現代人が使い方に悩む、微妙なニュアンスの違いを、豊富な例文と共に、楽しく・分かりやすく解説した待望の本。「任せる×ゆだねる」「疲れる×くたびれる」「わいわい×がやがや」「うかうか×おちおち」、「塵×ごみ」「米×めし」「子供×お子さん」、「数」「色」等、120例。便利な主要用語索引付き。
私たちが日ごろ何気なく使っていることば「日本語」は、いつも聞いたり、話したり、読んだり、書いたり、打ったりしているのだから、当然よく知っていて何不自由なく使いこなせるものと思っているかもしれない。しかし、何か、あることを人に伝えようとしたとき、その事にぴったりなことばが思うようには出て来ない。いくつか頭に浮かんだとしても、どれが良いか、両者の違いは何か、その意味が似ていれば似ているほど使い分けは難しく、悩まされる。例えば毎日の交通手段を話題とするとき「いつも乗るバスに」とするか「普段乗るバスに」とするか迷う。微妙な違いがあるのだが、さて考えてみると、直ぐにはその違いを明確に説明できない。文章を読むときも同様で、「同じ価値の」「等しい価値の」とあった場合、これらを全く同じ意味だと決め込んでよいものだろうか。
事物を指示する名称のことばにも、同じことが言える。「身が持たない」「体が持たない」ちょっと見には同じようだが、果たして本当に差がないと言えるだろうか。「身」と「体」、「人」と「人間」、「内」と「中」、一つ一つの単語の意味はよく分かっているつもりでも、二つのことばを比較したとき、その使い分けは決して身についているとは言い切れない。
著者はかつて三省堂の『類語新辞典』に、その中で扱われている種々の単語の意味や用法について、今述べたような観点から特記すべき事柄を、短いコラムの形で数多く執筆した。が、それらは大部の辞典の中に分散しているため目に付きにくく、全体を通しで読んだり、複数のコラムを対照しながらことばの運用に役立て、知識を高めるといった利用がしにくいという難点があった。できることなら一括して読者の便に供したい。そのような要望から、新たな形で世に問うこととしたわけである。 だが、これらのコラムは、『類語新辞典』にすでに述べられている語釈を前提に、その解説という意味も含まれているため、切り離してコラムだけを取り出すと、どうしても説明が十分とは行かない。そのため本書に収録するにあたっては、かなり書き加えたり修正したりした部分も多い。また、収録語彙のバランスを考え、新たに書き加えた項目も多い。項目の配列も、意味は共通だが事柄のとらえ方に微妙な差のある類義語──動詞や形容詞・副詞のペアを第T部に。対応し合う事柄の意味内容を比較した名詞のペアを第U部に。そして、最後に、人間や人間生活にかかわる種々の分野において、ことばの面で特記すべき事項、知っておきたい知識を第V部としてまとめた。読みやすく、しかも読んで役立ち、読んで楽しい内容を心がけて執筆・編集したものである。十全なる活用を期待したい。
最後に、本書をまとめるにあたって、最大限の努力を惜しまなかった編集部の飛鳥勝幸氏に、紙面を借りて感謝のことばを贈りたいと思う。