三省堂-三省堂選書183 40才からの老いの探検学
40才からの老いの探検学

40才からの老いの探検学
(カバーイラスト 岡崎京子)

上野千鶴子 著

1,359円 四六 224頁 978-4-385-43183-X (三省堂選書183)
(品切)

気鋭・上野千鶴子が,緊急の課題「老い」への〈傾向と対策〉を語る。これからの老いをどう考えるか? 多彩なゲスト8人との対談とデータで考察。

●団塊シルバーの近未来vs関沢英彦
●濡れ落葉族の傾向と対策vs樋口恵子
●老年文学の可能性vs森瑶子
●アメリカの老後・日本の老後vsエミリー・エイベル
●シングルの老後vs吉廣紀代子
●老婚のススメvs和多田峯一
●福祉社会―北欧の老人像vs大熊一夫
●シニアハウス・ライフvs清水好子

 『死後まで安心 ひとり暮らし達人術』

 著者紹介
 あとがき
 関係資料

1994年12月20日 発行



●著者紹介

●上野千鶴子
 1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。京都精華大学助教授を経て、東京大学文学部助教授。フェミニズムの現在をリードし続ける論客。さらに社会学・文化人類学など広いベースのうえにたった新たな観点から老いに迫る。著書『セクシイ・ギャルの大研究』『家父長制と資本制』『女という快楽』『女遊び』『スカートの下の劇場』『近代家族の成立と終焉』ほか。

1章●関沢英彦
 1946年生まれ。慶応大学法学部卒業。博報堂生活総合研究所取締役・所長代理。シルバーなど生活者の実態を幅広く調査分析。『時代屋は歩く目です』『差異の戦略』『分衆の誕生』(共著)ほか。

2章●樋口恵子
 1932年東京生まれ。東京大学文学部卒業。評論家・東京家政大学教授。女性問題のみならず、老後、教育、消費問題などの幅広い分野で精力的に活躍中。著書『花婿学校』(共著)『女の子の育て方』『サザエさんからいじわるばあさんへ』ほか。

3章●森瑶子
 1940年静岡生まれ。6歳の時よりヴァイオリンを習い、1962年東京芸術大学器楽科卒業。アイバン・ブラッキン氏と結婚、三女の母。1978年『情事』ですばる文学賞受賞。著書『夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場』『ダブルコンチェルト』『甲比丹』ほか。93年死去。

4章●エミリー・エイベル
 カリフォルニア大学助教授。女性学専攻。高齢の母親を介護している成人の娘を対象とした調査をおこない、1989年の第1回環太平洋女性学会議に来日、発表。著書『LOVE IS NOT ENOUGH:family care for the frail elderly』ほか。

5章●吉廣紀代子
 1940年岡山生まれ。1963年日本女子大学文学部卒業。報知新聞記者ののち、フリーライター。著書『非婚時代』『男たちの非婚時代』『スクランブル家族』ほか。シングルの老後に関心を寄せる。

6章●和多田峯一
 1926年生まれ。京都市役所勤務を経て、日向市老人福祉センター所長。その後、在職中からの茶のみ友達相談所を発展させ、現在、中高年齢者の結婚を世話する会「無限の会」を京都で主催。著書『老人は枯れない』『老婚のすすめ』ほか。

7章●大熊一夫
 1937年生まれ。東京大学教養学科科学史・科学哲学卒業。元朝日新聞記者。北欧の老人福祉・老人問題に詳しく、日本の高齢化社会問題についても貴重な提言を行っている。著書『ルポ精神病棟』『ルポ老人病棟』『あなたの老いをだれがみる』ほか。

8章●清水好子
 1921年大阪生まれ。京都大学文学部国文学科卒業、平安文学専攻。関西大学名誉教授。著書『紫式部』『源氏物語』『源氏の女君』『源氏物語校注』『王朝女流歌人抄』ほか。京都のシニアハウス「ライフ・イン京都」で生活。

※本書、対談部分は、三省堂の『ぶっくれっと』に1989年5月から90年5月まで掲載されたものです。選書版にするにあたってデータ等のさしかえを行ないました。

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●あとがき

 四十歳から老いが始まっている、と言ったら、あなたは気が早い、と笑うだろうか。それ どころか、二十歳からだって老いは始まっている。私じしんが老いをしみじみ感じたのは、 三十歳のときだった――ああ、もう、時間もエネルギーもあり余るほど残ってない。そう思 ったのだ。人によっては、老い(エイジング)とは、赤ちゃんの時から始まる、死までの過 程のことだ、と言う人もいる。

 それより何より、私が老いに興味を持ったのは、これから自分が入っていく世界について、 あまりに何も知られていないと感じたからだ。「老い」がどんなものか、わかったつもりにな っているが、その実「老いはこんなもの」と決めつけているだけじゃないのたろうか。半世 紀前の私たちの祖父母の老いと、私じしんの老いは、おそろしくちがったものじゃないだろ うか。それどころか、一九九〇年代の今日の老いを生きている人とも、私じしんが二・三十年 後に経験するだろう老いとは、ずいぶんちがっているたろう。

 そう思うと、「老い」は探検に値する、未知の経験の領域に属する。私はこのところ、自分 より年長の人の話を聞くのがおもしろくてしかたがない。どうして人は、若い人の話はおも しろいけど、年寄りの話はつまらないなどと、安直に言うのだろう。時代が変わったせいで 若者が「異文化」になるのなら、それと同じくらい、老人もまた自分にとっては「異文化」 だ。しかも、年令のとり方には、何かしら想像を超えたところがある。三十歳の私は、二十 歳のときの自分の予想を超えていた。四十歳の私は、三十歳の私の予測を裏切っていた。あ る年令に達したとき、まわりの景色がいつかどこかで見た風景のように、デジャ・ビュ(既 視)現象を起こすわけではない。老いの風景も、世代と時代によって、刻々と変わるだろう。

 本書では、私は「探検家」に徹した。他人の経験は、自分の経験にはならない。が、他人 の経験から学ぶことはできる。したがって、人選も、いわゆる「老人問題」の研究者や専門 家よりも、実践的な現場に関わっている人を中心にした。それも、老人と言えばすぐとり上 げられる寝たきりやボケのような暗いイメージよりも、ふつうの人間がどうにかこうにか老 後を生きのびるための、智恵や工夫を考えてみたいと思った。医療や死の問題が扱ってない じゃないかと言う人には、逆に、これまでは老後の愛や性は扱ってこなかったじゃありませ んか、と言いたいし、「家族の中の老後」の理想を言う人には、非現実的な理想にしがみつく よりは、次のステップへの対応を考えてもらいたい。

「老い」を扱う本にしては、だから、本書の人選はユニークなものになっている。なかには、 え、なんであの人が「老い」を?というお相手も含まれているはずである。

 どの方も、私の好みで選んで、お願いした。どなたからもお断わりはなく、快諾していた だいた。

 三省堂から、「ぶっくれっと」に、隔月掲載で「老い」をめぐる対談をやりませんか、と持 ちかけられたとき、私はつい大のり気で、お相手を次々にリストアップし、〆切り前に“貯 金”をためてしまうなんてハナレ業までやってしまった。この調子でやると、いつまでも続 きそうなぐらいで、実際、このテーマでお相手願いたい方は、まだまだいらっしゃる。のん びり「老後探検」をたのしんでいた私をせきたてて、スピーディーに本をまとめあげるとい う早業を演じたのは、中野園子さんである。「三省堂ぶっくれっと」という地味だが手堅く味 わいのある雑誌を担当している伊藤雅昭さんにも、お世話になった。テーマと組み合わせの 妙からか、この対談は連載中から好評だった。そしてもちろん、ご登場願った対談のお相手 の方々には、ほんとうに感謝している。実のところこの人選には、内心、会心の笑みをもら しているのである。

                  一九九〇年七月

選書版へのあとがき

『40才からの老いの探検学』の初版が刊行されたのは九〇年八月。それから四年ばかりのあ いだに、本書は五刷およそ三万部を数えた。それはとりもなおさず、このテーマに対する、 読者の関心の高さを示している。最初、「40代からの…」はいささか気が早いか、と思った ものだが、かえって現在老人の人にも、これから老人になる予備軍にも、共感をもって迎え られた。

 四年のあいだにも、日本社会の高齢化は進行した。当時、四〇代になりかけだったわたし は四〇代後半にはいったし、対談のお相手をしてくださった方々の身の上にも変化がおきた。 大熊一夫さんは、朝日新聞社をもくろみどおり早期退職なさった。最高齢の清水好子さんは ご病気のご療養中である。樋口恵子さんが代表をつとめる「高齢化社会をよくする女性の 会」はこの四年間にちゃくちゃくと各地にメンバーをひろげ、ついに名称を変えて「高齢社 会をよくする女性の会」となった。もはや「高齢化しつつある社会」ではなく、「高齢社 会」になってしまったという事実認識からである。いちばんの驚きは、昨年七月、あんなに お元気そうだった森瑶子さんの訃報に接したことである。享年五二才。森さんにはぜひ、 「女の老い」について、目をそむけずに書いてもらいたい、というわたしののぞみは、つい にかなえられなかった。森さんは、みずから「老い」を拒絶したのかもしれない。

 わたしは団塊の世代に属する。団塊の世代は四〇代後半に突入した。この世代は高齢社会 のヴォリュームゾーンを形成する。年金も福祉も危ない世代である。だが、わたしはこの世 代が、日本の「高齢者」のイメージを塗り替えてくれると信じる。以前、『広告批評』に 「ビートルズ世代の老人論」という特集があったが、その伝でいけば、「スニーカー・ミド ル」がそのまま「スニーカー・シルバー」になり、『少年ジャンプ』にかわって『シルバ ー・ジャンプ』が出てくるかもしれない。それを予感して、「コミック世代」の老人のイメ ージを、大好きな岡崎京子さんに描いていただいた。意外に思われるかもしれないが、この 取り合わせは、わたしにはすこしも意外ではない。

       一九九四年一〇月

著者

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●関係資料

資料1
資料2
資料3
資料4
資料5

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