましょ」と誘ってくれました。開ロ一番「だからね」。ああして、こうしてこうなった。だからね、と続くはずなのにね、と思いましてね。どぎまぎしました。数日後、はじめて出した原稿を見たデスクは「だからね。この原稿、今回はあずからしてもらうよ」と言うんです。これも頭から「だからね」です。よくわからないね、と思いましたが問い返しもしませんでした。私の原稿がちょっと複雑骨折風でしたから、デスクもあれこれ考えて……「だからね」となったんだろうと推測したからでした。

 言葉について、あれこれ考えたり、辞書で引いたり、本を読んだりするのがだんだん楽しくなってきました。「だから言葉は面白い」というタイトルはすんなり私の中に入り、楽しくなっていくのでした。その後タイトルは「ことばの散歩道」となり、ただ今も連載中です。考現学以来、十年になりましょうか。この本は、三つの連載から選び出しました。配列も選択も三省堂編集部の松本裕喜さんにおまかせしました。本のタイトルも松本さんの選定です。お三方とも親切な方で、私としてもずいぶん助かりました。私の独断的勘ちがいをきびしくチェックして下さり、ありがたいことこの上なしです。深く御礼を申し上げます。

二〇〇三年八月

榊原昭二

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